#1432/3137 空中分解2
★タイトル (JUF ) 92/ 2/ 1 9:14 ( 50)
実録・コンサ−トの女(6) ポロリ
★内容
演技派
俺はタクシ−を止め、裕子を車に押魴込んだ。運転手はすこし不機嫌そうな顔を
している。早く、行先をいえとばかりに。
「で、裕子さんのお住いは?」
まだ、裕子に聞いていなかった。俺は裕子に合わせるつもりだった。たとえ、埼玉
だろうが、千葉だろうが送って行くつもりだった。
「あの、深川なんですけど...。」
すこし恥ずかしいそうな感じでそう呟く。俺は「深川」という地名は知っていたが、
実際、どこいらが「深川」なのか皆目見当もつかなかった。
運転手に「深川」と、行先を告げた。運転手は返事もしなかった。感じの悪い奴だ
った。車は急発進し、夜の沈黙をひきさいた。
「あ、ここでけっこうです。」
と裕子。えてして、女は自分の家の前に車を着けない。そのくらいは知っている。
「あ、そう。じゃ電話するよ。気をつけてね。」
「おやすみなさい」
と、裕子、手を振っている。俺も手を振る。
「運転手さん、悪いけどここで降りるよ。」
と、裕子が降りた所から、2、300メ−トル離れた所で、俺は車を降りた。
このまま別れたら、もう2度と裕子に会えないかもしれない。(女が本当の電話番号
を教えてくてたかどうか....。けっこう、デタラメな番号をいう女がいる。)
俺はあるプログラムを実行することにした。思いつきだが、急に腹が痛くなったから、トイレを貸してくれと頼む。まさか、ことわれないだろう。もし、ことわられたら、
俺はあきらめるつもりだ。トイレを借りることを口実に彼女の家に闖入する。まぁ、後
はいつもの通り成行きまかせで、きめる覚悟だ。(実際、2人前の生カキを食べたせい
か、少し腹が痛い。)
俺は車から降り、すぐに彼女の降りた所へと、走った。裕子はすぐに見つけることが
できた。
「裕子さん、裕子さん。」
裕子、「びっく」としたような感じで、俺の方を振り帰る。びっくりしたような顔
をしている。
「風さん...。」
気がどうてんしてか、言葉が出てこないみたいだ。
すかさず、俺は迫真のジェスチャ−を交え、腹が痛いので、トイレを貸してくれと、
うっすらと涙さえ浮かべて彼女に哀願した。俺の演技に圧倒されたのか、彼女はなにも
言えなかった。(心のなかで、俺はVサインを出した。あと、1歩だな)
腹に手をやり、よろよろと彼女について行くと、3F建てのマンションともアパ−ト
とも区別がつきがたい小さな白いビルの前で彼女は足を止めた。俺は腹の痛みを誇張す
るべく、そこにしゃがみ込んだ。
「大丈夫ですか?」
と、裕子は困ったような、なんとも表現できない複雑な顔をしている。今日、始めて
出逢った男を自分の部屋へ−−、どうやって追い返そうかときっと思案しているのだと
俺は思った。(「今日は君の部屋に留まっていくの」と、俺は独り呟いた。)