#1175/3137 空中分解2
★タイトル (ENB ) 91/ 9/16 22:30 (145)
がんばれ美由紀ちゃん−大坂秋の陣−(4) かきちゃん
★内容
4.生まれたての朝(2)
10時ちょい過ぎに部屋に着いた。
途端に美由紀は青いかおをしてトイレに駆け込んでいった。
「大だろうか、小だろうか……。」と俺は真剣に悩んだ。
「今ごろ美由紀はトイレの中でスカートをたくしあげ、パンティをおろし……。」
などど想像してしまうのは俺が変態だという証拠だろうか?
コンビニでは美由紀がわけのわからないものをいっぱい買い込んでいた。
……おにぎり(シャケと明太子とおかかのを2個ずつ)とジュースまでは良かったが、
「なんか買わなきゃなんないような気がする。」と言って、にんじんを大量に、それ
から釣竿を一本(何でこんなもんコンビニで売ってるんだ?)、カップめんをこれま
た大量、下着(美由紀の着替え)、etc.……
「こんなもんどうする気だろう?」とにんじんと釣竿をこたつに置くと、美由紀側
の部屋(カーテンは開いている)に紙袋が置いてあるのを見つけた。
その紙袋にコンビニで買ってきたものを移そうと中を見ると、中には衣類が入って
いた。漂ってくる香りからすると美由紀の洗濯者らしい。「うーん、まったりとして
いて、それでいてすこしもしつこくない」と海原雄山のようにつぶやいた。一番上に
はピンクのパンティがのっかている。匂い付きほかほかパンティというやつだ。おと
といはいていたやつかも知れない。その芳醇な香りを嗅いだ途端、悪魔が俺にささや
いた。
「美由紀は今トイレに入っている。取るなら今だぞ。」と。
しかし、負けずに俺の理性もささやく。
「そんな事してみろ、完全な変態だぞ。美由紀にばれたら軽蔑されるぞ。」
「うるせぇ!おまえは黙ってろ!」
「ぬわんだと、この野郎!」
悪魔と俺の理性はとっくみあいのケンカを始めた。まずは悪魔が俺の理性(以下理
性と略)にフライング・クロス・アタックがさく裂。しかし理性も負けてはいない。
はっしと受け止めデッドリー・ドライブ!悪魔は背中をおさえてうめいている。
「とぁー、フルネルソン(フルマラソンじゃあないよ)!」
「チョークチョークチョーク!」
「ワン、ツー、スリー、フォー」
どっかからか出てきたジョー・樋口がカウントを取る。悪魔は、「ノーノーノー」と
言って手を離す。
悪魔と理性とジョー・樋口が入り乱れて戦っていたが、ついに決着がついた。 理
性が悪魔を卍固めに決め、悪魔がついにギブ・アップか、というところで悪魔が最後
の気力を振り絞って「えいやぁっ」と理性を投げ飛ばし、大技パワー・ボムが豪快に
決まった。理性は縦につぶれてしまっている。ジョー・樋口が飛び込んで、
「ワン、ツー、スリー!」
見事カウント3が入って悪魔が勝ってしまった。理性は縦につぶれたまんまだ。悪
魔は勝利者トロフィーを手にほこらしげに退場していった。
というわけで俺は美由紀のパンティをポケットにいれた。
「ふーんだ、どーせ俺は変態だい!ばれなきゃいいんだーい!」とめいっぱい開き
直ってしまっている。
縦につぶれてしまっていた理性がようやく立ち直った頃、美由紀がトイレから出て
きてベッドの上に座った。俺は反射的に顔を赤らめた。
「長かったね。」と思わず口にしてしまうと、今度は美由紀が顔を赤らめた。
「馬鹿。」と一言。
しばらく気まずい沈黙の後、美由紀は、
「ねぇ、ちょっと考えてみたんだけど……。」
「便秘の直しかたを?」
べしっ!
「これからのことよ!」
あ、そうか……パンティに気を取られて何も考えていなかった。たはは………。
「んで、どーする?」
「うん、いっぺんお父さんの会社に行っていろいろ聞いてみたらどうかなって……。
」
美由紀がベッドも上で足を組む。うっ、もう少し……。
「それはいい考えだな。じゃ、そうしようか。」
もともと俺は何も考えていなかったので、すぐに美由紀の意見に賛成した。美由紀の
父親の勤めていた会社は俺の親父が前に少しだけ社長をやっていたから俺も知ってい
る。
美由紀は俺の視線を気にしてスカートを直しながら(このスカートを直す動作中は
一番中身が見えやすい)、
「社長(もちろん徳川社長だ)秘書の淀さんって人知ってるからその人に話を聞い
たらいいんじゃないかと思ったんだけど……。」
「うんうん、そうしよそうしよ。」
「ひょっとして明智さん、何も考えてないんじゃないの?」
ぎくっ。
「そ、そんなことないよ、やっぱり白がいいなあとか、ピンクも捨てがたいなあと
か……。」
「なに言ってんの?」
なに言ってんだろ?
