AWC トゥウィンズ・3 一章 (3/3) ( 3/25) あるてみす


        
#627/3137 空中分解2
★タイトル (VLE     )  90/ 9/15  18:38  ( 76)
トゥウィンズ・3 一章 (3/3) ( 3/25) あるてみす
★内容
「Ok。で、博美は?」
「ねえ、ほんとにいいの?」
「ああ、いいぜ。」
「じゃあ、僕もピラフ。」
「判った。健司は?」
「ああ、俺も同じでいいや。」
「じゃ、ちょっと食券を買っとくから、席を確保しといてくれ。」
 康司がそう言って、食券売り場に並ぶ。
 僕達は人混みをかき分けながら奥の方に入る。しばらく待っていたら僕達の前の
席が空いた。
 急いで四人分の席を確保する。やがて康司がやってきた。康司は食券をテーブル
に放って椅子に座る。しばらくして店の人がピラフを運んで来た。ピラフが四つテ
ーブルに並ぶ。
 そのあと、今度はサラダが四つ。それに、コーヒー二つに紅茶が二つ。
「博美も紅茶で良かったよな。」
「う、うん……。ねえ、でも、これって、結構したんじゃないの?」
 よく覚えてないけど、野菜サラダって結構高かったような気がする。それに紅茶
まで付けたりして……いくらぐらいかかったんだろう。
「いいんだよ。これくらいの余裕はあるんだからさ。それより早く食おうぜ。腹減
っちまった。」
「わあ、おいしそ。いっただっきまーす。」
 一美ったら、すっかりはしゃいでる。
「ねえ、ほんとにいいの?」
「いいんだよ。心配すんなって。」
「うん……それじゃ、いただきます。」
 お腹が空いていたこともあって、お昼はとても美味しかった。

 食事を終えて一休みして、また頂上まで登ってきて初級者コースをひたすた滑る。
 二度三度と滑り降りるうちに、慣れてきたためか、それとも少しは上達したのか、
雪の中を転げ回る回数はますます減ってきたみたい。下に降りるまでの時間も短く
なったような感じがする。
 減ったとは言っても、まだまだ転ぶことは転ぶんだけどね。でも昨日みたいに少
し滑っちゃ転ぶ、なんてことがなくなってきて、少しづつだけど長い間滑れるよう
になってきた。
 一美のキャーキャー言う声も少なくなってる。
 バックで滑る健司を先頭にして一美と僕がプルークボーゲンで続き、それを後ろ
から康司が見ていてくれて、いろいろと細かい指図や注意をしてくれる。
 そうして何度か滑っていたら、空が曇ってきた。それとともに周りの景色も霞ん
でくる。うっすらと霧が、いや、山の上だから雲かな? どっちだろう。まあいい
や、どっちでも。とにかく霧がかかってきたらしい。
「お、ちょっと曇ってきたか。」
 健司が周りを見回して言う。と、その霧はみるみるうちに濃くなってきて、あっ
という間に辺り一面が白一色になってしまった。
「うわあ。なんか、すごい霧だね。」
「まあな。だけど、山じゃ別に珍しいことでもないぜ。」
 健司ったら落ち着いちゃって、まったく言うことが憎ったらしいの。
 そんな中を滑り降りていると、霧がますます濃くなっていく。僕達の脇を通り抜
けて行く人の姿が、あっという間に霧の中に消えてしまう。
 辺り一面が乳白色におおわれて、先に行った人がすぐに消え去る。さっきは10
0mくらいで人の姿が見えなくなっていたのに、それが50mくらいになって、今
はもう30mくらいかなあ。先が見えないのって、ちょっと恐い。
「山の霧って、こんなにすごいの?」
「いや、こんなに濃いのは、ちょっと珍しいんじゃないかな。俺も初めてだ。」
 そう言ってるうちに、霧はますます濃くなった。狭い初級者用のコースのはじが
見えなくなっている。前も後ろも全く見通しが効かない。
「しばらく止まって休んだ方がよさそうだな。」
 そろそろ上級コースに合流する辺りだけど、こんな霧じゃ人とぶつかる恐れがあ
って危ないからっていうことで、ゲレンデの山側のはじに寄って一休みすることに
した。
 ほんと、これじゃ、いきなり後ろから追突されるかもしれないもんね。
 霧はますます濃くなって、健司や一美なんかとの間にも霧のつぶが浮いて流れて
いるのが見えるようになった。ちょっと不安になって健司のすぐそばに寄る。康司
と一美も同じように不安になったみたいで、やっぱり健司の脇に寄ってきた。
 腕が触れ合うところまでくっついてるのに、その健司と僕の間にも霧のつぶが見
える。康司と一美の姿が霧に霞む。すごく不安になって、僕は思わず健司の腕にし
がみついていた。
 この霧で誰も滑れなくなっているのか、辺りはすっかり静かになっている。
 微かに吹く風の音と、その風で揺れる木々の擦れ合う音が聞こえる。本当に恐い
くらい静か。
 と、なんか急にふらっときて、足元からずり落ちるような感じを受けた。
 あっと思う間もなく、足元の雪が消えて……
「わあーっ!」
 健司の腕にしがみついたまま落下して、悲鳴を上げながら意識は白い闇の中に溶
けていった……。

−−− 一章終わり




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