#1518/1850 CFM「空中分解」
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ユミアウラ創生紀 第7話<海の一族 カイオウ>(2) 舞火
★内容
川から上がったカイオウの目に、青い体液を振り撒いて死んだ半魚人の姿が映る。
その傍らに濃紺の戟の姿があった。
それを拾い上げたカイオウは再び川の中へ入っていった。
もう半魚人などに目もくれない。
−−−必要な情報は手に入れた。
故に必要ない。あれへのカイオウの好奇心は消え去っていた。
カイオウは視ればいい。視れば必要な情報を手に入れる事ができる。
カイオウは戟を川の中心に突き刺した。
−−−川は我が友。故に、魔に侵されたその流れを浄化するのはこの私。
憂いの思いが戟に伝わり、戟が淡く光り輝くと、どす黒く変色した水は清く透明
な流れとなった。
海の一族はまた、その使命故に、物質の合成能力を持ち合わせていた。
彼らは、ユミアウラに必要なあらゆる化学物質を造りださなければならないし、
合成し、解析し、また、手に入れた物質の改質すら行なう。
その力を用いれば有毒金属群の浄化なぞた易いことではあった。
カイオウにしろメイオウ,スイセイ、このイナミテの三人の子供達は力を使う事
に決して躊躇(ちゅうちょ)なぞしなかった。すれば、仕事ができないのだ。
−−−川の流れはこれでいい。だが、大地が汚染されてしまった。大地の汚染は私
がやるより、ドセイに任せた方がいいな。だが、一体どこにいるんだ、ドセイ
は……?
カイオウがドセイの『情報』を手に入れようとした時、聞き慣れた声が耳に入っ
た。
それは、カイオウを呼んでいるように聞こえる。
@その声の持ち主が、『情報』によりメイオウに間違いないことが確認されると、
カイオウは微かに笑みを浮かべ、しかし、それはすぐ消えた。
「カイオウッ!」
メイオウとスイセイ−−−カイオウにとり兄弟にあたる二人が木陰から現われる。
「大丈夫かい?」
スイセイが心配気な表情を浮かべている。「メイオウがさ、カイオウが戦ってる
っていうから急いできたんだよお」
カイオウは黙って諾いた。
「大地が汚染されました。ドセイはどこにいますか?」
「ドセイ?」
きょとんとしてるスイセイに代わって、メイオウが答える。
「探すよ。ちょい待ち」
わずかな時の後、メイオウは口を開いた。
「世界樹の所に、ああ、モクセイもいる。コンタクトは簡単だな」
「では、モクセイに伝えてもらいましょう。ドセイに大地を浄化してもらうように」
「ふむ」
メイオウは諾き、心の中でモクセイを呼んだ。
−−−生(いのち)の一族 モクセイ!メイオウだ!
返事はすぐ来た。
『何か用かな』
明瞭な声がメイオウの頭の中に飛び込んで来る。
−−−カイオウがさ、ドセイに大地を浄化して欲しいって言ってるんだ。できるか
い?
『大地のことならまかしとき』
別の雰囲気の声が返って来た。『既に汚染は捉えたよ。すぐやるよ』
『世界樹が我々にも汚染の実体を教えてくれる。どうやら、木々にも若干の汚染が
見られるが、わたしも木々の浄化をすることにしようかな』
モクセイも答えた。
−−−たのみます。
カイオウの声と共に、一瞬の内に大地と木々の汚染は浄化された。
『世界樹の側にいるからね、離れててもこの位はできるよ』
ドセイの得意そうな声が響いた。
『この世界樹は我らが母、大地母神ガイアの聖なる木だからね』
モクセイの笑いを含んだ声が聞こえる。
『ところでさ、魔が現われたってことみたいだけど、何かあった訳?』
「そうそう。それで俺はここまで来たんだ」
メイオウがカイオウの方に向き直る。「魔がオリンポスの周りを取り囲んでこち
らを窺っているようだ。その手の何か情報はあるか?」
「魔の情報は大量に入手しております。皆を集め検討する必要があるでしょう」
カイオウはあくまで静かに答える。「ですが、データによりますと、すぐさま攻
撃を仕掛けて来るようではありませんね。どうやら、期を狙って一気に攻撃を仕掛
けるパターンを取る可能性が八十%を占めております」
「だそうだ。と、じゃ、テンオウに知らせんとな」
「あれぇ、メイオウてば、まだ言ってなかったのかあ」
「カセイじゃないが、どうもあいつは気にくわね。なんかっつうと、神に味方する
しよ」
「でもさあ、あの単純馬鹿。遊びの格好の目標じゃないかい」
「言えてる」
『それ、伝えてあげようか』
通信を司どるモクセイの、笑いをこらえてるような声がふってわいた。
「じ、冗談。んなもん言ってみろ。あのヒステリー、ところ構わず追っかけてくる
ぞ」
「やだよお。あの短気」
メイオウとスイセイの激しい拒絶に笑いが響く。
くくくくくくくくくく
カイオウも笑う。
心の中だけで笑う。
くくくくくくくくくく
決して表情を表わさぬカイオウ。
<終>