AWC 赤き不滅の星の民(6)     KY


        
#569/3137 空中分解2
★タイトル (NFJ     )  90/ 8/24  22:20  (101)
赤き不滅の星の民(6)     KY
★内容
赤き不滅の星の民(6)
                        並木きょうすけ


 これで2回目だ。何が2回目なのか思い出せない。奇妙な感覚。天国のお花
畑。天国ってこんなに痛いところなのかしら。痛い?
 頭がまわる。目をあけたくない。どうせ目をあけたってろくなことはないん
だから。
 「アキナ、大丈夫。ねえ、しっかりして。アキナ、ねえ、何とか言って」
 うるさいな。ヨーコってどうしてこんなにがさつなんだろう。まだ天国には
着いていないんでしょう。でも、どうして天国へ行かなきゃならないんだろう。
 「アキナったら、死んじゃいや」
 「おあいにく様でした」
 しかたなく私は目をあけた。あれ、ベッドじゃない。
 「ねえ、どこか打ちどころが悪かったんじゃない?」
 「うーん、そうみたい。これは例の宇宙船ね」
 「そうよ、私たちは助かったみたい」
 ようやく状況が飲み込めてきた。
 きっと核ミサイルがぶつかってきたのに違いない。それにしても異星人の宇
宙船ってタフなやつ。
 「核ミサイルが近づいてきたときに、このミサイルからレーザー砲が発射さ
れて核ミサイルを撃破したようです」
 ケンタローが相変わらず煤けたままで抑揚のないしゃべりかたをする。
 なるほどね。異星人もやるじゃない。
 「それでテラへのコースからはずれたわけね」
 「残念ながら、コースはそのままのようです」
 「何ですって?」

 「成るようにしかならないわね」
 私はできるだけ明るい声でヨーコに言った。
 「ここで決着をつけるしかないんじゃない?」
 「決着をつけるって...」
 ヨーコは何を考えているのだろう。核ミサイルもものともしない宇宙船なん
だから、他にどんな手があるっていうの。
 「このボタンを見てよ」
 ヨーコが指差したのは透明な四角いカバーで囲われた赤い大きなボタンだっ
た。よく宇宙物のビデオで非常脱出装置とか自爆装置とかのボタンとして登場
するいかめしいボタン。
 ちょっと待ってよ。
 「このボタンを押してみようと思うの」
 「あのねヨーコ。そもそもあなたが勝手にそこのボタンを押したから、この
宇宙船が発射されてしまったんじゃない。そのボタンだって何のボタンかわか
ったものじゃないわ。まるで自爆装置のボタンみたいじゃないの」
 しばしの沈黙。
 「お願いします」
 唐突に無線機から声がした。先ほどからコンタクトしているテラの太陽系統
合宇宙軍司令部の当直参謀のコワリニコフ小佐だ。
 「われわれを助けると思ってそのボタンを押してください。わらわれはもう
お手上げなんです。あなたがたが乗っている宇宙船にはどんな秘密が隠されて
いるか全く見当もつきません。あなたがたの行動がテラを救うかもしれないの
です」
 じゃ、私たちはどうなってもいいというの。身勝手なんだから。そもそも、
この宇宙船のことだから自爆するついでにテラも吹き飛ばすってこともありう
るじゃない。
 「お嬢様!」
 「ヨーコ!」
 私が止める間もなくヨーコはその赤いボタンを押してしまった。
 低い唸り声のような音がしている。
 ついに十八の乙女は神に召されてしまうのか。
 突然、部屋の中が薄暗くなった。同時に上から何か液体がふってきた。白くっ
てふわふわしていて妙にべとつく感じ。あたり一面、真っ白になってしまった。
 「何よ、これ。泡みたいじゃない?」
 「ひょっとして消火剤とか」
 あーあー、もう私の服は無茶苦茶よ。ランドクルーザーが転倒して火が出た
ので煤だらけになるし、洞窟の中を逃げ回って泥だらけになるし。最後に上から
消火剤をかけられるなんて。
 モニタにはわが母なる星テラがきれいな青い球体として映し出されていた。

 ヨーコは気が狂ったようにコンソール上のスイッチを押しまくっているが、宇
宙船の方は何事もないかのようにまっすぐにテラへ向かっている。
 あと1分。
 これが私の肉体に残された時間。
 その時、私たちはテラに激突するんだわ。
 いつか減速するのではという淡い希望もどうやらかなえられそうもない。
 テラはモニタの中でますます大きくなっていく。
 でもこの宇宙船はなんのためにテラに向かっているのだろう。森の人は異星人
によってテラからレッドクラウへ連れてこられた。そして異星人はどこかへ消え
てしまって森の人だけがレッドクラウに残された。もうテラには何の用もないは
ずだわ。いや違う。これは森の人をテラへ返すためのものなのだ。ちょっと小さ
いような気もするが、この際いいことにしておこう。森の人は文字も知らないく
らいだから宇宙船なんか操縦できっこない。だったら全自動で森の人はただ乗っ
ていればいいようにしてあるはずだ。小惑星といい核ミサイルといい、みんな勝
手に処理してくれたじゃない。でも、それならどうして減速しないの。何かがお
かしいのよ。でも何が?
 「わかった!」
 思わず声に出してしまって恥ずかしい。
 「ケンタロー、森の人の言葉で止まれと言ってみて。何をしてるのよ。早く!
なんでもいいから、さあ早く!」
 「.......」
 ケンタローが言い終わると宇宙船のエンジン音が消えて中央以外のモニタはす
べてブラックアウトした。
 中央のモニタからは星空が消え、黒い噴煙を吐き出している火山が映し出され
ていた。

                               (続く)
aロkミツァL。Kケルヤノキn゙8

赤き不滅の星の民(6)
                        並木きょうすけ






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