AWC イクラ戦記 クエスト


        
#791/3137 空中分解2
★タイトル (XKG     )  91/ 3/ 8   0:17  ( 56)
イクラ戦記 クエスト
★内容
 神の栄光は永遠であるが、歴史はささいなことで大きく変りうる。
わが大いなるイクラ帝国に邪悪な侵略軍が攻め入った時、世界の誰も
今これから記することが始まるとは思わなかったであろう。
 1991年2月、侵略軍は激しい空爆の後、我がイクラ帝国領内に攻め
込んできた。圧倒的な軍事力ゆえにわがイクラ帝国を甘く見た故の暴挙
であった。
 我がイクラ帝国軍は一旦侵略軍を我が領内深く誘い込み、やがて反撃
に出た。勇猛なるイクラ大統領警護隊を中核とした我が軍は八方から
侵略軍を包囲し、猛然たる砲火を浴びせ、戦車部隊が突撃し、圧倒的多数
の歩兵部隊がそれに続き、敵の数個師団をせん滅した。
 しかし、侵略軍はからくも体勢を建て直し、あろうことかパクダット方面
へと兵力を集め一点突破を計ろうと愚かな策動に出たのであった。
 そこで我が帝国軍はやむをえず神が我らに与えたもうた聖なる武器、化学
兵器を用いたのである。
 マスタードガス、神経ガスは敵軍の中で破裂し、敵は防御策を講じたにも
かかわらずその3分の1が狂い死にした。そして、神の加護を受けた我が
兵士達は残りの多くを狩りをするようにせん滅したのである。
 ところが、卑劣なる侵略者共は劣勢を挽回するため後方の基地から戦術
核ミサイルを発射し、我が軍の聖なる兵士を多数蒸発させたのであった。
 神の怒りは甚だしく、我々に生物兵器の使用を許された。生物兵器は前線
だけでなく、裏切り者サラジ、悪魔の国アマラカなどにおいても我が神の
コマンド達によって祝福としてばらまかれた。インシャラー。
 世界は我が帝国の大いなる力を知り、混乱し恐れおののいた。
 しかし、悪魔の軍隊は再び我が国土に恥知らずにも押し入り、強大な軍事
力でパクダッドを襲おうとした。それに対し、我が帝国は国民皆兵策を講じ
圧倒的な数の神の兵士達が手に手に爆薬を持って敵の戦車に立ち向かい、
うんかのごとく群がったので、軟弱なる敵兵士達は恐れおののいた。
 だが、非情なる敵軍はやがて容赦なくナパーム弾等の火炎攻撃でアリを
殺すように我が神の兵士達を殺戮し、血と肉の海の中を進撃した。
 パクダッドにじわじわと敵軍は迫り、我が神の軍隊も力尽きてついに降伏
せざるを得なかったのである。インシャラー。
 しかしながら、かくのごとき激しい抵抗ゆえに(終戦時我が兵士の損失は
数百万、敵兵士は数十万であった)、世界は大いに我が帝国を誉め讃え、
侵略軍を非難し、イクラは神の栄光を目の当たりにしたのであった。
 やがてまた、再び我が帝国は力を持ち、そして必ずや悪魔共を滅ぼすため
立ち上がる日がくることであろう。
 神の栄光は常に我らと共にあることを悪魔の手先や裏切り者達は知ること
になるだろう。


「隊長、エビセン大統領のシェルターを捜索したところ、以上のような
手記がみつかったのですが」
 手記を読み上げ終った若い兵士が言った。
「やれやれ、彼の頭の中ではまったく違った戦争が進んでいたというわけか」
「国営放送の声明は我々を愚弄するものだと思って腹を立てたものだが、
彼は本気でそう思っていただけだったんだ。中尉」
「しかし、幸いなことにそれは彼一人の思い込みで、誰もそれを信じては
いなかったし、そうしたいとは思わなかった」
 中年の隊長はため息をつくと、中尉に手記をアマラカに送るよう命じた。

「私としては、早く本国に帰ってワイフや子供の顔を見たいんだが、こんな
風に平凡な望みを持っていられることがとても嬉しく思うよ」
「ええ、隊長。自分も早くリンダと食事をしたいと思っています」
 二人は笑みを交わすと、仕事を終えて一杯やる楽しみでうきうきしながら
夕暮れのパクダッドの街に消えていった。





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