AWC トゥウィンズ・3 八章 (1/4) (16/15) あるてみす


        
#658/3137 空中分解2
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トゥウィンズ・3 八章 (1/4) (16/15) あるてみす
★内容
八章  対決・2

「……さっさと……。」
 何かがぼんやりと聞こえる。あたしはその声に気付いて、なんとか顔を上げた。
 体に力が入らず、顔を上げることだけで精一杯だった。
「いい加減にしろ! ほら、さっさと出るんだよ!」
 一人の兵士がイライラしたような声で言ってるのが見える。
 牢屋の鉄格子の扉が開いて、そこに三人の兵士が待っていた。もはや何の感情も
湧かなくなっていたあたしは、体の痛みを他人事のように感じながら、身動き一つ
しなかった。
「さっさと出ろ!」
 兵士達がイライラして、そのうちの一人が入ってくると、あたしを立たせて連れ
だそうとする。
 兵士に引きずられて鉄格子の扉をくぐり抜けると、二人の兵士に両脇を抱えられ
て、小突かれながら歩かされた。足が、太股が痛い……。その頃になって、ようや
く痛みが自分のものだと思えるようになった。
 辛い思いをして階段を登り、そのまま中庭に引きずり出される。
 中庭には、たくさんの人がいて、一斉にあたしの方を見て騒ぎ始めた。
 あたしの前には人垣ができていて、その先には何か枝みたいなものが山になって
いた。
 両脇の兵士に引きずられながら、人垣の間をゆっくりと進む。
 人々の間から、時々、「人非人!」とか「さっさと、くたばっちまえ!」とかの
声が上がる。
 そして、山のように木の枝が積まれたところまで来ると、一本の長い棒が目に入
った。
 あたしは横にされて、その棒の先端に手をくくり付けられた。そして、腰と足首
も棒に縛り付けられ、棒ごとかつぎ上げられて、木の枝の山の上に運ばれる。
 そこで初めて棒が立てられ、あたしは棒に吊された。
 吊されて初めて判ったんだけど、ずいぶんたくさんの人々が群がっているのね。
 しばらく時間が過ぎたあと、突然、演説のような声が聞こえてきた。
「この者は、女神の名をかたり、我らを苦しめた悪魔の化身である。その罪の大き
さゆえに、この者の身を焼き、その魂を洗い清めて天へ帰すため、これより、浄化
の儀式を行なう。」
 あたし、どうやら火あぶりか何かで処刑されるみたいね……。何の感慨もなく思
った。自分の事なのに、完全に意識がどうにかなってしまっているらしい。
「聖なる火をここへ。」
 下の方で再び大声がして、あたしの下に小さな火が運ばれてきた。
「それでは、この儀式により犯した罪が浄化され、清浄なものとなって天へ帰らん
ことを。」
 運ばれてきた火が、積まれた木の枝の上に置かれた。
 しばらくチョロチョロと燃えていた火が枝に燃え移り、だんだん大きくなってい
く。それとともに、パチパチという音も大きくなり、その熱気があたしの体にまと
わりついてきた。
 全身の打撲の跡に熱気が加わり、かなり熱くて痛かったんだけど、なぜか悲鳴を
上げる気も起きなかった。もうすぐ死ぬというのに、あたしったら変よね。
 やがて、熱気がますます強くなり、あたしの周りで渦を巻く。
 あたしの意識は熱のせいで薄れ、何も判らなくなってきた。
 全身を熱気であぶられて、ぼうっとしながらも、あたしの意識は断末魔の悲鳴を
上げ始めていた。
 熱い……。熱いよぉ。あたし、何も悪いことしてないのに……ああ、熱い……熱
いよぉ……健司……けん……じ……
 あたしは最後の意識の中で健司の名前を呼んで、そのまま気を失って……。
 ガツン!
 いきなり衝撃を感じて全身が痛み、その痛みで意識がわずかに引き戻された。力
なく目を開けてみたけど、たくさんの火の粉が吹き上がっていて、周りの様子は全
く判らない。
 ガツン!
 再び強い衝撃。
 ガツン! ガツン!
 何度か強い衝撃が加わり、全身の痛みが増していく。それに伴って、火の粉の量
が減り、あまり熱さを感じなくなっている。
 ぼんやりした意識のまま、なんとなく辺りを見回すと、燃えかけた木の枝が黒く
なって散乱していた。もはや炎もほとんどなく、熱気もなくなってきている。
 ガツン!
 また強い衝撃。気のせいか視界が傾いているような感じがする。ううん、気のせ
いなんかじゃない。明らかに後ろに傾いている。
 その傾き方がだんだん早くなっていって……あ、あ、やだ、ちょっと……。
「あ、あ……、あーっ!」
 バキバキバキ……ドン!
 背中から落ちていったあたしは棒の折れる音を聞きながら、最後に全身を叩きつ
けられて、そのショックで完全に気絶した。

