#577/3137 空中分解2
★タイトル (LCH ) 90/ 8/30 16: 9 ( 87)
宮田氏の死の理由(2) 男爵
★内容
「何故判ったんですか?もしや既に誰かに私のことを調べさせられたんですか?!」
「はっはっはっはっ。誰も私にあなたを調べるように依頼してませんよ。」
「では、何故私に妻と娘が居ることや、子供の年齢や、裏切りのことを知ったの
ですか?」
「簡単なことですよ。まず、あなたは不精な人だ。それは今日の強風で乱れた髪
をを直してないことと、そのワイシャツについている染みでわかります。その染
みはおそらく今日の昼食でつけた染みでしょうがあなたは全然気にする様子もな
い。髪の乱れもそうです。なのにあなたのワイシャツやズボンはきれいにアイロ
ンが掛けられている。しかもワイシャツの襟にはノリまでつけてある。これで不
精なあなたには気が利く奥方が居られるとしか考えられない。それとあなたの指
にはめられているその指輪は結婚指輪でしょう?あなたのような中年男性が恥ず
かしくも無く、結婚指輪をはめているってことは奥方を愛していらしゃるからだ。
勿論そんなにあなたが愛しているんだから奥方の方でも愛していない分けが無い。
それとあなたのそのネクタイですが、中年男性が締めるのにはいささか派手過ぎ
る。多分それは若い女性からプレゼントされた物でしょう。最初に愛人からかと
思いましたが指輪を見てその仮説は成り立たなくなる。では、誰か。部下のOL
か?これも違う。最近のOLはあなたのような不精な上司にプレゼントする物好
きはいない。ここまで来れば答えは簡単ですよ。娘さんしか居ません。それと子
供さんの年ですがこれはしごく簡単なことです。おそらくあなたは40代前半だ
と私は睨みました。それとあなたは気弱そうで、その・・・いい男では無い・・・。
そんなあなたは20代後半から30代前半までに結婚した筈です。ですから二十
歳未満でなければ結婚前に産んだ子供でないと計算が合わない。真面目そうなあ
なたではそれはないでしょうがね。後は依頼の内容ですが先にも消去法でやりま
したね。では、何故個人的な依頼と判ったかです。あなたは最初に”秘密は守っ
トいただけますか”とおっしゃった。会社関係なら会社の機密でそう言いますよ。
しかし会社の失態ならなら会社独自で調査する筈。あなたがここに依頼しに来た
のだからあなたがへまをやらかしたか、誰かに裏切られて危機に陥ったかです。」
中崎は両手の指を軽く突き合せ、驚愕している山田を見つめていた。そして山
田は苦労の末にやっと口を開いた。
「す、素晴らしい。まるでシャーロック・ホームズみたいだ!!あなたなら安心
して依頼出来ますよ!」
「失敬な!私はホームズ以上ですよ。さあ、そんなことより依頼の方を。」
「そ、そうですね・・・。あの・・・、先程も申し上げた通り私は裏切られ、危
機に陥りそうなんです。私はA玩具会社の企画部の課長をやっています。そして、
そこの部長が今度我が社で売り出す新商品をライバル会社に売渡そうとしている
んです。しかも、それを私がやったことにするらしいのです。」
「ちょっと、待って下さい。何故あなたは部長のその裏切りとあなたに罪をなす
り付けようとするのが判ったんです?」
「それは・・・、正直なことを申しますとまだ私の推測に過ぎません。でも、根
拠はあります。昨日、帰宅する時宮田と・・部長の名前ですが・・・ライバル会
社の部長が料亭から出てくるのを見たんです。」
「ほう・・・。ではあなたに罪をなすり付けようとする根拠は?」
「実は私と宮田は普段から折り合いが悪く、事ある毎に対立していました。そし
て今度の新商品は私の提案でした。いつもなら宮田は私の企画と言うだけで猛反
対するのですが・・・。」
「今回だけは反対しなかった、と。」
「はい。その通りです。その上賛成までしました。蛇のようにしつこい宮田がで
す。」
「なるほど。その二つの点から見ればそのような考えを持つのは当然でしょう。
それで、そのことが事実かどうか調査してくれというわけですね。」
「その通りです。念を押して言いますが絶対秘密は守ってくれますね?」
「勿論です。ところで一つ聞かせていただけますか?あなたと宮田の仲が悪い理
由を。」
「いいでしょう。宮田は30で部長職につきました。その理由は宮田が社長のお
嬢さんをたぶらかして結婚したからです。私は奴に劣らない・・・いや!奴より
優れた能力を持っているのにただ社長の義理の息子だというだけで、無能な若僧
が私の上にいるのが許せなかった!そこで、私は宮田を部長として扱わなかった。
時には奴に恥をかかせたこともありました。それを宮田は根に持って私と対立す
るようになったのです。」
「なるほど、つまりはあなたの嫉妬から始まったというわけですね。」
「・・・・お恥ずかしい話ですが・・・。」
「わかりました。引き受けましょう。」
「そ、そうですか!では来週までに調査しておいて下さい。さ来週に会議があり
ますからそこで発表することにします。」
「よろしいですよ。では来週の同じ時間にいらしてください。」
山田は緊張で硬くなった顔を中崎に向けて言った。
「で、結果は?」
「あなたの言う通りでしたよ。」
というと中崎は書類をテーブルに置き、山田の方へ差し出した。すると山田は突
然両手をテーブルに叩きつけ、
uちくしょう!!やっぱりか!!宮田の野郎め!!」
と叫んだ。山田の顔は真っ赤になり、奥歯を噛み締めていた。気弱そうな中年サ
ラリーマンがこれほどに怒る姿に増田は目を丸くした。中崎は顔はピクリとも動
かさなかったが、内心は驚いているようだった。
「山田さん。これを会議に提出すればあなたが濡衣を着せられることはない。」
と中崎は山田の肩に手を置いていった。そして書類の一番上にあるテープをもう
一方の手に持ち、
「それに、宮田が取り引き相手との会談を撮ったテープもあります。」
「しかし、しかし・・・・。」
山田は激しい怒りのあまり泣いているようだった。
「このままでは気が済まないと?」
「そ、そうです。奴を殺してやりたいくらいだ!!」
「では、殺して差し上げましょう。」
−−−(3)へ続く−−−