#810/3137 空中分解2
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CAMPUS> 怒涛の体育祭 (2) ■ 榊 ■ (18/75)
★内容
何かあると如月は思った。
“罠だな……。飛び込むと、おそらくやられる。”
如月は思ったが、相手は全然気にした風もなく、立っていた。
やがて、相手の剣がゆっくり、如月の体をなぞる様に、降りてきた。
中段の構えを取った頃、相手の竹刀の先は、如月の小手に当たっていた。
いつのまにかに、相手は間合いを詰めていたのだ。
「こーーーーてーーーー」
間の抜けた声がした。
しかし、確かに小手が決っていた。
特に強く打たなくてはいけないと言うルールはない。確かに小手である。
如月を始め、観客はおろか、審判まで放心状態におちいった。
それはまさに、“えっ”という出来事だった。
相手が、近くにいる審判の方を向くと、審判ははっと目が覚め、判定を下した。
「有効!」
するともう一人の審判も気づいた。
「有効!」
そして、最後に審判長の声が響いた。
「小手あり! 一本!」
相手側の観客席から歓声があがる。
それを聞いて、ちらほらと事情が飲み込めた人が出てき、ぼそぼそと話し始めた。
「なんだー、ありゃ…………」「卑怯だ!」「次は取ってやれ!」
罵声が飛び交うが、一番そう思っていたのは、如月の方だった。
如月は、ぎゅっと竹刀を握りしめ、観客に手を振る相手をにらみつけた。
「二本目! 始め!」
二本目が始まると、如月は打って出た。
今度は激しい攻防戦がみられた。
如月の方が完全に押していたが、相手は旨い具合いによける。
観客からは如月が完全に押しているように見えただろうが、如月にとっては違ってい
た。
どんなにうまく打って出ても受け止められてしまうのだ。
これでは、逆に追い込められているのと同じだった。
「はっ!」
如月はおもっきり面を打とうと竹刀を振り降ろした。
場内にひときわたかく、竹刀の音が響く。
しかし、数メートルふっとばされて倒れたのは、如月のほうだった。
押していた如月が飛ばされ、尻餅をついたのを見て、場内は静まった。
「なに!?」
如月はすぐ立とうとしたが、相手はそこを襲うことはなかった。
ただじっと、中段に構え、立っていた。
さっき、如月を投げ飛ばしたほどの剣の力はどこえやら、まるで存在がないように立
っていた。
「くそ!」
如月は立ち上がり、また元のように、向かい合った。
如月は懇親の突きを放った。
が、その時、異様な殺気をおぼえ、途中で剣を止めてしまった。
背中に悪寒が走り、顔に冷汗が流れる。
“なんだ今のは…………”
すると、相手が一歩前に出てきた。
如月がそれにつられて、一歩さがる。
今では完全に相手が押している雰囲気だった。
すると、どういうわけか、今度は相手が一歩さがった。
如月は一歩前に出た。
が、相手が後ろに下がったのは、右足をさがらしただけの見せかけだった。
そして、如月が一歩前に出るとき、逆に一歩出てきて、間合いをつめた。
「しまった!」
如月は竹刀を立てて、防ごうとしたが、既に遅く、相手の竹刀が行きよい良く面に当
たった。
「めーーーーん!」
さっきとは違い、高く、大きい声が場内に響いた。
今度は、審判の採点も早かった。
「有効!」「有効!」
「面有り、一本! 優勝、星城学園!」
審判の声が響くと、相手のベンチからは歓声が、如月の席からはざわめきが聞こえた。
そうなのだ、油断していたとはいえ、二本相手に取られてしまったため、如月の負け
なのである。
「なんだ! あいつは」
「知らん。いましらべる」
といって、男はパンフレットを急いでめくった。
「星城、星城…………あった! えーと、星城学園 代表 ……え?!」
「どうした。早く言え!」
「やなせ…………さら?」
「なに! おんなぁ?!」
相手は場内のまん中で面を取った。
すると、長い髪が流れ落ちるように出てきた。
そして、汗にまみれた笑顔を見せる。
少しと厳しそうだが、優しい感じのする顔。
そして、きれいな大きい瞳。
それは、間違いなく、女性だった。
その女性は、髪を舞わせながら、観客席に笑顔で、可愛くVサインをした。
その笑顔と行動は、とてもインターハイの優勝者とは思えないものだった。
その可愛い少女こそ、我が星城学園の剣道部の部長、柳瀬 沙羅。
星城学園でも、五本の指にはいる強者である。
−−−− ESP部
「会長! すまん!」
剣道部の部長の柳瀬沙羅は、生徒会長の榊健司に謝っていた。
ここは、星城学園内、生徒会室。
かなり広い会議室の中、生徒会長と、書記、会計が座っており、その前で沙羅が手を
顔の前で合わせ、一生懸命謝っていた。
インターハイがあってから、1週間後の暑い日だった。
南向きの窓から、暑い日差しが照りつける。
「沙羅、いい、そんなに謝らなくても。グランドは貸してやるから、かたつけてこい」
榊は、苦笑いを浮かべながら言った。
肘をつきながら、いま入ってきた報告書に、もう一度目を通す。
なぜ、沙羅が謝っているかと言うと、先のインターハイで負けた如月悠が、しかえし
に来たのである。
エリートコースまっしぐらの彼にとって、先の大会はプライドが許さなかったのだろ
う。
だが、沙羅の力を知っている彼は、単身で乗り込んできたわけではなく、どこかのご
ろつきも一緒だった。
そいつらが来ると言う情報が入り、その情報が書いてある報告書が榊に届けられ、榊
が沙羅を呼んで、こういう場面になったのである。
沙羅はすまなそうな表情をした顔をあげ、壁にもたれさせといた木刀を取り、ドアの
方に向かって歩いて行った。
ドアを開け、出る寸前にもう一度、榊の方を見た。
「それじゃあ、かたをつけてくるから」
「いってこい。ただし」
急に榊の真面目な表情が崩れ、笑顔になる。
「上には上がいる事を教えてやれ」
沙羅も笑い、榊にウィンクをする。
「わかった。後の処置たのむね」
沙羅は生徒会室の大きなドアをいきよい良く閉めた。
ESP部 部室 −−−−
クラブ校舎のまん中の一階にあたる教室が、ESP部の部室である。
普通の教室と全く変わらない、木でできた壊れかけのドアがいきよいよく開けられた。
ドアを開けたのは、ESP部部員 −−− 神野 龍二だった。
龍二はREFLEXと大きく書かれた黒いクラブジャンパーに、ジーンズを着て