とにかく駅まで歩いて10分、電車で45分、徳川商事に行くことになりました、
やれやれ。
途中、徳川商事に電話して淀秘書に会社の近くの喫茶店に出て来てもらった。
社長秘書が二人もいるぐらいだから(もちろん美由紀の父親の小林忠勝秘書と淀秘
書である)結構大きい会社に思えるだろうが、実際は従業員数100名弱、事務所は
貸しビルの一室にあるため社内に入ることはできなかった。
「あら美由紀ちゃん、お久しぶり。」と言って入ってきたのは結構いい年のおばち
ゃんであった。若い美女を想像していた俺は3m程飛び上がった。そして、その後の
言葉でさらに5mほど飛び上がった。このおばさんと一緒なら俺はバルセロナオリン
ピックで金メダルを取れるだろう(喫茶店の中でどうやったら5mも飛び上がれるの
かは考えないでいただきたい)。
「今日はどうしたの?高校は今日はお休み?」
”高校?美由紀は二十歳の女子大生と言っていたがウソだったのか?”
美由紀はこっちを見て肩をすくめ、舌を出している。
俺はむっときたので、この場では口をきかなかった。要するに、美由紀は俺をだま
していたんだ。
というわけで、ここではもっぱら美由紀と淀秘書がしゃべっていた。と言ってもほ
とんど淀秘書が90パーセント位だったが。
「すみません、お仕事中に……。」
「いいえぇ、いいのよ、別に。ほら、社長がいなくなっちゃたもだから暇で暇でし
ょうがなかったのよ。社長秘書って仕事は社長がいなきゃどうしようもないですから
ねぇ。社長の捜索は警察にお願いしてますし。だから、今の仕事はもっぱらお菓子を
食べながら雑誌を読むだけ。もう、社長室は女子社員の休憩所になってますよ、おほ
ほほほ……。」
とこの調子だ。
美由紀は淀秘書のおしゃべりの隙を見つけるのに必死だ。そしてついに口をはさむ
ことができたようだ。
「それで、社長とお父さんがいなくなったときの事ですが……。」
「そうそう、あなたのお父さんもいなくなったんですよねぇ、おかわいそうに。今
はどうしてらっしゃるの?」
「この(と俺の方をみて)人にお世話になってるんです。お父さんのお友達の息子
さんで、明智さんといいます。」
「あらあら、明智さんといえば、一時期うちの社長だった明智さん?」
「そうです。お父さんがいなくなる前に、”俺にもしもの事があったら、明智さん
のお世話になれ”と言ってましたから。とっても優しくていい人で助かりました。」
と、ちらっと俺の方を見て言った。ふん、何と言ってももうだまされんぞ。
「そうでしたの、よかったわね。早くお父さん見つかるといいわね。」
「それで、明智さんと一緒にお父さんを捜すことになったんですけど、何か心当た
りはありませんか?社長さんの事でも、お父さんの事でもいいんですけど。」
「まぁ、あなたとこの人が?」
俺の顔を見て、大丈夫なの?と言う顔をして言った。
「この人、探偵さんなんです。」と美由紀は言った。俺はコーヒーを吹き出しそう
になった。おばはんは、
「あーらそうなの、それは心強いわねぇ。」
と、簡単に納得している。
「社長が出て行ったときは、なんか、変なお面を見ていて突然、”機は熟したぞお
ーっ!いざ如水を討ちにゆかん!”とか叫んでいきなり叫んで出ていっちゃたのよ。
その前は何も変わったことはなかったんですけどねぇ。」
「お面?」と美由紀は聞き返した。
「そう、能面らしいんだけど、出て行くとき落としてしまったようで、社長室のド
アの所に落ちてたんですよ。よかったら持ってきましょうか?」
電車を降りるまで俺は終始無言だった。美由紀は淀秘書から受け取った能面が入っ
た紙袋を持ってずっとうつむいている。
駅を出ると、美由紀が口を開いた。か細い声で、
「ごめんなさい……。」と。そして、
「だますつもりはなかったんだけど、高校生だなんて言ったら部屋にいれてくれな
いと思って……。」
と泣きそうな声である。
「もう、ゆるしてくれない?部屋に置いてくれない?」
で、やっぱり負けてしまった。
「まあ、しかたないよな、大学生だろうと、高校生だろうと、美由紀ちゃんは美由
紀ちゃんだ。」
「許してくれる?」
俺はいまひとつすっきりしなかったが、一応うなずいてみせた。美由紀は涙のたまっ
た目で俺を見たあと、
「ありがとう!」
と言って俺に抱きつき、唇を俺の唇に押し付けてきた。
グサッ!と音がした。
俺の鼻の下が1.5メートル伸びて地面に突き刺さった音である。美味であった。
美由紀に負けず単純な俺であった。