AWC 赤き不滅の星の民(5)     KY


        
#568/3137 空中分解2
★タイトル (NFJ     )  90/ 8/24  22:10  (131)
赤き不滅の星の民(5)     KY
★内容
赤き不滅の星の民(5)
                        並木きょうすけ


 どのくらい時間がたっただろうか。私たちの乗った宇宙船はハイパースペー
スから通常空間へ戻った。モニタには無数の星が映し出されている。
 「この星、どこかで見たことないかな」
 ヨーコがモニタの前で小首をかしげている。
 そのモニタにはひとつの星がクローズアップされていた。それは瓜でひっか
いたような跡がある暗くて硬い感じの星でクレータもあるようだ。レッドクラ
ウの衛星チャドワナに似ている。
 「これはミランダです」
 例によって無感動なケンタローの声。
 「ミランダって?」
 私が聞き返す。
 「太陽系第7惑星である天王星の衛星です」
 太陽系ですって。祖父母たちの生まれた太陽系へ私たちはやって来たのだ。
 「太陽系なら人類がいるはずでしょう。無線で呼びかけてみなさいよ」
 ヨーコがすばやくケンタローに指示した。さすがにヨーコは実際家である。
私のように感動に浸ってはいない。
 無線はすぐに通じた。
 はじめのうちはミランダ中央宇宙港の管制官は私たちの言うことを全く信じ
ていないようだったが、私たちの宇宙船の軌跡を割りだしてみて信じる気にな
ったようだ。私たちが通ってきたのは人類には未知のハイパースペースだった
らしい。
 私たちの宇宙船はまっすぐにテラを目指していると彼らは教えてくれた。
 「でも何のためにこの宇宙船はレッドクラウからテラへ行くのかしら」
 ヨーコの疑問はもっともだった。
 この宇宙船はシュルハの洞窟の中にあった。その洞窟の中には森の人の神で
あるアムハールの代理人、メタウとプタウの姉妹が住んでいると言い伝えられ
ていた。そして私たちはその洞窟の中で森の人がテラから連れてこられるとこ
ろを描いた壁画を見つけた。
 「メタウとプタウというのが異星人のことなのよ。そして彼らがあの立像も
この宇宙船も作ってテラからレッドクラウへ森の人を運んだというわけ」
 ヨーコは自分の髪をなでながら納得がいかないという顔で私に言った。
 「それじゃ私の質問の答えにはなってないじゃない。ミランダ中央宇宙港の
管制官の話では、この宇宙船はたったの三十メートルしかないのよ。たくさん
の人が乗れるとは思わないわ」
 「じゃあ、この宇宙船は指令船なのよ。人を運ぶためのもっと大きな宇宙船
があったのだけど、この宇宙船だけレッドクラウに残していったのよ」
 「でもね、作ってしまった異星人たちはどこへ行ってしまったのかしら。そ
れもこの宇宙船だけを残して」
 私はヨーコと議論をはじめるとどうも向きになるようだ。未来の義理の妹と
心の底で張り合っているのかもしれない。
 「仕事が終ったから帰っていったのよ」
 「でも、どうしてそんなことをしたのかしら」
 「さあ、それは...」
 私は何か心にひっかかるものを感じながらモニタに映っているミランダに目
を移した。

 私たちの宇宙船は小惑星帯を通過しているようだ。各宇宙ステーションや惑
星や衛星上の宇宙港とはときどき無線が通じるが、こちらが速すぎて救難援助
隊の宇宙艇でも追いつかないらしい。いったいこの船はどこへ行くのかしら。
 モニタには種々の大きさの星が映し出されている。なかには球形ではなくて
一部が欠けた形をした星もある。きっと隕石でも衝突してその衝撃で欠けてし
まったのだろう。
 「ねえアキナ。この星、だんだん大きくなっていくみたい」
 「そりゃ宇宙船が近づいているからでしょう」
 「でも真正面よ」
 ヨーコは私の顔と真ん中のモニタとを見くらべている。
 確かに真正面だ。
 しばらくすると中央のモニタはその星に占領されてしまった。
 「このままじゃ正面衝突よ」と私。
 「まさか」
 「でも小惑星のことまで考えてこの宇宙船はプログラムされているのかしら」
 「それもそうね」
 そのとき軽い振動が船体を揺すった。
 すべてのモニタが真っ白になっている。
 「どうしたのかしら」
 「見てよアキナ」
 ヨーコの声に促されてモニタを見たが、そこには何もなかった。ただ星々が映
し出されているだけだった。
 「小惑星が消えたわ」

