AWC 空想科学時代・劇「まだ誰も見たことがない」(2) CATCH


        
#1404/3137 空中分解2
★タイトル (BDM     )  92/ 1/26   1:42  (200)
空想科学時代・劇「まだ誰も見たことがない」(2) CATCH
★内容
空想科学時代・劇「まだ誰も見たことがない」その2

        座敷童子、階段を駆け降りる。

少年            どうしたんだ。
座敷童子        知らないのか。見晴らし山の笛吹き男の話を?
少年            なにそれ?怖い話?
座敷童子        聞きたいかい?
                昔、この街が鼠だらけになったことがあったんだ
                って。赤ん坊が食い殺されたりしたらしいんだ。
少年            そこへ、謎の笛吹き男が現われた。
座敷童子        赤と白のまだらの服を着たピエロのような奴だ。
                そいつが市長や街の人を集めてこう言った。
少年            何かとお困りの皆さん、わたくしが鼠を退治して
                みせましょう。
座敷童子        やつらを退治してくれるというなら何でもいいか
                らやってくれ。うまくいったら金を払おう。とい
                うわけで、広場の真ん中で男が笛を吹き始めると、
                街中の鼠が走りだす。走って走って、この見晴ら
                し山の洞穴へ飛び込んで消えてしまったのでした。
少年            さあさあ街の皆さん市長さん、鼠は残らず消えて
                しまいましたよ。
座敷童子        ブラボーブラボー。あれはいったい何という術な
                のかね。
少年            一子相伝の秘術です。
座敷童子        では、礼金を払おう。1枚2枚3枚4枚5枚・・
                今、何時だい?
少年            わかりません。
座敷童子        そうか・・6枚7枚8枚9枚10枚。さてここか
                ら、街への入門税を引き、消費税3%を引いて、
                次に動物の死体を許可なく捨てた罰金を取る。
少年            私の取り分がなくなってしまいました。
座敷童子        ところで君、出国手数料を払えるかね?
少年            お金をもってないんです。
座敷童子        では、この街から出ることはできない。何かでき
                る仕事は?
少年            笛を吹くことだけです。
座敷童子        だめだめ。乞食芸人は、音楽組合に入れないし、
                演奏許可証を買う金もない。
少年            わたくしは、何をすればいいのでしょう?
座敷童子        この街で、何もできない者は人間ではない。野良
                犬だ。野良犬は保健所で処分することになっている。
                こんなことをしているから、当市の財政は赤字な
                のだ。とんでもない厄病神を拾ってしまった。
少年            それからどうなったんだい。
座敷童子        この市長は財政赤字がもとで失脚、次は革新系の
                おばさんが市長になった。
                保健所で処分された笛吹き男の死体は、鼠が消え
                た見晴らし山の洞穴に捨てられたんだ。
                ところがその夜、洞穴の中から江戸家猫八師匠の
                ウグイスのような笛の音が流れてきたんだ。その
                音楽を聞いた子供たちは、布団から抜け出すと、
                一列に並んで踊りながら街を出ていった。
                その時ひとりだけ遅れてきた子がいてね、子守を
                していて手が離せなかったんだけれど。で、みん
                な楽しそうにどこへ遊びにいくんだろう、仲間に
                いれて欲しいなって、遅れてついてったんだ。子
                供たちは見晴らし山までやってくると、洞穴の中
                へポーンポーンと飛び込んでいく。穴の口がぼん
                やりと光り、中からはクスクスと笑い声が聞こえ
                るから、遅れてきた子がそーっとのぞき込むと、
                わーっ!
                穴のそこには、赤く血にぬれた毛むくじゃらがう
                ごめいて、消えたはずのねずみが子供たちを食い
                殺してたんだ。
                そのあとで、穴をふさぐためにこの展望塔が建て
                られたんだって。
少年            じゃあさっきの笛の音は、
座敷童子        笛ふき男の呪い。
少年            さすが座敷童子は、オカルトに詳しい。
座敷童子        おじさんにも、わかりやすいだろ。
少年            子供だよ。
座敷童子        見えないね。
少年            格好は関係ないだろ。
座敷童子        じゃあ、なんでまぎらわしい服着てるんだ?
少年            ファッションだよ。
座敷童子        ネクタイが曲がってる。
少年            やめてくれよ。
座敷童子        これを結ぶのに手間取って、遅刻したんだろ。
少年            ・・・・・・・・。
座敷童子        これで完ぺきな少年だ。

