AWC 【平行世界】          はやてつかさ


        
#1305/3137 空中分解2
★タイトル (TVE     )  91/11/29   0:57  ( 50)
【平行世界】          はやてつかさ
★内容

『妹』

11月の下旬、寒い夜だった。半分以上眠ったままの気持ちで、歯を鳴らしながらト
イレに向かう。隣で寝ている母を起こさぬように気を使っているのだが、なにせボロ
のアパートだから、床がきしんでしょうがない。部屋のドアを開けて廊下に出る頃に
は、あまりの寒さに目が覚めてしまった。
用を済まして部屋に戻ってきた時だった。母のとなり、ようするに僕の布団が敷いて
ある所に、見知らぬ女の子が立っていた。年は自分よりした、18ぐらいに見え、白
いブラウスに、白いスカートをはいている。その少女がえくぼの可愛い笑顔を僕に向
けて言った。
「お兄ちゃん、誕生日おめでとう」

母が寝返りをうった。父は数年前に事故で他界してしまったので、現在は僕と母の2
人で生活をしている。そして、僕は明日(正確には今日)が20歳の誕生日だった。
白い少女が続けて言った。
「私ね、かおりって言うの。でも、生まれる前に死んじゃったの。お兄ちゃんがいた
 から」

何を言っているのかわからない。何かを言い返そうとしても声が出なかった。体も動
かない。僕はただ聞くしかなかった。
「でもね、怨んでなんていないよ。私、未熟児だってわかってたからね。おなかの中
 の私を私を可愛がってくれたお母さんに迷惑をかけたくなかったの。私の分もお兄
 ちゃんに生きてほしかった」
少女の瞳が閏んでいた。
「お兄ちゃん、20歳の誕生日おめでとう。これからもずっと元気でいてね。お母さ
 んを大切にしてね。私の分も…ずっとね。約束だよ」

そう言い残すと妹は消えてしまった。窓が明るくなっているのに気付くと同時に、自
分が震えていることに気付いた。寝床に入ってもその震えは止まらなかった。

昼頃だろうか。母に起こされた。
「今日はお前の誕生日だね。おめでとう」
「あ、ありがとう母さん」
母の目がいつもより悲しく、厳しかった。正座をしていることに気付いて、あわてて
自分も同じ姿勢をとった。いつもと違う雰囲気が漂っている。母が重そうに口を開い
た。
「今日はお前に言っておきたいことがあるんだよ」
「え……」

一瞬にして昨夜の事が頭に浮かんだ。信じられなかった。信じたくなかった。
「今まで黙っていたことは許しておくれ。お前のためを思っての事なんだよ。もう2
 0だ。この話をしてもいい頃だと思って…」
「だからなんだよ! はっきり言ってくれ、母さん!」

「お前は捨子だったんだよ」


                          END





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