#1517/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (CGF ) 89/ 4/ 2 14:24 ( 95)
ユミアウラ創生紀 第7話<海の一族 カイオウ> 舞火
★内容
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*ユミアウラは第4話辺りから連続してます*
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ユミアウラにおいて情報を司どるカイオウは、オリンポス内を流れる川のほとり
で、ぼんやりとその流れを見ていた。
川は、木々の間を擦り抜け、ここ、オリンポスに水の恵みをもたらしている。
絶え間なく流れる水は、カイオウの両足を濡らし、さらに下流へと流れていく。
カイオウは、そんな流れをぼんやりと見ていたのだ。
流れは、カイオウの脳裏に流れを作り、幾多の情報が流れていった。
過去の闘い。
敵の力。
はるかな過去の平和な時代まで……。
彼は、海の一族のカイオウ。
情報を司どる者。
故に全てを知る者。
濃紺の衣に身を包み、決して変わらぬその表情の奥底にどんな情報が詰っている
のか、仲間ですら知らなかった。
他の者が何を思って自分と接しているか、などというものも全て『情報』として
入っている。
『仲間は所詮、他人であるのだから』
テンオウ辺りが聞いたら激怒しそうな台詞を、一度カセイに漏らした。
それは、数少ないカイオウの愚痴であったのだろう。
ぴくり
それはゆっくりとした動きであった。決して突然の動きではない。ゆっくりと穏
やかな動きで、カイオウは川から出た。
だが。
カイオウの瞳は川の流れを視ていた。
彼もメイオウと同じく視る者。だが、カイオウが視るものは情報。
川の流れの中のわずかな変化を視て取ったカイオウは、川上へと歩き初めた。
その変化は徐々に大きく、激しく、ついには肉眼ではっきり見える程になった。
清らかな筈の流れが大きく波打ち、泡立っている。
−−−これは、決して自然の動きではない。
川が汚染されている。
物質は……カドミウム。
濃くなっている。
カイオウは自身の情報により、魔の存在を確認した。
しかも。
今だ推定の域を出ないその『情報』を確固たるものとするため、その存在がいる
であろう場所まで赴こうとする。
−−−必ずこの目で確かめる。
カイオウはそう思い、そして、意識する事無く、その『思い』につながる『情報』
を脳裏から見い出した。
−−−この『情報』は、炎の一族のカセイが言った『言葉』か……。
『カイオウの情報は、カイオウの限りなく強い好奇心の賜だ。決して力のせ
いばかりではない』と……。
−−−それは正しい。私は何でも知りたい。全ての情報を私の元に。確かに私の役
目は情報を集め、分析し、解析することだ。だが、それ以上に私は知りたい。
この世界の全ての事を。
私自身も含めて、私の知りたい事を全て……。
知っては、ならぬ、こと、さえ、全てを……。
無表情のままのカイオウの顔にわずかながら表情が浮かんだのは、元居た場所か
ら一キロばかり上流に遡った所だった。
川の中央部が泡立ち、なおかつ、どす黒く変色すらしている。
確信の笑みが口許にわずかにほころび、消えた。
背中にくくりつけられた50センチ程度の濃紺の棒をゆっくりと引き出す。棒は
一振りで一メートル以上に伸び、その先が三つに分かれた。
戟先まで含めれば軽くカイオウの身長を越えてしまう。が、カイオウは軽くそれ
を片手で持ち換えた。
それは三つ又の戟(ほこ)。それを扱うは海の者の印。
三つ又の戟(ほこ)−−−元来、海を支配する権力者が与えられた権力の象徴。
海の一族は海に組みする者であるが故にその武器は三
つ又の戟。
その海の色を発つ戟は、大きく振り上げられ、カイオウの頭上で停止した。その
まま、二歩、三歩と歩き川の中に入る。
カイオウの目に、どす黒く変色している物質の『情報』が映る。
−−−カドミウム。
含有率五十%。
既に一キロ下流まで流れてる!
カイオウは『情報』を一瞬のうちに分析した。
と、大きく伸び上がり戟を勢いよく振り降ろす。
戟の先はまっすぐ泡立っている中心に突き刺さった。
ばしゃああああんっ!!!
激しい水沫が上がり、汚水がカイオウに降りかかった。
カイオウは逃げもせず、顔の辺りに来た水沫を軽く払う。
カイオウの衣に触れた汚水は、『聖なる石』の浄化作用により、再び清らかな透
明感を持って、水中に没した。
と。
戟が一気に持ち上がる。
水中から、緑色の鱗を光らせた半魚人が、現われた。戟が右の肩に深々と突き刺
さっている。
半魚人の丸い目が、カイオウの姿を映した。
両手を伸ばしてくる。青い体液が川に滴り落ちた。
カイオウは眉をしかめ、その液体を目で追った。
−−−カドミウム
銅
水銀
………有毒金属群。
カイオウは跳んだ。水の抵抗を全く感じさせない程の跳躍力で、半魚人の頭上を
越える。跳び越えるついでに、自分の戟をひっつかむ。
「はあっ!」
掛け声と共に、戟は大きく弧を描き、半魚人ごと対岸の巨石に突き刺さった。
白い岩が、戟の威力に耐えかね、音を立てて崩れおちた。