#626/3137 空中分解2
★タイトル (VLE ) 90/ 9/15 18:28 (197)
トゥウィンズ・3 一章 (2/3) ( 2/25) あるてみす
★内容
「大丈夫だって。」
そして、次のリフト乗り場へ。
「このリフトは昨日乗ってたやつと同じだからな。ただ、ちょっと早いから、乗る
ときは注意しろよ。」
しかし、そのリフトは三人乗りだった。こういうの、僕達にすればとっても半端
なんだよね。どうなるんだろう?
そして、僕達の番になったんだけど、並んでいるうちに健司と康司と一美の三人
が一緒に乗るようになってしまった。ちょっと混んでたから三人一緒に乗るように
係員に誘導されてしまって、健司にもどうしようもなかったみたい。僕だけ後に取
り残される。
康司が係の人に「すみません。初心者です」って言った。そしたら、リフトが少
し遅くなったみたい。機械の音が少し低くなる。
三人は並んでリフトを待ち構え、それぞれにうまく座って行った。
そのあと僕は、知らない二人と一緒に前に出てリフトを待つ。
ガツン。
「わ、わっ!」
慣れてなかった僕はタイミングが合わず、リフトを膝の後ろにぶつけて転んでし
まった。同時にリフトが急停止。
「大丈夫?」
隣にいた人が声をかけてくれる。
「ええ。」
急いで起き上がってリフトに腰を降ろす。
ベルが鳴ってリフトがゆっくりと動き出した。そして、徐々に加速していって、
再び元の速度で登って行く。
「スキーは初めて?」
急に隣の人が話しかけてきた。
「ええ。」
「いつ来たの?」
「昨日です。」
「ふーん。一人で?」
「いえ、友人に誘われて来たんです。」
「それで、お友達はどうしたの? 皆、どっかに行っちゃったのかな?」
「前に乗ってます。私の姉も一緒に乗ってますけど。」
「へえ、お姉さんも一緒に。あ、じゃあ、友達ってボーイフレンド?」
「ええ、まあ……。」
そのあと、上に着くまでずっと親し気に話しかけてくれて、全然退屈しなかった。
ちょっと時間をかけて上に到着。健司達三人はリフトを降りたところで待ってい
てくれた。
「じゃ、頑張ってね。」
「はい。」
軽く会釈をして二人と別れる。二人は僕達の脇を抜けて、あっという間に姿が消
えてしまう。
「ドジねえ、転ぶなんて。」
「しょうがないじゃん。慣れてないんだもん。」
一美だって、いつ転ぶか判んないくせに。
「ま、じきに慣れるよ。さ、次のに乗ろうぜ。」
ポン。健司に軽く肩を叩かれた。
次のリフト乗り場まで、少し距離があった。その途中には食堂が数軒並んでいて、
かなりの人で賑わっている。
それを横目で見ながら必死の思いで次のリフト乗り場へ行く。わずかに上り加減
になってるもんだから、一美も僕も悪戦苦闘してリフト乗り場に到着。
なんとかやっとたどり着くと、そのリフトは健司の言った通り、一番下のと同じ
高速四人乗りリフトだった。再び四人で並んで一緒に乗る。
このリフト、隣に普通のペアリフトがあって、同じところまで登っていってるん
だけど、早さが全然違うの。あっという間に隣のリフトを抜き去っていく。隣の三
倍くらい早いんじゃないかなあ。
「ねえ、本当に大丈夫なの? ここのゲレンデ、かなりすごいみたいだけど。」
リフトの脇にあるゲレンデ。コブがすごいし、かなり急みたい。僕よりはうまい
けど、まだ少し初心者かなあって感じの人が、プルークボーゲンで必死になって降
りようとして、コブに足を取られて何度も転んでる。
「大丈夫だよ。ちゃんと、この裏になだらかなコースがあるから。」
そう言ってるうちに上に到着。で、ここで終わりかと思ったら、まだ上にリフト
があるんだって。
リフトを降りてまっすぐ滑って行くと、次のリフトが見えてきた。
「そのリフトと、その上のリフトに乗ったら頂上に着けるからさ、もう少しだよ。」
今度は普通のペアリフト。またゆっくりと上に登っていく。
その次のリフトにも乗って、やっと頂上に到着。
「二人とも、ちょっとこっち見てみな。」
健司の言葉で、今登ってきた方を振り返ってみたら……
「うわあ……。」
