AWC 六面体の蛇 最終回     永山


        
#478/3137 空中分解2
★タイトル (AZA     )  90/ 6/11  20:34  (142)
六面体の蛇 最終回     永山
★内容
 「地図?」
私と地天馬が、同時に聞き返した。
 「ええ、所沢の家のトイレに、お宝、じゃなくて、奪われた金のありかを示
すと思われる地図が、隠されていたのです。あっと、トイレと言っても、むき
出しのまま隠していたんじゃあ、すぐに見つけています。今になって見つかっ
たのは、それがビニール袋に入れられ、トイレのタンクの中に放り込まれてい
たからなんです。」
花畑刑事は、誇るように説明をしている。地天馬は面白くなさそうだ。
 「で、その地図の地点に行ってみようと、下田警部から・・・。」
こうしている間も、地天馬は思考を再開したようだ。
 「で、お二人も、来て見ませんか。」
刑事の言葉に、私が答える。
 「そいつはいい。地天馬は、この事件の結末を、ぜひ、見たいと思っていた
んですよ。」
 「それはいいんだけどね。ずっと疑問に思っていた事なんだが、どうして犯
人はそこへ行かなかったんだ?もう、その場所を知っていると考えるのが、自
然じゃないのかな。いや、もう行ってしまった後かもしれないぜ。」
 「いえ、早速に駆けつけた警官の報告では、最近、掘り返した跡はないよう
です。」
 「どちらにしてもだ。あまり早くその地図の所に行ってしまったら、現在、
殺人を重ねている犯人を捕らえられなくなる。その場所で待ち伏せするのが、
簡単だろう。警察にだってできる。」
地天馬の言葉に、刑事は顔色を変えた。
 「何ですと?」
 「構わないじゃないか。こんな所で油を売っているより、その場所へ早く行
こう。」

花畑刑事が、車から降りながら言った。
 「あのきんもくせいらしいですな。まだ、犯人は来とりませんよ、地天馬さ
ん。」
下田警部だ。無線で指示を受け、先回りしてくれたのだ。問題のきんもくせい
は、山の中腹にある、取り壊された公園の樹木であったようだ。ここから見通
しは効くが、犯人からも見えるだろう。そこで、少し遠ざかることになる。
 「まさか、既に掘り返されているなんて事は・・・。」
地天馬は、刑事に聞いたのと同じ事を、警部にも確かめた。
 「いえ。それはありませんでした。」
 「結構。」
地天馬は、やっと一心地ついた顔になった。

 それから待つこと数時間。日付がかわらんとする瞬間、下の道で見張ってい
たらしい警官から報告が入った。「それらしき人物が車で現れた。」と。
 「よし、そのまま待機。明りは完全におとせ。」
警部は迅速に命令を出す。それからまたも、しばらく待つ・・・・・・。
 犯人が現れた。シルエットだが、男のようだ。スコップみたいな道具を持っ
ている。しばらくキョロキョロしていたが、すぐに目的の場所を理解したよう
だ。例のきんもくせいの木に近付いて行く。その根元を掘り返し始めた。五分
も掘っただろうか、影の人物は、何か箱のような物を取り出した。
 「そこまでだ!おい、ライト!」
警部の声と共に、一斉にサーチライトが一点に集められた。これほどTVと同
じようにやるとは知らなかった。手を顔にかざす犯人。やがて事態を察したの
か、箱を真下に落とし、その場に膝をついた。
 「おまえ、名前は?」
近寄った警部が、こう訪ねた。男は最後の抵抗を試みる。
 「な、何の芝居だ、これは。警察が何でいるんだ。」
 「その足元の金庫は何だ?十五年前の、銀行強盗殺人の金だろう!」
 「か、仮にそうだとしても、もう時効だぜ。あんたらに関係ない。」
 「それはどうかな。つい最近やった殺しはどうなる?所沢、根津野、浅見・
・・。おまえがやったんだろう?」
 「し、知らねえよ、そんなやつら。」
 「話は後で聞こう。さ、来るんだ。」
男を連れて行こうとした警部に、地天馬が言った。
 「警部さん、一応、中身を確かめないとね。」
 「え?ああ、金庫ですな。そいつは鍵で開けるタイプですか。」
 「そうです。多分、そいつが持っているはずですよ。血の付いた鍵をね。」
警官の一人が検査をすると、確かに血痕の付いた鍵が出てきた。
 「これで完璧だ。」
地天馬は、自分の推理が当たっていたと確信が持てたためか、楽しそうに言っ
た。開かれた金庫からは、十五年前の事件の金と分かる、帯封の付いた札束が
転がり出た。

