#812/3137 空中分解2
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CAMPUS> 怒涛の体育祭 (4) ■ 榊 ■ (20/75)
★内容
いや、驚いたのは龍二だけではない。
恒樹を知っている者、全員が驚いた。
特に驚いたのは、沙羅だろう。
ぽかんと、口を開け弟を見ていた。
あの、軟弱者が、という思いが強かったせいだ。
しかし、恒樹は数歩前に出、観客から出て行った。
奴らも、声を出した相手が解り、笑いながら2・3人寄ってきた。
恒樹は真剣な顔でにらみつけた。
「風 −−− 」
ゆうが手を前に出し、言った。
龍二ははっと我に帰った。
「あねさん、風がどうしたんですか?」
ゆうは、空を見上げた。
「風が、吹いている…………」
「んな、あたりまえじゃないですか」
凄い勢いで、風の勢いが早くなって行くと、龍二もその異変に気が付いた。
「なんですか? この風」
ゆうは、ここ数年浮かべたことのない笑顔を浮かべ、恒樹を指さした。
「これが、あいつの能力よ」
やつらも、風の異変に気が付いたが、かまわず近寄って行った。
風の勢いがひどくなり、観客の中では髪をおさえたり、物が飛ばさないようにとちょ
っとした騒ぎになった。
奴らの一人が、恒樹のむなぐらをつかんだ時、いっそうひどくなり、つかんだ男も不
安気に空を見上げた。
恒樹は天高く手をあげた。
まるで、それが合図かのように嵐のような風が吹き荒れた。
そして、急にやむ。
「ふぁー、何ちゅう風だ…………」
龍二はぼやきながら顔をあげた。
沙羅も立っている、恒樹も変わらぬ格好をしている、観客も全員いる。
だが、奴らがいなかった。
「奴ら、どこ行きやがった?」
みわたしても、見える範囲に奴らはいなかった。
学園内の逆の端にある病院の屋上 −−−
彼らが落ちてきた。
「あら」
近くで洗濯物を干していた看護婦が、それを見つけた。
「せんせー、急患よーーー」
屋上に人が降ってくることぐらい、日常茶飯事のため、看護婦はいたって平静を保っ
た声で言った。
「恒樹、やったじゃない」
ゆうが遠くから声をかけると、恒樹の意識が戻った。
恒樹はぱっと声のした方を向くと、観客が皆こちらを向いていることに気づいた。
「すごいな。今の竜巻」
校舎の中から、会長の榊が出てきた。
饐ミ手に何らかしらの資料を持っていた。
艪、は、恒樹にうすら笑いを見せると、榊の方を向いた。
「会長。柳瀬恒樹君に、部長を交代したいのですが」
すると、観客からも歓声の声が上がった。
「えっ?」
恒樹はあっけにとられた。
榊は、資料の紙で口を隠し、周りの惨状を見た。
「ん、資格は十分だな。いいだろう。後で書記の方に報告書おくっといてくれ」
そういうと、とっとと帰ってしまった。
「えっ?」
恒樹は沙羅に助けを求めるように振り向いた。
沙羅は笑顔で手を叩き始めた。
すると、観客も手を叩き始める。
「えっ? えっ?!」
恒樹は周りを見た。
みな賛成を唱え、意義を唱える人など一人もいなかった。
肩を叩かれ振り向くと、笑顔のゆうが立っていた。
「おめでとう、新部長」
すると、今度は逆の肩を叩かれた。
振り向くと龍二がいた。
「やったな。頑張れよ。部長」
恒樹は拳を握りしめ、顔をあげ、空に向かって叫んだ。
「陰謀だーーーー!」
こうして、彼もめでたく要注意人物に名前を連ねた。
−−−− 情報部
情報の一切を取り扱っている情報部。
その部員は、情報を取り出すことは勿論、自分達で情報を集めるのも得意なフォーカ
スやフライデーのレポーターの様な奴らである。
いま部長をやっているのは、未杉清隆。
4・5人いるんじゃないかと言われるぐらい、色々な所に現れる、神出鬼没の男であ
る。
得意技は、100mを9秒で走ってしまう馬鹿みたいな足と、話している端々で、情
報を得てしまう、会話誘導術である。
いつもは、テレビの山と積まれている部室にいる。
今日もそうだった。
未杉は、中央に設置してある、会議様の机に足を投げ出し、椅子に座っていた。
そして、ついさっきプリントアウトされた紙を読んでいる。
その時、部室のドアを開ける男がいた。
少し背の低い、気の弱そうな男だった。
未杉はその男を見ると、軽く舌打ちし、男に向かってぼやいた。
「まーったくー。恋愛問題なんかでうちにくるなよー。うちは、相手がどう思ってる
かなんて言う調査はしないよ」
この男、未杉に会うことさえめったにないのに、いきなり言おうとしていたことを言
われ、ただ唖然とした。
未杉はため息をついた。
「安心しろ。相手もちゃんとお前のこと好いてるよ。勇気だして告白してごらん。
87.5%、ふられやせんよ」
未杉はまた視線を用紙の方に移した。
質問する前に全て言われてしまったため、男はただ呆然としていた。
2分30秒経過 −−−−
そして、男は一言いって、戸を閉めた。
「有難うございました」
彼は全ての事を知っている。
−−−− 格闘技部
この学園でもれっきとした、格闘専門のクラブがある。
それがこの格闘技部。
部長の名は、竜童夜叉。
身長180cm。体重100kgの大男である。
その体と落ち着きのある風格は、やっさんどころかプロレスラーでもおもわずお辞儀
してしまうものがあった。
竜童は百畳はある道場の一番奥の祭壇の前で正座をしていた。
広々とした道場に、周りを囲む森から鳴いている蝉の音が心地よく響いている。
時折、道場に風が通り抜け、熱くなった体を冷やした。
竜童は山のような体を道場の方に向け、部員達が訓練している様子を見ていた。
そのすぐとなりに15ぐらいのまだ可愛い少女がちょこんと座っていた。