 とりあえず無事に火星の公転軌道を越えることができた。相変わらず私たちの
乗った宇宙船はまっすぐにテラを目指している。
 太陽系統合宇宙軍本部は事態を重視していた。なんといっても異星人が作った
宇宙船だ。テラにつっこんだらどんな悪影響を及ぼすかもわからない。そこで船
体外郭に補助ロケットを取り付けて軌道を変更しようとしたのだ。しかし、作業
船が近づけない。こちらの速度が速すぎるし、高速艇で近づいてもすぐに加速し
て振り切ってしまう。
 「おふたりともよく聞いてください」
 先ほどからコンタクトしている太陽系統合宇宙軍のスズキ大尉だ。
 「このままではあなたがたの宇宙船はテラに激突します。それではあなたがた
だけでなくテラに住むわれわれの仲間にも大きな被害を及ぼしかねません。そこ
で少し手荒なことをすることになりました」
 「手荒なことって?」
 「あなたがたの宇宙船に向けて核ミサイルを発射します」
 「ちょっと、冗談じゃないわよ。それじゃ私たちは死んじゃうじゃない。それ
にこの宇宙船は異星人の残した貴重な遺産でしょう? 大事に保存して詳しく調
査しなければいけないんじゃない?」
 「確かにそうなんですが、時間がありません。あと30分でテラに激突します。
いえ、大丈夫ですよ。レッドクラウからの報告ではそちらの宇宙船の外郭は特殊
な物質でできていて、熱や衝撃にはびくともしないそうですよ」
 「うそ、それはメタウとプタウの像のことでこの宇宙船のことじゃないでしょ
う?」
 「いえ、こちらの調査結果でもやはり同じ物質という結論になりましたが」
 本当かしら。高速艇でも近づけないくらいの高速で航行しているのに、いつの
まにそんな調査とやらをしたのかしら。みんな得体の知れないこの宇宙船をこわ
がっているんだわ。それでテラへ近づく前に抹殺しようとしている!
 「外郭は大丈夫でも中にいる私たちにはすごい衝撃でしょう。そんなの無茶よ。
テラにいる人たちに利己主義じゃない」
 「もう時間がありません。できるだけ衝撃をやわらげるためにショックアブソ
ーバーの中に入って待機姿勢をとってください。核ミサイルは3分後にあなたが
たの宇宙船の5時の方向から水平にやってきます。では、よいGを」
 「ちょっと、待ってよ。見殺しにしないで!」
 私はありったけの声で叫んだ。
 「アキナ、もうやめましょう」
 「そんな。だいたいどこにショックアブソーバなんかあるのよ」
 「私のためにごめんね。しかたないのよ。このままテラに突っ込んでさっきの
小惑星みたいにテラを消してしまうわけにはいかないでしょう? 彼もわかって
いて言ってるんだと思うわ。私たちが犠牲になってテラの人たちを救わなければ
いけないのよ。私のドジだから私はどうなってもいいけど、アキナ、ごめんね。
さあ、ここに腰掛けて。二人で祈りましょう。天国でもまた会えますようにって」
 いやよ。誰があんたなんかと天国へ行くもんですか。わたしはトシオさんが来
るまで天国の入口で待ってるんだから。
 トシオさん。
 私は心の中でそう言ってから目を閉じた。

 大きな衝撃。
 ものすごい閃光。
 私は椅子ごと壁にたたきつけられて気を失った。
                             (続く)

チノーn#ーqGヨヒコs'9

赤き不滅の星の民(5)
                        並木きょうすけ







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