#570/3137 空中分解2
★タイトル (NFJ ) 90/ 8/24 22:32 (106)
赤き不滅の星の民(7) KY
★内容
赤き不滅の星の民(7)
並木きょうすけ
火山の頂上から麓にかけて赤い溶岩が流れだしている。
「どうしたのかしら」
私は恐る恐るケンタローに聞いてみた。
「ハイパースペースへ入ったようです」
「このモニタに映っている火山は」
「これはテラじゃないかしら」
ヨーコが口をだした。
モニタの画面が右へパンしていく。
そこには二人の少女が銀色の宇宙服を着て立っていた。ヘルメットはつけてい
ない。まだ幼さの残る顔立ちである。二人ともよく似ている。姉妹であろうか。
「メタウとプタウよ、きっと」
ヨーコの感は鋭い。そうに違いなかった。
さらに画面は右へパンしていく。
「森の人よ」
今度は私が叫んだ。
マントを着た森の人がひとりこちらを見ている。頭には羽飾りが三本さしてあ
り、左のほほには大きな傷跡がくっきりと見える。精悍な顔つきの中に憂いの色
が濃い。
彼の後方には集落があった。かなり大きな集落で、たくさんのテントがあり大
勢の森の人が立ち働いている。
画面がふたりの姉妹に戻り、右側の少女がしゃべりだした。
「ケンタロー、なんて言っているのよ」
「森の人の言葉のようです」
「通訳してよ」
三人のなかで私だけが彼らの言葉がわからない。ケンタローに頼むしかないの
だ。
「私はメタウ、この子はプタウ」
ケンタローが同時通訳してくれた。
「私たちは神の星に住んでいました。しかし、家族が熱き病でみんな死んでし
まったので、伯父たちのいる赤き不滅の星へ神の空の道を通って行こうとしまし
た。けれども、神に仇なす竜に襲われてこの青き星へ落ちました」
私はヨーコに尋ねた。
「青き星ってテラのことね」
「そうね。神の空の道ってハイパースペースのことよ」
ケンタローは例の無感動な声で同時通訳を続けた。
「そして私たちは森の人に助けられました。ほんとうに親切にしていただいて
感謝しています。おかげで助かりました」
今度は左側の少女が喋りだした。
「私たちの急を聞きつけて赤き不滅の星から伯父たちが助けに来てくれました」
少女の表情は固い。何かを思い詰めているようだ。
「私たちは森の人に何かお返しをしようと思い、チャラクードに相談しました」
さきに画面にでた森の人の名前だろう。
「彼は火山が噴火してここでは暮らしていけない。自分たちも連れて行ってくれ、
と言いました。ほんとうはこの星のなかで住みやすい場所を捜してあげるべきなの
でしょうが時間がありません。私たちは彼らを赤き不滅の星へ連れて行くことにし
ました」
少女はメタウの方を見た。悲しそうな目をしている。
「けれども私たちの文明はもうすぐ滅びてしまいます。神アムハールをあまりに
も軽んじすぎたのです。気がついたときには親も友人たちもみんな死んでいました。
私たちもいずれ同じ運命をたどることでしょう」
メタウは言葉をきった。遠くで火山の爆発の音が聞こえる。
「そうなんです。あなたたちはこの青き星に生まれ育った種族なのです。私たち
のように滅びゆく者ではなく、これから大きく羽ばたく種族なのです。ですから、
この大変動が収まりこの星が住みやすくなったら、いずれ戻ってこなくてはなりま
せん」
画面はいったん消えて、今度はメタウの顔のクローズアップになった。背景は白
一色だ。
「この船は青き星へ行って、その様子を見て来るために作りました。もし戻って
もいいようなら赤き不滅の星へ戻ってから、そこの黄色の棒をひっぱりなさい。そ
うすれば赤き不滅の星にたくさん立っている私たちの姿をした像の入口が開きます。
それに乗って青き星へ帰りなさい」
メタウはテラの現状を画面に次々に表示してから、この宇宙船と彼女らふたりの
姿をした宇宙船の操縦方法について詳しく話した。
私たちの大冒険はマスコミには秘密になっているらしく宇宙港の警備担当者以外
に迎えに来てくれたのはトシオさんだけだった。
「ヨーコ、大丈夫かい」
「ええ、お兄さんこそ...」
ヨーコはそれだけ言うとトシオさんの胸に飛び込んだ。トシオさんはヨーコの耳
元で何かささやいている。
「ほんとうにどうなることかと思いましたわ。トシオさんもご無事でなによりで
した」
私の存在が無視されそうなのであわてて口をはさむ。
「君も無事で良かった」
トシオさんはそう言ってくれただけで、ヨーコの肩をやさしく抱いて宇宙港の保
安施設の方へ歩き去っていった。
ちょっと待ってよ。思わず口に出しそうになってぐっとこらえた。何のために私
はこんな大冒険をしたのよ。トシオさんが行方不明だって言うからヨーコにつきあ
ったのに。私の気持ちなんてまったく通じてないじゃない。
「すいません銀河テレニュース社の者ですが。テラから来られたんでしょう。船
長に面会したいのですが」
あまりぱっとしない身なりの青年がやってきて私にずけずけ聞いた。
「私が船長よ。そして、これがナビゲータのケンタロー」
私は煤けたままのケンタローを指さしてやる。
「まさか。ところで船内で事故でもあったのですか。せっかくの美人が真っ黒で
すよ」
「これはテラの最新式のファッションよ。あなたセンスが悪いわね」
「これは失礼しました。ところでレッドクラウにはお仕事ですか」
青年は懐疑的な顔をして聞いてきた。
「ええ宇宙考古学の研究のためにね」
「宇宙考古学ってどんな学問なんですか」
「たとえば赤き不滅の民を襲った疫病の正体とか神に仇なす竜による被害の記録
とかを調べる学問ね」
私はけげんな顔をしている記者をあとに警備担当者に付き添われてターミナルビ
ルの方へ歩いていった。煤だらけのドラム缶をつれて。
(終わり)
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赤き不滅の星の民(7)
並木きょうすけ