山の上から見た景色の見事さに一美も僕も言葉が出なかった。眼前に広がる平野
と町並み、そして彼方にそびえる山々。さすがに雪国だけあって、それらすべてが
白一色におおわれている。
そして、平野部には、白い中に黒い筋が走っている。えっと、あれは道路かな。
うーんと小さな自動車が走ってるのが見える。あと、あれは線路だな。ふーん、
あんなふうに走ってるんだ。
くねくねと右に左に曲がりながら、はるか彼方へと延びている、数本の黒い筋。
真下に見える町並みは、きれいなミニチュアが並んでいるって感じ。
そのまままっすぐ滑ると、リフトに沿って中/上級者用のゲレンデに落ちてしま
うので、滑らないようにしながら、しばらく見入っていた。
「なあ、また登ってくりゃ見られるんだからさ、そろそろ降りないか?」
康司の声がかかった。
「うん……。」
名残惜しげに振り返りつつ、初級者コースに行くために裏の方に向かう。
初級者コースは少し回りながら降りていってるために中/上級者用のコースとは
反対側、山の裏側から始まっている。でも、結局ぐるっと回って同じところに出る
んだけどね。
健司と康司に付き添われながら、一美と二人で必死にプルークボーゲンで降りて
いく。
あんまり広くないコースなので、後ろから僕達を抜いていく人が、ぶつかりそう
なくらい近くを通っていく。そのせいで、ちょっと恐い思いもしたけど、それでも
なんとか滑って降りて行けた。
ようやく中/上級者用のコースに合流する。そこは頂上へのリフトの乗り場のと
ころだった。
「上から降りてくる人がいるから、向こう側に行くときは注意して行けよ。もっと
も、相手は避けてくれるだろうけどね。」
注意しろって言ったって、どう注意したらいいんだろう?
それでもなんとか、中/上級者用のコースを横切る。
コースの反対側にたどり着くと、そこからまたくねくねと曲がりくねったコース
が続いている。
そこをゆっくりと滑りって、リフトの下を何度か横切りながら、ペアリフトの乗
り場に出た。ここは高速四人乗りのリフトから降りてきたところだ。
「今のコースだったらいい練習になると思うから、しばらくここで滑ってようぜ。」
そしてまた、健司と一緒に再びペアリフトに乗る。
リフトのすぐ隣のゲレンデは、かなり急でコブも多い。そんなコースを体をうま
くくねらせて、ひょいひょい降りて行く人が結構いる。
「みんな、うまいね。早くあんなふうになりたいな。」
色とりどりのスキーヤー達の姿に見とれながら、ため息をつく。
「ま、今すぐってのは無理だろうな。でも、何度かスキーに来れば、あのくらい滑
れるようになるのはすぐだぜ。なにしろ、こんなにいいコーチが付いてるんだから
な。」
健司の言葉にクスッと笑って、再びゲレンデ上のスキーヤー達の方を見る。本当
に、みんなうまいんだよね。
次のリフトに乗り継いで、またゲレンデを見おろしながら頂上へと向かう。
頂上に着くとすぐ、一美と二人で、また景色を眺めた。都会では決して見ること
のできない見事な景色に、思わずため息が出てしまう。純白の化粧をした町並みが
本当に綺麗。
「ほれ、いつまでも見てないで、練習練習。」
しばらく見てたら健司に頭を小突かれた。
「もう……。」
健司って意外と無粋なんだよね。せっかくの綺麗な景色だっていうのに……。
健司にせきたてられながら初級者コースに向かい、再びプルークボーゲンで滑り
降りて行く。
何度か滑っていると、やっぱりだんだんとうまくなっていくみたいで、昨日に比
べるとかなりスムーズに滑れるようになってきてる。
そして、昨日は健司と康司に手取り足取り教わってたのが、今日はもう、二人と
一緒に滑っていける。もちろん、二人ともゆっくりと滑ってくれてるんだけどね。
それに伴って、昨日みたいに変な転び方はしなくなってきてるみたい。まだまだ
転ぶ回数は多いけど、なんでもないところで急にバランスをくずして転げ回るって
いうのが少なくなってきてるような感じ。
その上、何度か同じリフトに乗って同じコースを滑り降りてると、だんだんとコ
