#609/3137 空中分解2
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トゥウィンズ・外伝 一章 (2/2) (2/9) あるてみす
★内容
ミリーは一瞬見とれた後、自らのみすぼらしい姿に恥ずかしさを覚えて逃げ出し
たくなった。
「お待ちなさい、ミリーさん。話があります。」
その人は、走りだそうとしたミリーの腕を掴んで引き止める。
「えっ?」
ミリーは驚いた。こんな素敵な方が、あたしみたいな娘を引き止めるなんて、そ
んなこと、あるわけがない。これはきっと夢に違いない。
しかし、その男性は間違いなくミリーの顔を見つめて言った。
「私はお嬢様の言いつけに従って参った者でございます。ルミア様はしばらくお嬢
様の元を離れることができなくなります。そこで、このことを、ルミア様の御家族
にもお伝えするようにと、私が遣わされたのです。」
ミリーは、しばらく、この言葉が理解できなかった。
「あの……今、なんて……。」
「あ、まず私の名前から申し上げるべきでしたね。私はカストと申します。ランベ
ル家の使用人で、ラミアお嬢様に遣わされて参りました。」
「ランベル家ですって?」
ミリーは再び驚いた。ランベル家と言えば、この地方の名家。とてもじゃないが
ミリーごときの人間が関わりになれるはずがない。
「そうです。そして、ラミアお嬢様はルミア様でなければできないことがあるとお
っしゃるのです。おそらくルミア様はすぐにはお戻りになれないでしょう。」
ミリーはしばらく言葉がなかった。カストはしばらく待った後、
「あなたの御家族は?」
「あ……、えっと、父がいますけど……。」
「そうですか。では、あなたのお父様にも、このことをお伝えしなければなりませ
んね。」
カストはミリーと一緒に家まで行くと、ジョゼフにも事情を説明した。
「そうか。しかし、ルミアがランベル家のお嬢様の目に留まるとは、これも何かの
因果かのう。」
ジョゼフはわずかに首を振りながら、小声でつぶやく。そして、カストの方に向
き直ると、
「カストさんとか言われましたな。どうか、ルミアのこと、よろしく頼みますぞ。」
「はい。」
そして、カストは黙って頭を下げた。
その後、カストは時々ジョゼフの家に行くようになった。表だった理由はルミア
の近況を伝えることである。
しかし、カストにはもう一つの理由があった。最初のうちはルミアの近況を伝え
るだけだったものの、何度かジョゼフを訪ねるうちに、ミリーのことが気になるよ
うになってしまったのである。
くるくると忙しそうに動き回りながら、些細なことで大はしゃぎをするミリー。
ランベル家の屋敷には、若い女性の召使いも多く、皆、それぞれに働き者だった
が、まるで判を押したように、一様におとなしかったので、ミリーのような明るい
娘に会ったのは、カストには初めてのことだったのである。
カストは、ジョゼフの家に行くたびにミリーの手伝いもするようになり、やがて、
ミリーの元を訪れる回数も増えていった。
その間にもジョゼフの具合いはぐんぐんと良くなっていき、元々の頑丈さも手伝
って、すぐに動けるようになった。
ジョゼフが元通りに動けるようになると、ミリーは畑仕事をする必要もなくなり、
家の中の仕事を集中して行なうことができるようになった。
カストも仕事の合間を抜ってミリーの元を訪れるようになり、家の中で二人きり
になることも珍しくなかった。しかし、さすがに貴族の屋敷に雇われているだけあ
って、カストは常にきちんとしていて、ミリーに対する態度を変えることもなかっ
た。
そんなカストの紳士的な態度に、ミリーはさらに好感を持つようになっていた。
−−− 一章終わり