#1112/3137 空中分解2
★タイトル (GSA ) 91/ 8/23 7:19 (114)
派遣前の出来事( 1) ハロルド
★内容
(登場人物)
北室 進悟・24…………会社員
坂本真知子・24…………北室の恋人
阿倍野耕一・24…………北室の同僚
白田 春美・14…………中学生
白田 夏枝・37…………春美の母
白田 伸夫・47…………春美の父
川原 正一・61…………ジャズクラブ「ソールトレイン」
のマスター
川原 静佳・18…………正一の娘
増田 部長・41…………北室の上司
青田 直子・22…………北室の同僚
○ 線路(都会)
電車が走っている。(タイトル、始まる)
○ 同・車内
吊革につかまって紺のスーツ姿の男(北室進悟・24)
がそわそわしている。
○ 駅・プラットホーム・(昼)
−−メインタイトル「派遣前の出来事」プラットホー
ムの一番端に冬服のセーラー服姿に学生鞄を持った愛
らしい少女(白田春美・14)が佇んでいる。何か思
い詰めている様子で今にも泣き出しそうな表情。
(タイトル、終わる)
周りに人気は少ない。構内アナウンスが流れ、列車が
到着する。ドアが開き、中から小さな女の子を連れた
親子三人連れが出てくる。親子はとても幸せそうで、
楽しく笑っている。春美、それを羨望と悲哀の混ざっ
た表情で見ながらため息をつく。反対側の車線にも電
車が到着し、そこから北室が降り立ち、慌ててプラッ
トホームの端の方まで来る。北室、背広のポケットか
ら煙草を取り出し、火をつけてすぐにスパスパと吸い
出す。今まで車内で我慢していたらしく、おいしそう
に吸い、安心した表情。北室、何気なく反対側の車線
の春美の方を見る。春美はまださっきの親子連れが改
札口の方へ楽しげに歩いているのを羨ましげに眺めて
いる。その寂しげな様子をしばらく眺めている北室。
春美、プラットホームの黄色い線の外側に立っている。
北室、もう春美の方には関心がなく、次の列車を待っ
ている。
構内アナウンス「ただいまより列車が通過します。ホームにおいで
のお客様は黄色い線の内側にお下がりください」
北室、春美を見ると、一向に下がる様子がないので、
不審な表情。
線路の遠くから急行電車が警笛を鳴らしてやってくる。
春美、それを覚悟を決めたような恐怖の表情で見る。
列車、ますます近づいてくる。北室、焦りの表情でそ
れを見ている。列車、構内に入り、春美、覚悟を決め
た表情。北室、唖然としてくわえ煙草を落とす。しか
し春美、列車が自分の前まで近づくと恐怖におののき、
足がすくみ、目をつむる。その前を列車が通過する。
列車が行ってしまうと北室、ため息をついて安心した
表情。春美、うなだれて涙をこぼす。北室、やりきれ
ない表情でしばらくその様子を見ている。
○ 同・数分後
北室が吸った煙草の吸殻が増えている。春美、相変わ
らず思い詰めた様子で佇んでいる。再び構内アナウン
スが流れ、列車が到着する。北室、春美の方を気にし
ながらも電車に乗り込む。春美、いまだに佇んでいる。
北室、シートに座り、電車の窓越しに春美の方を見、
気にしているが、やがてため息をついて頭を振り、目
を閉じる。構内アナウンスが発車の予告を告げる。北
室、横目でチラリと春美を見る。春美の寂しそうな表
情。北室、気にしないように努め、再び目を閉じる。
警笛が鳴り渡り、電車のドアが閉じられようとした瞬
間、北室、立ち上がり、ドアが閉じられる一歩前に電
車から飛び出る。発車する電車。北室、再び煙草に火
をつけながら春美を観察する。
○ 同・数分後
再び構内アナウンスが通過列車の予告を告げ、春美、
やってくる列車の方を見る。北室、険しい表情で春美
を見て駅の階段の方へ走り出す。春美、黄色い線の外
側に立つ。列車、ますます近づいてくる。階段を走る
北室。春美、険しい表情。列車が春美の寸前まで来る
と、春美、鞄を落とし、一歩後ずさって目をつむり、
飛び込もうとする。その瞬間、春美、何者かに腕を掴
まれ、引っ張られる。春美、驚いて後ろを振り向くと、
いつのまにか北室がやってきていて春美をホームの内
側まで引っ張っている。通過する列車。春美、北室か
ら離れようともがく。列車が通過し終わると、北室、
春美をようやく離してやる。春美、泣きながら北室を
睨み、平手打ちを食わそうとするが逆に腕を掴まれて
しまう。春美、無理に腕を振り解き、涙を流しながら
怒りの表情で北室を見る。
春 美「止めなければ死ねてたのに……」
北 室「そいつはしゃくだったな」
春 美「余計な事をしないで下さい!」
北 室「何が余計なもんか。お前さんに飛び込まれると電車が遅れ
てみんなが迷惑だ。……自殺なら他でやるんだな」
春 美「貴方なんかに何が分かるもんですか!」
北 室「自殺する奴の気持ちなんかわかろうとも思わんよ」
春美、北室を憎々しく睨んでいるが、やがて落ちた鞄
を拾い、その場を去ろうとする。
北 室「(去ってゆく春美に)どうせ死ぬくらいだったら、逃げて
ないで死ぬ気で問題に立ち向かったらどうだい?」
春 美「(振り向いて)何も知らないくせに偉 そうな事を言わな
いで下さい!」
春美、泣きながらその場を去っていく。北室、その姿
をしばらく見ている。