犯人が捕まってから、数日後。場所は探偵事務所。
 「十五年前の銀行強盗殺人事件の犯人の四人組は、最初っから時効を待つこ
とを計画していたんだと思う。その間、金を誰が保管するかで問題になった。
持っているにしては、危なすぎる代物だからね。そこで金を金庫に入れ、埋め
ることにした。それも、四人の内の誰かが抜駆けできないように、一人が金を
埋め、一人はそいつからだいたいの場所を聞いておき、一人は金を埋めた細か
い部分−この場合、きんもくせいだな−を聞いておく。最後の一人は、金庫の
鍵を預かっておくことにしたんだ。金の埋め役になったばっかりに、それに他
の三人を仲間として信頼し過ぎたがために、隠し場所や木の名を聞き出された
後、裏切られ、崖から突き落とされてしまったんだな、今度の犯人は。その彼
が奇跡的に助かり、三人を順に襲い、復讐しただけさ。ま、金を奪い返すため
に、鍵を奪う必要もあっただろうが。
 根津野がスネークキューブという、十五年前にはなかった物に暗号を刻んで
いたのは奇妙だが、まあ、隠し場所を忘れまいと、改めて暗号化したときにた
またま、キューブに刻む事を思い付いたんだろう。そうなると<四つの輪の件
>も、惑星の輪である可能性が出てくるが、彼の周りに、宇宙に関心がある様
子はなかったからね。おもちゃなら、子供に買ってやったと考えられる。」
地天馬が、本当につまらなさそうに言った。私が言葉をかける。
 「君が言った通りだったんじゃないか。少しは喜べよ。」
 「自白でケリがつくっていうのは、少しばかり、残念だね。しかし、崖から
落とされたというのなら、理屈が合うな。」
 「何の理屈だい?」
 「何故、犯人はすぐにでも掘り返しに来なかったのか、というやつさ。犯人
は金を埋めた場所を知っているのだから。」
 「そうだった。それで?」
 「犯人は、突き落とされた時のショックで、埋めた場所の記憶が、あやふや
になってしまったらしいんだ。それで裏切り者の三人に復讐していく過程で、
聞き出して行ったんだろう。あとはやっぱり、金庫の鍵が手元になかった事だ
ろう。」
 「そういう見方があるのか・・・。そうだ、もう一つの謎は?あの、<途中
まで切断された首>・・・。」
 「そうだったな。またも推測だが、一つ、考えられることがある。犯人は、
被害者の咽に引っかかったある物を取り出すため、首を切り開いたんだ。首を
切り取るつもりはなかったんだと思う。」
 「あ・・・。では、そのある物とは?」
 「もちろん、例の金庫の鍵さ。あれがなければ、いくら隠し場所を思い出し
たとしても、簡単には金を手に入れられないからね。それに、そうだからこそ、
浅見だって、飲み込んででも鍵を渡すまいとしたんじゃないか。たまたま、鍵
は咽の所に引っかかったようだけど。」
 「なるほど・・・。」
私は感心し通しであった。少し間をおいて、地天馬が口を開いた。
 「・・・思うんだがね。三人の男は年齢を気にせず、つまり時効を待ってで
も金を得る意味がある。でも、女の浅見は違うんじゃないか。二十五才から十
五年間ずっと、金はお預けを喰ったまま、青春を恐怖にさいなまれながら生き
て行けるものかね?」
 「浅見が特別なのかもしれないけど、普通なら、生きては行けないね。」
 「だろう?浅見は、そうしてまでも、十五年前の銀行襲撃の計画に加わる値
打があったんじゃないか。」
 「例えばどんな?」
 「例えばじゃなく、確信しているんだがね。女の行員が殺されただろう。そ
れが目的だったんじゃないか。」
 「もう少し、詳しく。」
 「だからさ、十五年前の強盗事件の時に殺された行員は、浅見の恋がたきか
何かで、その女を殺すという条件で、計画に加わったんじゃないかってこと。
捕まった犯人をつついてみれば、その点も出て来るんじゃないかな。」
彼が言い終わらぬ内に、電話が鳴った。地天馬が出た。
 「・・・そうでしたか!いや、想像していた通りですよ!あ、報告どうも。」
電話を切った地天馬に、私は聞いてみた。誰からか、と。
 「下田警部からだ。さっき僕が話した推測通りだったそうだ。犯人が計画の
細部を含め、全面自供したってさ。それにだ、捕まった男は何度か外国に旅行
していてね、まだ時効は成立していないようだ。」
 「なんともはや・・・。」
私は言葉がなかった。でも、何とか次の言葉をつないだ。
 「・・・できすぎた結末ですなー。」

−この章終わり−


 注意 ≠アの「六面体の蛇」の2と3は、「空中分解2」の381と382にあ
    ります。ご面倒でしょうが、検索をして読んでください。
     このような分断UPになった訳は、ミスがいくつかみつかったためで、
    手直しした回のものだけを、こうしてUPし直した次第です。




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