#1403/3137 空中分解2
★タイトル (BDM ) 92/ 1/26 1:19 (198)
空想科学時代・劇「まだ誰も見たことがない」(1) CATCH
★内容
空想科学時代・劇 「まだ、誰も見たことがない」その1
登場人物
1:“少年”という名の男
2:座敷童子
3:博士
4:マシン
5:黒衣1
6:黒衣2
7:黒衣3
1・オープニング
真っ暗闇の舞台の奥からオーケストラのリハーサルが聞こ
えてくる。
“少年”という名の男、サラリーマン姿で写生道具をもっ
て登場。イーゼルを符面台に絵筆をタクトにして指揮を始
める。
音楽の盛り上がりと共に“少年”という名の男も興奮し、
舞台中を踊り狂い跳びはねる。
最後の和音をむしり取るように、遠足姿の座敷童子が拍手
しながら現われる。
座敷童子 (パチパチパチパチパチパチパチパチと拍手)
少年 うるせえ!
座敷童子 うるさい?わざわざ拍手してやってるのに。
少年 わざわざやらなくてもいい。迷惑だ。
座敷童子 客に向かってそりゃ失礼だよ。
少年 音楽が終わる前に拍手するのも失礼だよ。
座敷童子 なにが聞こえたって。
少年 どうゆう意味だ。
座敷童子 ここには指揮者だけで、バンドもオーケストラも
誰もいないじないか。なにが聞こえるんだよ。
少年 音楽が聞こえなかったか?
座敷童子 聞こえなかったよ。
少年 おまえには芸術は理解できないんだ。
座敷童子 じゃあ、君には聞こえたのかい。
少年 じつは、なにも聞こえなかった。
座敷童子 なにも聞こえないのに、踊り狂っていたの?あれ
が芸術?
そういうのって、カラオケ無しで歌うヨッパライ
見たいで、端から見てると何だか怖い。
少年 何もなくって何も見えないんだから、何が聞こえ
たっていいじゃないか。
座敷童子 誰もいないのかい
少年 誰もいないんだ
座敷童子 集合時間は?
少年 もうとっくに過ぎてる。
座敷童子 今日は、ハイキングの日だよね
少年 雨なら、平常授業だよ
座敷童子 えっ、それじゃあ遠足は中止になったの?
少年 朝、雨が降ってたか
座敷童子 どんよりくもってた
少年 連絡網で電話があったか
座敷童子 なかった
少年 それなら今日は、春のお絵かきハイキング
座敷童子 でも誰もいないぜ。やっぱりハイキングは中止で、
みんな教科書を取りに帰ったんじゃあ・・・
少年 ちがうっていってるだろう
座敷童子 こういう特別な朝、学校来る途中って何だか不安
にならないかい
少年 どんなふうに?
座敷童子 誰かに出会うまでさ、ぼくだけがこんな格好して
いるんじゃないかなって、
少年 こんな格好?
座敷童子 そう、そんな格好。・・・なんでそんな格好して
るの?
“少年”という名の男は、どぶねずみ色のくたびれた背広
を着ている。
少年 にあうだろ。
座敷童子 おれたち小学生だぜ。
少年 おかしいか。
座敷童子 先生、質問!
少年 はい、どうぞ。
座敷童子 他の子もそれに着替えに行ったんですね。
少年 しつこいな。ちがうって言ってるだろ。
座敷童子 やい先公。どこへ隠しやがった。!
少年 おれは、先生じゃねぇ。
座敷童子 小学生期待の大イベント、春の遠足をどうしてく
れるぅ!
少年 うるせぇ、おれのせいじゃねぇや!
座敷童子、教室の椅子を持ってくる
“少年”という名の男、車輪付き黒板で対抗する
闘牛のごとく
座敷童子 もーっ!
少年 おーれっ!
座敷童子 もーーっ!
少年 おーれっ。そんなヘッピリ腰じゃあ歓声はわかな
いぞ。
おーれっ! 拍手もわかなけりゃ、花束もとんで
こないぜ。
座敷童子、突進する。
“少年”という名の男、チョークを投げる。
椅子で打ちかかる。黒板消しで受ける。
ほこりだらけのなか、座敷童子が消える。
少年 ごっほ、ごっほ。この野郎っ!!
