AWC Rock'n Roll Cinderella (6)Farlia


        
#1555/3137 空中分解2
★タイトル (GCG     )  92/ 3/31  13:59  (171)
Rock'n Roll Cinderella (6)Farlia
★内容
 「さぁて。覚悟は決めたか?」
 ギクリ。何の逃げる手立ても思い浮かばずに、その時がきてしまった。
 ”そっそうだ。おもいっきり突き倒して、そのすきにダッシュ一発逃げて
しまおう”
 俺は呼吸を整え、高なる気持ちを落ち着かせにかかった。
 ”5……4……3……”
 心の中で、カウントダウンを開始する。
 ”2……ん?”
ら現れたのであろうか、黒子がガッチリと俺の手を押さえ付けているではな
いか。
 「こっこら。何しやがんだ、放しやがれ。このやろこのやろ……おわっ」
 これを境に、どこからか湧いてきた黒子一同に、右手、左手、右足、左足
をまんべんなく押さえ付けられて、床に仰向け状態で倒されてしまうのだっ
た。
 俺は大の字にされた状態で必至にもがくが、ピクリとも体が動かない。
 「はぁっはっはっは。逃げようとしてただろう?見え見えなんだよ。貴様
には、ちゃ〜んとおとしまえつけさせてもらうんでなぁ………どれ、最初の
一本目を切り落としてやろうかのぉ」
 ヤクザ屋さんは嫌らしい笑みを浮かべ、俺の全身を嘗めるように上下に目
線を動かしている。
 ペロッと、刃を嘗めながら、
 「今まで、このドスで何人の人間を切ったか……ぶつぶつ」
 ヤクザ屋さんは、自分の世界に浸っているのだった。
 「いやだぁぁあぁぁあぁあ」
 一生懸命逃げようとしているのだが、俺は黒子達に全身を押さえられそれ
すらも叶わない。仕方がないので、悪足掻きとばかりに何とか手を握り締め
指を出さないようにしているのだった。
 「いくら手を握り締めても、こ〜するとどうかな?」
 パチン。ヤクザ屋さんは指が鳴らすと、黒子の一人が俺の側にやってきて、
 「では、失礼して」
 深々とお辞儀をする。
 「?」
 俺は一体何のことやら見当も付かず、返す言葉もなかったので、
 「はぁ。お手やわらかにお願いします」
 などと、間抜けな返事を返してしまうのだった。
 「では」
 と、言葉を返した黒子は、な〜んと俺の無防備な脇の下をくすぐり始めた
ではないか。
 「どわぁ〜〜っはっはっはぁ−ひゃっひゃっ〜〜うひょひょひょ!」
 くすぐったがり屋の俺にとって、これは拷問である。「やめてくれ」と言
って懇願しても、執拗なほど俺の急所を攻撃し続ける黒子。
 握り締めた拳は次第に緩み始め、ついには手を開いてしまうのだった。
 そこへ、間を置かずヤクザ屋さんは、むんずと俺の小指を掴むと刃先を付
ける。
 「さて。まずは、い〜〜っぽんっと」
 「ひゃーはっはっはっはぁぁあぁ。やめちゃくえ〜」
 くすぐられている状態で話しているので、ほとんど言葉になっていない。
 笑っているのに、目からは涙が止めどもなく流れて俺の頬を濡らした。
 「きゃはははははははは、やっちゃえやっちゃえ」
 舞は俺の側にしゃがみこんで、両手で頬杖を付きながら歓声を上げている。
 「せーの」
 ヤクザ屋さんの掛け声と共に、ドスが俺の指を切り落とした。
 「どわぁぁぁぁぁぁあああぁぁあああああああああああああああああああ」
 急に意識がとお退き、俺は…………
               * * *
 目覚めの悪い朝だった。
 俺は小指の痛みに、ベットから跳ね起きていたのだ。
 「お〜痛。まったく、何て夢を見るんだ……ん?痛い?」
 夢なのに不思議と痛みが残っている。俺は今だにズキズキと痛む右の小指
を見て、更に考え込んだ。
 「う〜む。なぜ歯形が付いているのだろうか?」
 そう。小指にクッキリと歯形が残っているのだ。
 まぁ、いいとこ自分で噛んだのだろうと決め付けたとき、俺は気が付いた。
小指にうっすらと、口紅の跡が付いていることに。
 「口紅……はて?」
 現時点での俺の頭では、理解する事ができないでいた。
 「すぅすぅすうすう」
 「ん?」
 布団の中から、微かに寝息が聞こえてくる。
 ”まさかね〜ははっ”
 嫌な予感がしていた。俺は、そ〜っと布団を捲り上げる。
 「ぶっ!」
 寝ていた。俺の予想通り、舞が布団の中で猫のように丸くなって寝ている
のだ。おまけに、下着だけの姿で。
 布団をガジガジと噛っているところから、どうやら舞に噛まれていたらし
い事が判る。
 改めて俺の姿を眺めてみると、何とパンツ一丁!