 ふいに意識が戻ってきて目の前が少しづつ明るくなり、あたしは目を開けた。
 ぼんやりと天井が見える。そして、目の前に康司と一美の顔。
「気が付いたみたいね。」
 一美が微笑む。康司も安堵のため息をついて頭を振った。
「ねえ、具合いはどう?」
 そこで、あたしは一美に手を握られていたのに気付いた。そして同時に、あまり
痛みを感じないことにも気付いていた。まったく痛まないわけじゃないけど、さっ
きまでみたいに触れられただけで飛び上がる程の痛みはないし、それに心なしか体
も動かせるみたい。
 聞いたら、あたしが意識を失ってる間に康司が手足をマッサージしてくれたんだ
って。それに、お医者様が来て治療をしてくれたのだそうだ。
 意識があるときにマッサージなんかされてたら痛みで気を失ってたかもしれない。
 なにしろ、かなりひどい状態だったから今でもまだ腫れは引いてないし、手も足
も、そしておそらくは体全体も青アザだらけなんだろうけど、これでも充分治療し
た後なんだって。
「あ、変なとこは触ってねえからな。俺がマッサージしたのは手足と背中だけだか
ら。」
 康司がちょっと慌てた感じで言うと、一美がくすくす笑った。
 そして、ひとしきり笑ったあと、今までの事を話してくれた。

 あたしが元に戻って兵士達に痛めつけられたあと、康司はあたしの体をマッサー
ジしようとしてくれた。そこへ、革命軍と称する連中が、あたしを処刑するために
乱入してきて捕らえた。
 康司は一美と一緒に連中に取り押さえられて、厳重な監視下に置かれた。そして、
あたしの処刑が始まる寸前、少し監視が手薄になったところを見計らって、監視の
兵を殴って気絶させ、一美と一緒に抜け出した。
 火あぶりの刑が始まり、あたしの体の周りに火の粉がまとわりつくようになった
頃、康司と一美は人々を必死になってかき分けながら、あたしのそばまでやってき
た。そして康司は近くにいた兵から大きくて頑丈そうな剣を奪うと、全く迷うこと
なく炎の中に飛び込んで、薪になっている木の枝を蹴散らしながら、あたしが縛ら
れていた棒を切り倒した。
 二人は、倒れたショックで気絶していたあたしの縄を解いて、康司があたしを背
負い、その場から逃げ出した。その時の騒ぎで皆がパニックを起こしていたので、
康司も一美も追われることなく簡単にお城を抜け出すことができた。
 しばらく走り回った後、誰もいない一軒家を見つけて、あたしを運び込み、二人
は外の様子を警戒しながら、あたしの全身をマッサージしてくれたそうだ。
 夜になり、康司はあたしを担ぎ上げて一美と共に人目に付かないように気を付け
ながら闇の中の移動を開始した。特に行く当てはなかったが、とにかく王城へは戻
ることはできないので、できるだけ遠くへ逃れるつもりだった。
 最初、盲滅法に逃げたために判らなかったのだが、途中でプラネット公のお城の
方角に向かっていることに気付いた。もちろん、その方向へ更に進むとマース侯の
お城があることも判っていた。
 どちらもソーラ王と深いつながりがあるので、助けを求めることなど当然できな
いし、逆に危ない目に遭うことが目に見えていたので、なるべくなら避けたいとこ
ろだったが、今更、逆の方角へ向かうこともできず、なんとか見つからないように
通り抜けるしかなかった。
 あたしを担ぎながらだったので進む速度は遅かったが、それでもなんとか夜のう
ちにプラネット公のお城を通り過ぎ、明け方頃になってマース侯のお城に到達した。
 しかし、まだ早いので大丈夫だろうと思ったのが失敗だった。まだ日の出前だと
いうのに門が開いていて、ディモス率いる軍隊が出て行くところだったのだ。
 二人はディモスにあっさりと見つかり、兵士達に囲まれてお城の中に連れ込まれ、
とある部屋に案内された。そして、軍隊の出兵は急遽取りやめとなった。
 しばらくして、ディモスとセレナ姫が現われた。そして、気絶しているあたしを
厳しい目で見つめながら、二人はソーラ王の政策に反発していること、その政策の
根本原因がティアの女神であることを突き止めたこと、その処刑が寸前で失敗し、
ティアの女神の行方が判らなくなっているので、その行方を突き止めるべく革命軍
に協力するつもりでいたことなどを告げられた。
 二人は、これまでの経緯を説明した。ソーラ王を操っていた博美はあたしではな
く、また、そのときの博美も、また単に誰かに操られていただけだったということ
や、その博美を倒したのは実は康司と一美であること、そして今では追われる身に
なっているということなど。
 ディモスとセレナ姫は、すべてを理解して、今やソーラ王からも革命軍からも追
われる立場になったあたし達をかくまってくれることを約束してくれた。
 セレナ姫はさっそく、あたしのためにお医者様を連れてきてくれた。そして、お
医者様があたしの全身打撲の治療をしてくれる時に、あたしが身に付けていたドレ
スの残骸をすべて処理して、代わりに寝間着を用意してくれていた。
 その後、気絶したままのあたしが目を覚ますのを二人で心配しながら待っていた
のだった。