あれ、いない。本当に誰もいなくなっちゃった。
・・・あはは
はは。逃げるな、ひきょう者!・・・・・・みて
ろ!
少年、黒板を爪でひっかく。
座敷童子 やめろ、やめてくれ。よしそっちがその気なら、
・・・じつは皆さん、あいつが遅刻したのは、お
寝しょの布団を干してたからなのです。
少年 うそだ、うそだ。でたらめだ。
座敷童子 遠足だから遅れないようにって張り切って、洋服
のまま寝たから、ほかに着てくるものがなかった
んだろ。
少年 ちゃんと寝る前に歯を磨いて、トイレに行ってる
んだ。お寝しょなんかするもんか。
座敷童子 小便くせーガキとは付き会っていられないね。
少年 おまえの秘密もばらすぞ。
座敷童子 やれるものならやってみろ。
少年 こいつは人間じゃありません。
座敷童子 わーっ、それ以上言うな。
少年 止められるものなら止めてみろよ。
座敷童子 壁の向こうでひきょうだぞ。
少年 その正体は、
座敷童子 わぁーっ。
黒板を回して、追いかけっこになる。
少年 その正体は、座敷童子だ。
座敷童子 何でそんなことがわかるの?。
少年 座敷童子っていうのは、たとえば10人の子供が
遊んでいるとき、いつの間にか11人になってい
るのに、ひとりも知らない顔がなく、ひとつも同
じ顔がなく、それでもやっぱりひとり多くって、
でも誰が増えたかわからない。そんなのが座敷童
子なんだ。
座敷童子 子供が誰もいないところにいるから、座敷童子な
のかい。
少年 違うよ。少年がひとりしかいないところに二人い
るから、座敷童子なんだよ。
座敷童子 誰が少年なの?
少年 僕が。
座敷童子 どこが?
少年 ほら。
少年と書いた名札を付ける。
座敷童子 名札を付ければいいのか。
少年 おまえのはどうしたんだよ。
座敷童子 忘れちゃった。
少年 座敷童子だぁ。
座敷童子 いじめだよ、それは。
少年 じゃあ、証拠を見せろよ。
座敷童子 みんなに聞けばわかるよ。僕が子供で、君がにせ
ものだって。
少年 よし、遠足の目的地は?
座敷童子 ここ、見晴らし山の展望塔。
少年 やっぱりだれもいない。
座敷童子 先に帰ったのかな?
少年 それならすれちがったはずだ。
座敷童子 もっと、向こうへ行ったのかな?
少年 山の向こうのとなりの町へか?とても今日中には
帰ってこれないよ。よし、上へ登ってみよう。
座敷童子 バ・カ・ト・ケ・ム・リ・ハ タ・カ・イ・ト・
コ・ロ・ガ・スキ。
展望塔の階段を駆け上がり、あたりを見渡す。
少年 やっぱり、みつからない。
座敷童子 あの明るいのは?
少年 街の明かりだよ。
座敷童子 ちがうちがう、小さな光がいっぱい動いてるだろ。
少年 朝早くから、いったい何してるんだろう?
座敷童子 大人も探してるのかな。
少年 全然見当ちがいのところだ。おーぃ。
座敷童子 聞こえないよ。
少年 聞こえる。
座敷童子 今度は何がきこえるんだい。
少年 本当に聞こえるんだったら。
座敷童子 おーぃ・・・・・聞こえないよ。
少年 一々叫ばなくてもいいから、もう一度聞け。
座敷童子 (もう一度聞く)
少年 ほら、あれだよ。
座敷童子 どれ?わかんないよ。
少年 聞こえただろう。
座敷童子 どんなの音が聞こえるの。
少年 なんて言ったらわかるんだ。
座敷童子 例えば?
少年 例えば、江戸家猫八師匠のウグイスみたいな笛の
音。
座敷童子 笛の音。
少年 そうだそうだ、笛の音だよ。
座敷童子 見晴らし山の展望塔で、笛の音が聞こえる?
わーっ!
その2へ続く。
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