#1516/1850 CFM「空中分解」
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ユミアウラ創生紀 第6話<氷の一族 スイセイ> 舞火
★内容
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*ユミアウラは第4話辺りから連続しています。*
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くもの糸が、七色に輝き辺りに漂う。
鳥がはばたき、白き羽毛が宙に舞う。
草がなびき、緑の匂いが大気を染め。
花々が、その美しき花弁を光に露す。
ここは、光り溢れるオリンポスの地。
だが……
メイオウの瞳に移るのは、魔の存在。
視るものである故に、視るものは魔。
だから……
メイオウは正しい情報のために、情報を司どるカイオウのもとへと……………
「ぎゃっ!」
けったいな悲鳴とともに、メイオウの黒い衣が宙に舞った。
衣だけ−−でなく、メイオウ自身も……。
メイオウの体が、しなやかにたわみ、空中で一回転した後、地上に軟着陸した。
きっと視線を傍らの樫の木に向ける。
見えざる場所に、よく知った者の存在が視えた。
「スイセイっ!」
メイオウが怒鳴る。
くすくすくすくすくす
幼い子供の笑い声が木陰からもれてきた。
「ごめんごめん。来るのは見えたんだけど、よけると思ったんだもん」
ユミアウラ随一のいたずらっ子が、その水色の衣をはためかせ、姿を表わした。
小柄な子供の姿に近い風体の戦士、氷の一族のスイセイだ。
「何だ、こいつは?」
メイオウの指差した所に、細いパイプが伸びていた。またご丁寧にもちょっと見
た目には常人には判りにくいようなカモフラージュがしてある。
「何ってパイプだよ」
両手を後ろ頭で組み、そらとぼけて答えるスイセイ。
「パイプってのは判ってる。何のパイプだ?」
「さあーて」
「おい、スイセイ」
声が低かった。「俺は今ちーとばっかり機嫌が悪いんだが……」
「そうみたいだから、教えてあげよう」
がらっとスイセイの態度が変わった。がっくりきたのはメイオウ。
「このパイプの元にはこの薬品が入っているんだ」
そう言って取り出したのは10センチ程の瓶に入った茶褐色の液と同じ瓶に入っ
た無色透明な液。
「粘着ゴム、か……」
メイオウはその液に心当たりがあった。
「そっ。カイオウ特製粘着ゴム、バージョン5」
「フアァイブゥー。何、またバージョンアップしたのかぁ」
「そ。だから威力を試してみようかなっと、思ったんだい」
メイオウは頭を抱えた。
抱えながらも尋ねる。「どういう仕組みだ……」
「あのパイプの根っこにはこの二つの液の瓶をセットする装置があるんだ。人が通
るとセンサーが働いて、自動的に発射。パイプの中で二液は混合されるから、人に
架かる頃にはちゃあんと粘着ゴムとなって、かかった奴は動けなくなるよ」
スイセイは得意気に説明する。
「おーい。ここは神話時代の地球だぞぉ」
メイオウは呆れ顔だ。
「へへへ。かあんたんな機械さ。一応、今の時代にあった造りだもん」
くすくすくすくすくす
スイセイは笑う。
限りなく無邪気な純粋な心のままの戦士。
だが、限りなく冷たき力を持つ戦士。
氷の刃は全てを切り裂く。
氷の一族−−−技術を司どるもの。
「で、こんな仕掛けに気付かない程急いでどこに行こうってんの?」
「ん?」
メイオウははっと我に帰った。「おーい。忘れとったではないか」
声がまじになった。
「ふぁ」
「魔が近付いてる」
「魔が?」
スイセイの声もまじになった。
「様子が判らん。カイオウなら何か判るかも知れないと思ってな、それで行こうと
してた途中だ」
「俺も行くっ!」
スイセイが手早く装置を片付け、持っていたケースに収める。
こと機械というものを扱うことにかけては、スイセイの右に出る者はない。あっ
という間に片付けてしまった。
メイオウがケースに収められたそれを見てつぶやく。
「なあにがかあんたんな装置だとぉ。そんな五センチ角に収まるような装置のどこ
が簡単なんだ」
「簡単、簡単。さっ、行こう」
メイオウの手を引っ張るスイセイ。
二人はそそくさとその場を離れた。
<終>