AWC 実録・コンサ−トの女(2)            ポロリ


        
#1415/3137 空中分解2
★タイトル (JUF     )  92/ 1/26  22:17  ( 63)
実録・コンサ−トの女(2)            ポロリ
★内容

赤い糸

 「かおりさんありがとう。ちょうど、今度の金曜日は空いているから...。でも、  かおりさんがぼくのこと誘ってくれるなんて...。ぼくも前から、かおりさん
  のこと...。」
 まるで夢でも見ているような気分だった。こんな嬉しい想いをしたことは過去に
1度もなかった。夢ならさめないで欲しいと願うポロリであった。

 「あの−」
 と、かおり。ちょと困惑顔で俺の顔を見上げる。断わられるとでも思っていたのだ
ろうか?しばしの沈黙が流れた。が、意を決したように俺の顔をマジッと正視し、
 「風間さん、ちがうんです。あの−、風間さんは音楽好きだって聞いたので、この
  コンサ−トのチィケットお願いしようと思って...。」

 先程までの天にも昇る気持ちから、奈落の底にけ落とされた気持ちだ。一俊、目の
前が真っ暗になった。当然といえば当然だ。だれが、好んでこのうだつの上がらぬオ
ジンに思いを寄せるだろうか...。ポロリ肩を落とし、シ鵆゚ックを隠せ 魴ばしの沈黙が2人を支配する。

 かおり、俺の勘違いを察したのか(責任をかんじたのか)うつむいている。
 なんとか俺は奈落の底から這上がり、絶望の縁から力無く、手にあるチケットに目を
やり、かおりに聞いた。
 「コンサ−トて?あ、これモ−ツアルト」
 ポロリはとんとクラシックには縁が無い。ロック一筋でこの年まできた男だから。
まあ、それでも「カラヤン」や、「バ−ンスタイン」の名前くらいは知っている。
 チケットは2枚あった。で、よく見ると、なんとS席で1枚、¥15000とあった
。ということは2枚で¥30000也か...、もしかおりが俺と一緒に行くというの¥30000出してもけっして高いとは思わないが、かおりの同伴なきチケットは、ク
ラシックの「ク」の字も知らない俺にとって、¥30000はエベレストよりも高いと
思った。

 「風間さんには素敵な人がいらしゃるんでしょ。この指揮者、○○○○○は世界で
  今1番というくらい高名な方で−−−−−。」(※名前忘れた。)
 とかおり、カラヤン、バ−ンスタイン亡き後、世界最高の指揮者であると説明する。
素敵な人と一緒にどうぞか...。(きみと行きたいのに)と俺は心の中で呟いた。

 「きみの頼みじゃ、断われないな。でも−−−」
 と、かおりをこの機会に誘ってみることにした。
 「でも、2枚買っても...、相手がいないんだけど。」
 かおりの目を覗き込む。かおり微笑を浮かべる。度胸を決めて誘ってみる。
 「かおりさん、一緒に行きませんか?」
 かおり、一瞬、大きな目をパチクリ。慌てている様子だ。ちょっと困った顔で、
 「金曜日から、部長と大阪支社へ−−−−−」
 奈落の底で一筋の希望の光をかおりに求めたが、またしても裏切られた。

 2枚買えば、かおりとの赤い糸は完全に切れてしまうと思い、なんとか1枚だけで
けで勘弁してもらった。かおりを背に俺は部屋に戻った。

 部屋に戻り、情報通の同僚にこの話しをしたら、なんと!かおりは営業の「中田」
とコンサ−トに行く予定であったが、かおりの出張で行けなくなったという話しを聞
いた。目に涙であった。
「中田」は俺よりも4才下で、たまに一緒に飲みに行くことがある。この男は営業マ
ンらしくないひ弱なモヤシ子である。声もボソボソ小声で喋るし、営業部では存在感
が非常に薄い男である。
 「中田」は早大の理工学部を出ている。よく、飲むとこぼすのだが、なんでも面接
のときに特技といわれて、学生時代は「ESP」に所属しており、英会話がペラペラで
あると、こともあろうに営業部長の前でペラペラやったらしい。その堪能な語学力を
えらく買われて、不幸にもその営業部長のいる「海外営業部」へ配属されてしまった。
いつもこの男は自分は理工学部出身なのに営業なんて−−−と、酒に酔うとこぼす。

 その中田とかおりができていたなんて...。俺はそう思うと涙がチョチョ切れた。





前のメッセージ 次のメッセージ 
「空中分解2」一覧 ポロリの作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE