AWC 大型犯罪小説  「ある意味では普通」  ゐんば


        
#1778/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (GVB     )  89/ 8/19   1:44  ( 25)
大型犯罪小説  「ある意味では普通」  ゐんば
★内容

 こちら、三本松署前の杉野森です。三本松の連続老婆殺害で昨夜逮捕されまし
た松本喜三郎容疑者は、けさはゆっくりとよく眠った様子で、朝食を残さずペロ
リとたいらげました。
 三本松署では、松戸のすもう取り殺害についても松本容疑者の犯行ではないか
との見方を強め、松本容疑者を追及しましたところ、今日になって犯行を認め、
特捜本部の調書をペロリとたいらげました。
 調べによりますと松本容疑者は、今年の三月から七月にかけて、「将来有望な
株を特別の値段でお分けできる。年金が十倍になってかえってくる」などとお年
寄りに巧みな話をもちかけて、用意した車で郊外に次々に誘い出し、そのまま車
の中で洗濯用のロープをペロリとたいらげました。
 特捜本部は今日松本容疑者を殺人、死体遺棄の容疑で東京地検に身柄送検し、
松本容疑者は午後四時二十分、拘置尋問のため車で三本松署から護送され、東京
地検に到着、警察官に両わきを固められて、トレーナーで顔を隠し、大勢の報道
陣のテレビカメラとフラッシュをペロリとたいらげました。
 一方、特捜本部は松本容疑者の自宅を家宅捜索、証拠となる偽造の株券、凶器
のロープなどを発見、現場に残された指紋についても松本容疑者の物と同一では
ないかと、指紋をペロリとたいらげました。
 この事件について心理学者の梅田手児奈さんは、「松本容疑者の行動には、ど
こか社会に対するひねくれた感情がある。おそらく、社会から相手にされなかっ
たという屈折がこのような形を取って現われたのではないか」と、松本容疑者の
過去をペロリとたいらげました。
 三本松署前から、杉野森がお伝えいたしました。

                             [完]




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