AWC CAMPUS> 怒涛の体育祭 (5)  ■ 榊 ■ (21/75)


        
#813/3137 空中分解2
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CAMPUS> 怒涛の体育祭    (5)    ■ 榊 ■  (21/75)
★内容


竜童と同じ様に柔道着を身にまとっているが、まだまだ小さいと言う感じを受ける。
今日、入ったばかりの竜童の妹である。
ちなみに、顔形は夜叉と似ても似つかない。
名前は竜童絵美と言う。
竜童の声が道場に響いた。
「圭介、ちょっとこい」
すると、14・5人いた中の一人の動きが止まり、こちらの方に走ってきた。
すぐ前までくると、一礼し、正しい姿勢で正座した。
「何でしょうか。主将」
佐々木圭介 −−− ここの副部長である。
体こそはそう大きくないが、引き締まった筋肉が柔道着の隙間からのぞめた。
町を歩けばどこかにいそうな好青年というタイプだが、彼の格闘技の腕はなかなかの
ものである。
「仕事だ。東京の新宿高校の方に行ってくれ」
「新宿ですか?」
「うむ」
竜童は小さくあいずちをうった。
この仕事と言うのは、格闘技の技術を持って、問題児をおとなしくさせると言うもの
で、荒廃した学校が多い今、なかなか繁盛している。
これには必ず新米と先輩の二人で行き、実戦を体得する訓練となっていた。
「で、相手は」
竜童の顔にわずかながら苦々しさが浮かんだ。
「この」
左にいる妹をさした。
「俺の妹の…………竜童絵美だ……」
名前を呼んだとき、妙に声が小さくなった。
「どうも、はじめまして」
絵美はにこやかな顔で、圭介にお辞儀した。
「あっ、はあ。どうも」
しどろもどろの返事を返すと、圭介は主将の方ににじり寄った。
「ちょっと、聞きたいんですけど…………腕前の方は……」
竜童は妹の方を一瞥すると、今度は本当の苦笑いをした。
「女らしく育てたはずなんだが…………」
「結構、できるんですか?」
竜童はそれで全てを物語っているような大きなため息をついた。
「もしかしたら、お前より強いかもしれん……」
竜童はため息混じりに答えた。
「はぁ?」
予想以上の答えが返ってきた圭介は、絵美の方を見た。
圭介には絵美の顔がにやっと笑ったような気がした。

新宿高校は荒廃しきっていたわけではなかった。
二つのクラスにその主な人物達が集まっているため、その二クラスだけは手が出せな
いと言うだけの事だった。
圭介と絵美の二人は別れてそれぞれのクラスに入った。

圭介の方は −−−−

2年H組。
壁、床、天井、ガラスには余すことなく落書きがしてあった。
ガラスは割れ、ゴミも散らかり放題だった。
薄汚いふいんきが、教室を暗くしているような気がした。
空気が重く、やにの匂いを含んでいる。
その教室では、きちんと机がさげられ、まん中が開けられていた。
サこに、所狭しと生徒が倒れている。
女性、男性、半々で40人はいるだろう。
血を流している奴は殆どいなかったが、ぴくりとも動く奴はいなかった。
その中央で、最後の一人をひっつかまえ、圭介は頬に痛恨の一撃を放った。
嫌な音と共に、男は意識を失い、人の山の礎となった。
「よし、完了」
圭介は息もきらさず、悠々と人垣を越え、教室を出て行った。

一つとなりが絵美のクラス。
圭介は後ろの扉のふるぼけたガラスから、教室をのぞいた。
「ふあ」
中の散々たる様子に、圭介は感嘆の声を漏らした。
教室内がペンキでペイントされているのは一緒だった。
しかし……。
ガラスは割れ、黒板は崩れ落ち、蛍光灯も光を放っている物はなかった。
机は変な形で曲がっているのもあれば、もの見事にまっぷたつに割られているのもあ
った。
教室はごみためと化していた。
生徒は壁に張り付いて気を失っている者もいれば、机の下敷となっている者もいた。
生徒は皆、外側に張り付いて気を失っていて、まん中だけが何もない慌野となってい
る。
そのまん中に小さな絵美が立っていて、両の手を顔にあて泣いていた。
圭介は半分唖然としながらも、扉を開けた。
絵美はドアの開く音がすると、一瞬びくっとしたが、顔をそーっと上げ、相手が圭介
だとわかると泣いたまま走り寄ってきた。
圭介の背中に一瞬、悪寒が走ったが、よけずに絵美を受け止めた。
絵美は圭介の胸の辺りで泣きじゃくった。
「あーーーーん、こわかったよーーー」
子供のような泣く絵美をしりめに、圭介はもう一度中を見回した。
教室の様子は圭介のそれよりひどかった。
そして、そっと心の中で思った。

こいつの方が、もっとこわい…………。


破壊部 −−−

どういうわけだか、格闘技部よりもっと強い集団がいる。
破壊を特技とする、今回最大の優勝候補。
それが、破壊部 −−−− 。
なにが凄いのかと言われると困る。
ここで言う破壊という物は天性的なものが強く、普通練習してもたいしてのびるもの
ではない。
だから、部員は他のクラブに在籍しているため、部員は三人のはずなのだか、いま解
っているのは部長だけ。
その部長も実力がどれだけあるのか、はっきり言って解らない。
と、謎に包まれているところが多く、どうして優勝候補なのかと言われると首を捻ら
ざるおえない。
ただ、この部長の御影誠一郎はとんでもない男だと言うことだけは確かである。

秋もせまり、木の葉が赤く紅葉してきた頃。
風は涼しく、林の中を時々駆け抜ける。
近くに小さな滝が、心地よい水の音をたてて落ちていた。
鳥がさえずり、時折、りすが顔を見せる。
ここは、学園内、巖螺御所<カグラゴショ>と呼ばれる森の鼓墨<コボク>の滝。
筋肉隆隆の男達が6人が、少しずつ離れて立っていた。
どれも、この学園内でも屈強の強者ばかりである。
その6人の前にはそれぞれふた抱えはある、大きな岩が置いてあった。
そして、じっと対岸にいる一人の男の話を聞いていた。
対岸にいる男は御影。
その前には同じように大きな岩が置いてある。
多数の依頼があり、今回珍しくも御影がレクチャーをしているのである。
静かな森に、御影のハッキリした声が朗々と響いた。
「物には全て要と呼ばれるものがある。その要さえつかめば、小さな力でも割ること
ができる。逆に、要が解らなければ、何も割ることはできん。勿論、力で割ることは
できるが、恐ろしく力がいる」
御影は大きな岩をこんこんと叩いた。
「見つけれるようになるまでは難しいが、一度解れば後は簡単なもんだ」
御影は軽く拳をあげ、大根でも切るかのように平手を降りおろした。

スコン!






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