帽子を少年にかぶせる。

座敷童子        おそろいだぜ。
少年            どこで見つけたんだ?
座敷童子        気に入ったかい。
少年            どこにあったかと聞いてるんだ?
座敷童子        ごめん。拾った帽子をかぶせたりして悪かったよ。
少年            どこだ?
座敷童子        展望塔の上。
少年            誰かが落としたんだ。よし。
座敷童子        また登るの?
少年            早くこいよ。何してるんだ。
座敷童子        ここで待ってるから。
少年            怖いのか?
座敷童子        違うよ。
少年            笛吹き男が埋められたのは、塔の上じゃなくてこ
                こだぜ。
座敷童子        バ・カ・ト・ケ・ム・リ・ハ・・早くこいよ。
少年            やっぱり、聞こえる。
座敷童子        どうしたのさ。
少年            やっぱり聞こえないか、音楽が?
座敷童子        音楽?
少年            そうさ。手掛かりは、音楽だ。

        再び、オーケストラが、なり響く。
        黒板が二人の行く手を迷路になってはばむ。


/2.研究所・地下の実験室

        がらん・がしゃんと音が響いている。工事現場の真下のよ
        うだ
      博士、真っ赤な実がひとつついたりんごの盆栽を手にして
        いる。
        りんごは、太陽のように赤い。

博士            無限に広がる大宇宙。そこにはまだ私達が出会っ
                たことのない未知の惑星、未知の生命が待ち受け
                ているに違いない。
                宇宙、それは人類に残された最後のフロンティア
                である。
                恒星日誌、宇宙暦03.141592。
                諸君、いよいよわしの研究が完成するときが来た。
                この最後のリンゴが遂には熟して落ちるとき、わ
                しのライフワークが完成するのだ。思えば、宇宙
                の真理を確信したあの少年の日から、いくたびも
                ハレー彗星はその軌道を駆け上がり流れ落ち、そ
                れでも地球は周り、わたしの頭と逆回り・・・・
                おっほん。さて諸君、ここに取りぃ出したるりん
                ごがひとつ。
                これを太陽に見立てると、地球はここである。す
                なわち、直径1万2754km、軌道半径149
                6万kmである我らが地面は、りんごから10m
                のところをまわる9ミリの水玉ということになる。
                これが地球だ。生徒諸君きみたちは、ぐるぐるま
                わる水玉のほこりの上の考えるカビにすぎないの
                だ。居眠りしてる奴を起こしたまえ。
                おっほん。りんごのまわりを水玉が回り、水玉の
                まわりを砂粒が回る。砂粒の影に水玉が隠れると
                日食になり、水玉の影に砂粒が入ると月食になる。
                しかし、まわっているのは地球だけではない。な
                にがまわっているか?  はい、そこ。君の頭も空
                回り。もっと頭を使え、耳を澄ませ。世界の回る
                音が聞こえぬか!正解、水金地火木土天冥海。こ
                れらを遊星あるいは惑星という。
                水星はこのように回っている。

、ペンライトをもって、林檎から半径4メートルの
        ところを回る。

博士            金星はこうだ。

        黒衣2、ビーナスの姿で7メートルのところを回る

博士            そして地球がここ。火星は満員御礼立ち見のお客
                様のあたまの上を時速8万6400kmで飛んで
                いく。

方を赤いライトを持った黒衣3が走り抜ける。

博士            さらに木星の場合はりんごから55m、土星は、
                はるか彼方102mもの所にあるのだ。(劇場周
                辺の地図にりんごを中心に55mと102mの円
                を描く)  天王星はモスバーガーをまわり、冥王
                星はタコ焼き屋のむこうをまわり、海王星はミス
                タードーナッツの角をぐるりぐるりとまわってい
                く。ちなみにハレー彗星は、遠日点5億2958
                万km、近日点878万kmであるからして、こ
                の駅の改札口からりんごに向かって楕円軌道で落
                ちてきて、尾を常に太陽の反対側へ向けながら、
                りんごの脇6mで方向を変え、再び軌道を駆け上
                がっていくのである。生徒諸君!

        博士のうしろで満天の星々が輝き始める。

博士            太陽系の彼方、駅の向こうの知らない町に200
                0億個の星がある。そのひとつひとつが真っ赤な
                りんごだ。りんごの周りには惑星があり、惑星の
                上には世界がある。そして、世界が僕らを待って
                いる。機は熟した。諸君!。世界の音が聞こえるか。

        背後の輝く星々は、巨大コンピュータの制御ランプの点滅
        に変わる。
        がらん、がしゃんとひびく。
        マシンが足音を響かせてやってくる。

マシン          がらんがしゃん。がらんがしゃん。がらん。先生、
                大変です。
博士            博士と呼びたまえ。
マシン          子供たちが消えました。
博士            子供たちが消えた?
マシン          街中おお騒ぎですよ。
博士            そりゃ、大変だ。こうしちゃおれん。
マシン          待ってください、先生。
博士            この忙しいのに、博士と呼びたまえ。

その3へ続く
..




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