 俺はぎこちない手つきで、舞に布団を掛け直すと、
 「まさかな……それに、俺は確か床で寝ていたはずでは……否、ひょっと
して無意識のうちにやっちゃったのでは………いやいや、俺はそんな事がで
きる奴じゃあないはずだ……いやまて、無意識だから出来たのだろうか。も
ったいない事を…いやいや、とんでもないことをしてしまった……げっ!」
 色々妄想に耽っていると、布団の中からモソモソと舞が起き出してきた。
 「ふぁ〜あ。おっはよぉ」
 まったく何事もなかったかのように、大きな背伸びをする舞。
 「☆@●◎!%£¢$」
 俺はというと両手で目を押さえ、パクパクと金魚のような口になっている。
 「おっ俺は、何もしてないぞ…否、してたかも……いやいや、な〜んにも
してないからな。無実だぞ無実。それに、早く何か服着てくれないかなぁ。
目が開けられないから」
 しどろもどろになりながらも、賢明に言い訳をする。
 「えっ何?きゃあ。ひどいわ、まだ誰にも見られた事なかったのに…」
 「なっ。俺は無実なんだぁぁぁ」
 「でも…昨日の瞬ちゃん……凄かった」
 舞は、俺に寄り添いとんでもない事を言い出した。
 「じゃっじゃあ。本当に……」
 舞はコクンと頷き、
 「ま〜ったく凄かったんだから。瞬ちゃんたら、急に起き出したと思った
ら布団を捲り上げて、『寝ときは、裸で寝るのが一番いいんだ』なんて言い
ながら、無理やり服を脱がされちゃってさ。おまけに、ちゃっかり自分まで
ベットに入ってきて寝ちゃうんだもん。一事はどうなる事かと思ったんだか
らね!まぁ瞬ちゃんだから、別に構わなかったけどね。…ねぇ。ちょっと聞
いてるの?」
 「……………」
 俺は硬直していた。
 「ちょっとぉ。もうしょうがないなぁ」
 舞は硬直している俺の体をポンと押して、ベットに寝かしつける。
 そして俺が再び起きたのは、それから三十分後だった。
               * * *
 「で、これからどうするの舞ちゃん?」
 取り敢えず一段落(?)付いたので、これから先の行動について話し合っ
てみることにした。
 「どうするって…それは瞬ちゃんが考える事でしょ。でも、そろそろ部屋
から出たほうが無難だと思うな……ん〜と、じゃあこれから買い物に行くっ
てのはどうかなぁ?買いたいものもあるしね」
 「まぁ。ここに居るよりはましかぁ…」
 ”でも案外、この部屋でじっとしているのが一番良かったりして”
 絶対有り得ない事を考えながら、一応時刻の確認と、おっさんとの連絡を
兼ねて電話をすることにした。
 「電話電話っとぉ」
 ごみの山から掘り出すように電話機を取り出すと、受話器を外して電話を
かける。
 ピッポッパッ。プルルルルルル。カチャ。
 「ねね。どこに電話してんの?」
 傍らで、舞がキョトンとしている。
 「ん〜時刻の確認」
 (ピーン……ただいまの時刻、8時46分52秒……)
 「8時46分と」
 「時計なら、あたしが持ってるのに」
 「そーいう事は、もっと早く言ってくれい」
 俺は気を取り直すと、今度はおっさんの所へ電話をかける。
 ぴっぽっぱっ。プルルルルルル。プルルルルルル。プルルルルルル。プル
ルルルルル。プルルルルル。………………
 「おっかしいなぁ。絶対居るはずなんだけどなぁ」
 「で、今度はどこに電話してんの?」
 プルルルルル。プルルル、カチャ。
 「もしも……」
 (だ〜〜〜〜うっせぇ。俺は今、留守にしてんだ。一昨日きやがれってん
だ、ちくしょうめ!!)
 ガチャ。ツーツーツー。
 「し…………」
 開いた口が締まらん。あれだけ盛大にわめいておきながら、留守だと言っ
ても誰も信じないはずだ。
 俺はめげずに、再度電話をかけ直すことにした。
 ピッポッパッ。プルルル、カチャ。
 (だ〜〜〜やかましいわ!。いいか、俺は絶対留守にしてんだ。分かった
か。んじゃな)
 「だ〜〜おっさん、切るな。俺だ俺」
 (ん〜貴様か……何だこんな朝っぱらから。いいか、俺は待たされるのも
嫌いだが、眠りを妨げられるのも嫌いなんだ。分かったか?そ〜いう事だ。
またかけ直せ。じゃあな……)
 いかにも俺は不機嫌だと言わんばかりの声が、受話器から聞こえてくる。
まぁ大抵の場合、おっさんは不機嫌だから、俺も結構慣れていたりするのだ
が。
 「おいおい。ちょっと待ってくれ。こっちの話も少しは聞いてくれよ」
 (あ〜。用があるなら、さっさと言わねぇか」
 「今回の依頼の件なんだが―――――」
 (おう。その事か。まぁ何だな、しっかりやるこったな)
 「なっ。おっさん知ってて……」
 (当たり前だろうが。依頼内容も聞かんで引き受ける奴なんぞ、いるわけ
なかろうが。大体、おいしい仕事を貰っておいて、文句を言う奴があるか?
内容はともかく、良かっただろうが。違うか?)
 「あっああ。まぁ、確かに良かった」
 俺は舞の方をちらっと見る。
 何となく、旨く丸め込まれた気分だ。
 (何、適当に逃げ回ってりゃ、あっというまに終わってしまうさ。まぁ。
捕まらないこったな。何たっておい、追っかけるのが『竜人会』の連中だか
らな。捕まったりしてみろ、…………指が無くなるわな。がはははは。んじ
ゃな。生きてたら、また仕事を持ってきてやるからよ)
 ガチャ。
 「……………」




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