#790/3137 空中分解2
★タイトル (CWJ ) 91/ 3/ 5 16:36 (110)
想いが壊れていく −7− 作 うさぎ猫
★内容
全天を覆う暗雲。
サタンの影が世界全体に広がろうとしている。
我の名はルーシファ。我の望みは世界の支配。
我は世界の王となり。我は世界の神となり。
「そんな馬鹿げた事させないわ」
あたしは暗雲に向かって叫んだ。
あたしの体は今、宙にある。
Dと同じように金色の輪が取り巻いていた。
「サタンは君の創った世界を破って、現実へ噴き出そうとしている。やつを
倒すには、君が覚醒しなければいけない」
Dの言っている意味がわからない。
湖も同じ事を言っていた。
どういう事なの。覚醒って、どういう意味なの。
創造主、蘭よ
あなたの夢により形作られた世界が、現実を腐食させようとしている
目覚めなさい
創造主、蘭よ
夢見る事をやめ、現実を見つめなさい
世界から飛び出し、現実に生きなさい
これ以上は危険
湖が語りかけてくる。
夢?
これは、すべてあたしの夢!?
でも、どうして夢見てはいけないの。
あたしは、この世界が好きなのに、どうして出ていかなくてはいけないの。
人は思春期にこの世界を訪れる
そして、やがてこの世界を離れ現実へと帰っていく
この世界はそんなところ
この世界はそんな場所
いやよ、あたしはこの世界が好きなの。
この世界から出ていきたくない。
この世界から出ていかない。
それは危険なのです
いつまでも夢の世界に留まると、現実が壊れてしまう
そんな事知らないわ。
あたしは、この世界で生きていくのよ。
あたしは湖と言い合いをしていた。でも、そのとき、暗雲となったサタンが
Dを襲ったのだ。
暗雲はDをそのなかへ取り込み、彼の細胞を砕いていく。
「やめて! Dが死んじゃう」
あたしの叫びは、Dの絶叫と共鳴する。
あたしにはなにが起こったのかわからない。
頭が混乱して、なにも考えられない。
世界が真っ赤に染まって、湖がとてもさびしい唄をうたう。
その唄は、死者の魂に捧げる鎮魂歌。
はかなく、さびしいレクイエム。
あたしは裂けてしまいたかった。
ママがそうなったように。
サタンは笑っていた。高らかな声で。
「ゆるさない。絶対にゆるさない。あたしの大事なひとを葬ったあんたを、
あたしは絶対に生かしはしない」
あたしは目覚める。
現実まであんたの好きにはさせない。
ここは、あたしの創った世界よ。
だから、あたしはあたしの責任であんたを葬るわ!
世界が色あせてくる。
世界を構成していた色が剥げ落ちていく。
落ちた色は、すべて湖にそそがれていた。
サタンは焦っていた。
世界を壊されてしまえば、自分も消える事になる。
でも、あたしはやめない。
やめてあげない。
消えなさい。
そして、あたしは現実へ戻る。
すべてを忘れて現実へ帰るわ!
この世界は人の思春期のみに現れる幻影
この世界は忘れられるために存在する
この世界は人の想い
世界はごうごうと音をたてて、パレットにいくつも落とした絵の具のように
なっていく。
色がぐしゃぐしゃに混ざり合っていく。
油絵の具のざらついた感じ。
アクリル絵の具の固い感じ。
水彩絵の具のぼやけた感じ。
いくつもいくつも混ざり合って、原型がわからなくなっていく。
崩れていく。
崩れていく。
崩れていく。
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−−−Reality−−−
透き通るような青い空。
小高い丘のうえに茂る木々。
木陰に座り、本を読んでいた少女。
本をとじ、かわりに大事そうに取り出した一通のラヴレター。
木々はそれをやさしくみつめ、小鳥たちは楽しそうにうたう。
行っておいで
そして、疲れたらまた戻っておいで
世界はいつでも、おまえの味方なのだから
−−fin−−