#578/3137 空中分解2
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宮田氏の死の理由 男爵
★内容
山田はこの突然の申し込みに驚いた様子だった。増田も驚き、中崎に問い正そ
うと口を開けたが、言葉になる前に中崎は手のひらをむけやめる様にと促した。
「勿論あなたには絶対ご迷惑は掛けない。」
「しかし・・・。」
「大丈夫ですよ。絶対にあなたの罪にはならないし、このことは誰にも話さない。
私の能力を知ってるでしょう?私にかかれば完全犯罪なんて赤子の手をひねるよ
うな物ですよ」
「そう言われても・・・。」
「最初に言ったように依頼人の秘密は厳守します。それに宮田がいなけなれば部
長の地位はあなたの物だし、それ以上の出世が望めるのでしょう。」
山田には最後の”出世”に動かされたようだった。山田は決意したように中崎を
見つめた。
「わ、わかりました。絶対に大丈夫でしょうな。」
「勿論です。」
「では報酬の方は・・・。」
「まず、今回の調査費8万円をいただきます。それと50万円いただきます。」
「5、50万円!?そんなに取るんですか?」
「何を言ってるんですか。殺し屋を雇うよりはるかに安いですよ。」
「しかし、そんな大金ありませんよ。」
「嘘を言わないで下さい。あなたのような方なら50万位貯金してるでしょう?」
「わかりました。銀行からおろしてきます。」
そう言うと席を立ち、ドアの方へ駆けていった。
「おい、大丈夫なのか?あんな事頼まれちまって。」
増田は机の上に置かれた銀行の紙袋を覗きこみながら言った。その紙袋には50
万円が束になって鎮座していた。増田は覗いていた目を少し離し、手を袋に突っ
込ませようとした。しかし、中崎の素早い一撃によってそれははまばれた。増田
は叩かれた手をさすりながら
「どういうつもりだ?」
と言った。
「指紋をつけるな!証拠が残る。」
増田がきょとんとしているのを横目に席をたった。中崎はパソコンのある机にむ
かうと、パソコンを起動させた。そして打ち込み始めたがすぐにそれは終わり、
打ち込んだ文字をプリントアウトさせた。紙をプリンターから取り出すと、机か
ら封筒と白い手袋を取り出した。まず、手袋をはめ、封筒に紙を入れた。そして
紙袋を取り寄せて、札束を取り出し、これまた封筒に入れた。
「なにするつもりだ?」
と増田が尋ねるた。すると中崎はにやりと笑い、
「明日の朝刊がでたら話すよ。じゃ、出掛けるから留守番頼むぞ。」
と言って、部屋を出た。
翌朝、増田は事務所に出勤してみると、中崎が椅子に座って朝刊を読んでいた。
いつもは増田が先なので、増田はいささか驚いて、
「はやいな。」
と言った。中崎は朝刊にうずめていた顔をあげ、言った。
「今日の朝刊見たか?」
「いいや。」
中崎は呆れ顔で手に持っていた朝刊を増田に放り投げた。
「成功したぜ。記事は3面に載ってる。」
「なに!?」
増田は受け取った新聞の3面をひらき、食い入るように見た。その記事は3面の
片隅にあり、増田は捜し当てるのに苦労した。記事は以下のようなことが載って
いるだけだった。
”社長令嬢、夫を刺殺。
○月×日午前零時未明、宮田麗子(旧姓、南)28才が宮田一郎(30)、
吉田朝美(25)を殺害した容疑で目黒警察に逮捕された。事件は目黒区に
あるマンションで起こった。マンションの住人が被害者の悲鳴を聞き、警察
に連絡、南は吉田をめった刺しにしていた所を現行犯逮捕された。目黒警察
では嫉妬と覚醒剤から の犯行としている。容疑者の南は大手玩具メー
カー社長の令嬢で3年前、宮田一郎と結婚したばかりだった。”
増田は朝刊から顔をあげると驚きの目で中崎を見つめた。中崎は自慢げに顎をさ
すっていた。
「どんなもんだ。」
「おまえが殺ったのか?」
「おまえらしからぬ言葉だな。新聞に書いてある通り、宮田麗子が殺ったのさ。ち
ゃんと現行犯逮捕と書いてあるだろう?」
「しかし・・・。おまえ何をしたんだ?」
「ふふん。ただ昨日の手紙を出しただけさ。」
「それだけか?」
「ああ。」
「しかし何故手紙を出しただけで殺人が起きるんだ?」
「よし、よし、今から詳しく話してやろう。」
そう言うと、こほんと咳払いをした。そして両手の指を軽く突き合せ話し始めた。
「実は俺の分の宮田の調査は一日で終わってしまったんだよ。」
「なに!?俺の分は六日もかかったぞ。おまえだけ楽しやがって!」
「仕事の量としては俺の方が多かったぞ。まあ、要は要領だ。そんな話しは後です
るとして、まずは宮田の話だ。調査が一日で終わって、暇だったから宮田のプライ
ベートの事も調査したんだ。」
「暇だったら俺のをやってくれよ。」
「そう噛付くな。そしたら宮田には愛人がいることが分かった。」
「それが吉田朝美か。」
「そうだ。それにしても宮田という奴はあくどい男だ。麗子のおかげで今の地位と
金があるのに、それを他の女に注ぎ込んでいるんだからな。」
「それじゃ、麗子もさぞかし怒り狂ったろうな。」
「そう言葉通り、怒り狂ってたぜ。麗子はお嬢さんの典型に洩れず、プライドが高
く、わがままで、必ず欲しい物は手に入れるような女だった。だから宮田を吉田か
ら汐"タ返すために、金に物をいわせて様々なことをやったが、効果は無かった。そ
れどころか宮田は麗子に愛想を尽かし別れ話を切り出した。麗子という女は意志は
強かったが、傷つくことに慣れていなかった。そのため、麗子の精神はぼろぼろに
なり、ついには覚醒剤にまで手を出すようになった。」
「ちょっと待ってくれ。宮田が麗子と別れるということは今の地位を捨てる事にな
るじゃないか。なぜ、宮田のような男が地位を捨ててまで麗子と別れようとするん
だ?それともう一つ、なぜおまえは麗子がヤク中って知ったんだ?」
「ふん、まず最初の質問だが、宮田は山田氏の提案した新商品をライバル社に渡し、
見返りとしてそのライバル社での地位を約束させた。だから、麗子みたいなわがま
まな女に我慢しなくてもよくなった。それと次の質問だが、宮田の調査のため宮田
の家を家捜しをした。勿論、無断でな。そしたら、麗子の部屋からこんなものがで
てきたよ。」
−−−−−(4)へ続く−−−−−