「それじゃ、ここはマース侯のお城ってこと?」
「そうだよ。それとね、前のマース侯はディモスの結婚と同時に引退して隠居の身
になったそうだ。今はディモスがマース侯だってさ。まだ年が若いから他の諸侯と
顔を合わせるときには前のマース侯のフォローがあるらしいけどね。だから、ディ
モスとセレナ姫が味方になってくれて本当に良かったんだぜ。下手すりゃ、俺達全
員が処刑されてたかもしれないのが、今じゃマース侯が後ろ盾になってくれてるん
だからさ。」
「ねえ、ところで、健司は?」
 途端に康司の顔が暗くなった。一美は悲しげな表情でため息をついたあと首を振
った。
「全然判らないの。ソーラ王のお城のどこかにいると思うんだけど、いくら探して
も見つけられなかったのよ。それにね、変な噂も耳にしたの。」
 一美は再びため息をついて、
「なんでもね、健司とマイア姫が結婚するっていうことらしいの。あ、でも、これ、
あくまでも噂よ。だから、本当かどうか確かめてみないといけないんだけど、でも、
火の無い所に煙は立たないっていうし……。」
 そして、困った一美の顔。
 あたしは、健司と地下牢で会って、健司に嘲られたことを話した。
 あ、やだ、思い出すと涙が出てきちゃう。
 涙ながらに話すと、一美は、ちょっと厳しい顔になって、
「それが本当なら、健司に確かめてみないといけないわね。だけど、いくらなんで
も、博美にそんなこと言うなんて、狂ってるとしか思えないわ!」
 言葉が少し強くなる。そのあと、ふっと表情を和らげると、
「でも、その前に、博美の体をちゃんと直さないとね。今度、ソーラ王のお城に行
くときは、敵の中に飛び込むようなつもりでいないといけないから、体が直ってか
らじゃないと危ないわ。」
 そして、布団の上からあたしの体をポンポンと軽く叩く。
「そんな心配そうな顔しなくても大丈夫よ。あたし達が付いててあげるから。それ
に、お城の詳しい状況はディモスとセレナ姫が掴んでる筈だから、あとで聞いとい
たげる。だから、ゆっくり休みなさい。」
 あたしは軽くうなずくと、目を閉じた。

 そして三日が過ぎた。お城からの情報も特に変化はなく、あたし達はおおむね平
和な時を過ごしていた。セレナ姫が手配してくれたお医者様のおかげで、あたしの
体の方もかなり回復し、まだアザの跡こそ残っているものの、痛みは完全になくな
って、ほとんどいつものあたしに戻っていた。
 そして、この平和に少し退屈していた時、マース侯のところに何人かの客がやっ
てきた。
 彼らはソーラ王の配下の忠実な家来で、処刑の最中に逃げたティアの女神の行方
を追っているということだった。いくら逃げ回ったとしてもティアの女神に行く当
てなどある筈はなく、いずれ、ここにも訪ねて来る可能性があるので、その時は是
非捕まえて連れてきて欲しいという依頼をディモスにしに来たのだった。
 あたし達は見つからないように隠れて、その様子を見ていたが、ディモスは、で
きる限り協力するとかなんとか言って、うまくごまかしながら彼らから捜索の状況
や範囲を聞き出し、そして、お引き取り願った。
「そんな心配そうな顔しなくても、あなた方を彼らに引き渡すつもりはありません
から、安心して下さい。」
 ソーラ王の家来が帰ってすぐ、ディモスはあたし達のところに来た。そして、あ
たし達が心配そうな顔をしているのを見て、こう言った。
 でも、あたし達が心配していたのは、ディモス達があたし達をかくまっているこ
とがバレた時にまずい立場に立たされるのではないか、ということだった。
 そのことを言うと、
「大丈夫ですよ。あなた方がここにいることを知っているのは、この城の者達と、
セレナの実家であるプラネット公のところの方達だけですから。」

−−− 続く




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