ツがつかめてくるらしく、滑るのが少しづつ楽になってきてる。
「はーい! 健司、康司。二人とも、ちゃんと教えてあげなさいよー!」
何度か同じコースを滑り降りて、中/上級者のコースを横切ってリフトの下をく
ぐったところで、上から急に、どこかで聞いたような声が聞こえた。
健司も康司も上を向いて軽く手を振ってる。あ、この声、お母さんだ。
見上げると、お父さんとお母さんが上のリフトに乗っているのがチラッと見えた。
途端に、
「わっ、わーっ!」
バランスを崩して転んでしまった。滑りながら上を見るなんて、まだまだ無理な
んだよね。
「おい、大丈夫かよ。」
健司が、すーっと寄ってきて、憎ったらしいくらい見事に目の前で停止すると、
起きあがるのに手を貸してくれる。
「お前なあ、リフトの下なんかで転ぶなよな。ほんと恥ずかしいヤツ。」
なんて、僕のウェアの雪を払い落としながら言うんだから、本当に憎ったらしい。
「なあ、そろそろ昼にしないか? もうそろそろ混み始める頃だろ?」
康司が、すっと寄ってきて言うと、健司は腕時計を出して見る。
「ん? もうこんな時間か。そうだな、お二人さん、そろそろ飯にしないか?」
そういえば、ちょっとお腹空いてきたかなあ。
「そうね。あたしもお腹空いてきちゃった。」
「僕もちょっとお腹空いてきたな。」
「じゃ、このまま降りるぜ。登ってくる途中に食堂が何軒かあったろ? あそこま
で行くからな。」
そして、下に向かうコースを初めて滑る。このコース、かなりなだらかだったか
ら、一美も僕も時々はキャーキャーワーワー叫びながら転げ回ったけど、それでも
だいぶ楽だった。
このコース、さっき乗ってた四人乗りリフトの脇のコースと同じところに出るん
だって。でも、なだらかさはかなり違っていて、こっちなら僕達でもなんとかなる。
そして、下の合流地点に到着。四人乗りリフト乗り場の下に食堂が何軒か。
「あそこにするか。」
手前の方の、ちょっとしゃれた感じの店に入る。
店の入口で手袋を外して、帽子とゴーグルを外そうとしたら、手がヒヤッと冷た
い。
「え? あれ?」
よくよく触ってみると髪の毛も冷たい。毛の先を見てみると、雪だった。
髪を伸ばし始めてもうじき二年。うまく形を整えながら伸ばして、ようやく肩よ
り少し下の所まで伸びた。その髪の毛が帽子からはみ出てたから、そこに雪が着い
たらしい。
なにしろ、数え切れないくらい転げ回ったもんね。
冷たい思いをしながら、なんとか雪を払い落とす。
一美も結構悲惨だった。僕より髪が長いものだから払い落とすのだけでも大変そ
う。簡単には終わりそうもないので、払い落とすのを手伝ってやった。
「お前ら、さんざん転びまくったからなあ。全身雪だらけになってるぜ。」
健司の言葉通り、毛糸の帽子も雪だらけ。これも思いきりはたいて落とす。
「わあ、あったかーい。」
中に入ると、暖房が効いていて、すごく温かい。だけど、人の数もすごい。
「ありゃ、もう混み始めたか。ま、仕方ねえな。じゃ、先に食券だけ買ってくるけ
ど、お前ら何がいい?」
聞かれて、壁に張ってあったメニューを見て、
「えーっと……えーっ! な、なんで……。」
一瞬、大声を出しかけて、慌てて口を塞ぐ。何で、こんなに高いの? なんて叫
びそうになった。
「こんな高いんじゃラーメンでいいや。一美は?」
そのラーメンだって六百円もしてるんだよね。でも、それが一番安いんだから仕
方ない。こりゃ、少し節約しないと、財政難でお財布がパニックしてしまう。
あ、そうだ、リフト代、まだお父さんに返してないんだっけ。あっ、そういえば
今まで完璧に忘れてたけど、レンタルスキー代も払わなけりゃいけないんだっけ。
それも含めて考えると……わお、マジで財政がやばい!
「あたしも、ラーメンでいいわ。」
一美も同じようなことを考えたみたいで、半分ため息まじりで言う。
「高いのなんの言ってないで好きなの頼めよ。おごってやるからさ。」
「ほんと? ラッキー! じゃね、あたし、ピラフと野菜サラダ。あと紅茶も付い
たりすると嬉しいな。」
「お、おい、一美ったら……。」
−−− 続く