AWC ユミアウラ創生紀 第5話<幻の一族 メイオウ>    舞火


        
#1456/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (CGF     )  89/ 3/ 4   7:53  ( 95)
ユミアウラ創生紀 第5話<幻の一族 メイオウ>    舞火
★内容

 キンセイが、ユミアウラの居住にあてがわれた神殿へと、戻っていく。
「無事か?」
 ふってわく声。全身黒づくめの少年が、壁に寄り掛かるようにして立っていた。何も
かも知っている声。それも道理。彼は、全てを見通すメイオウ。
「視てたのなら、来てくれたっていいでしょうに」
 恨めしげなキンセイの声に、メイオウはただ笑いを返す。
 『聖なる石』を漆黒に変化させる幻の一族のメイオウ。
 そして。ただ一つ、三つの名を持つ一族。

 普通は……いたずら好きの『幻』
 精神的なショックに対し……陰気な『影』。
 そして。
 激しい怒りと共に現われる……
 全てのモノ、例えそれが仲間であろうと、怒りの原因に対する激しい、正視に耐えな
い程の……残虐さ持つ『闇』

 今のメイオウは……。
 キンセイは心なし後ずさる。
「気付かなかった訳じゃないんでしょう」
「カセイを探すので手一杯でね。気付いた時には遅かったんだ」
 からかうような声。「怪我するとは思わなかったな。あの程度の魔で……」
 血が昇った。キンセイの顔がすうっと赤くなる。
「デーメテールが巻き込まれなかったら……」
「それでも、ね。光の一族の名が泣くよ」
 執拗に食い下がるメイオウ。「闇の魔はあんたのお得意な相手じゃないか。そんなん
で、苦戦とは。ユミアウラ第四位の力を持つくせに」
 再び笑う。あざけり。中傷。
 だが……
「いい加減にしなさい」
 キンセイは静かに一言発しただけ。
 メイオウはとことん機嫌が悪い。こんな時に逆らっては駄目だ。
 経験がキンセイの怒りを押さえる。そして……
「カセイのことさえなかったら、あんな奴の接近に気付かん俺じゃないさ。あんな魔族
の下っ端風情に、だ!」
 怒りが声を震わす。
「この俺の『目』から逃れられる力なんざ、奴等にもたすことなかったんだ!!」
 幻の一族。影であろうと闇であろうと……黒き『聖なる石』を扱う一族。
 即ち−−全世界に潜む全てのモノを見通す者。
 それが責務。
 監視。警戒。発見せよ!ありとあらゆるものをその視界に納めよ。特に、我らが敵−
−魔族の存在を逃がすな。
 それが仕事。
 それを怠れば、ユミアウラの敗北。
「この俺達の『目』から逃れる奴−−奴等の存在が俺の視界を乱した。そうさ。だから
俺は闇の魔を見付けられなかった。あれほど近くに来るまで気付かなかった。そうさ!」 キンセイを睨む。
 と同時にはるかなる彼方をも睨む。
 わずかにメイオウの指が動き、キンセイの周りの壁が音を立てて弾ける。
 キンセイの顔のわずか一センチにもならない場所に黒いつぶてが食い込んでいた。
「だいたいなんで、あんな勝手な奴が、この俺の力を消す程の力を持っているんだ?あ
らゆる力を遮断する力を……。しかも、感覚系列の力に関しては全く無意識のくせに…
…完全に遮断するなど……あんな力を。何故!」
 ぎり。
 不快な音がメイオウの口許から響く。再び弾ける壁、石−−岩。
 幻の一族のつぶてがキンセイの周りを走る。その怒りのまま、キンセイを攻める。
 キンセイはメイオウを見、そして視線を中空に向ける。
「カセイは防御する者だから……。だから、その力はカセイのもの」
 再び、メイオウを見。つぶてを全く無視し……。
「だけど、無意識ならカセイの責任ではないと思う。むしろ、少しでもカセイを守って
くれるならあってもいいと思っている」
「カセイのせいだ……」
 突然、メイオウの声のトーンが落ちる。つぶては一瞬の内に地に落ちた。
 怒りが溶けた証拠。それは、『闇』からの開放。
「ごめん」
 突如として『影』に転ずる。陰気とはいえ残虐性が消えたメイオウが笑った。照れた
ような表情のままつぶやく。「悪かった」
 キンセイも笑う。
「いつものことだもの。気にやしないから」
「カセイのせいではあるけど……。だけどそれを言っててもしようがないもんな」
「カセイの力は。……封印されている今、唯一、その無意識下における全くの無制御状
態の、『力による視覚,聴覚といった感覚力の遮断』という力のみですもの」
「もっとも厳しく封印を施した結果……か」
と、メイオウ。「だけど諦めないよ。いつか必ずカセイをこの『目』で捕らえて見せる
から」
「がんばって」
「ああ、負けやしないさ。いつかはきっと。そうだね。くすくすくすくすくす」
   声を上げて笑うメイオウ。今のそれは『幻』。陽気ないたずらっこ。
 黒い髪が風になびく。
 黒い衣が風になびく。
 そして、
 黒い瞳が何かを捕らえて、静止した。
「魔が近づくのが見える」
 キンセイがほっとしたのもつかの間。
 一瞬の内に緊張状態に移る。
「オリンポスの周りの各所に魔族の存在が見える。動かない。窺っている。何か企らん
でいるのか……?」
「企む?何を」
「そこまでは判らない。俺は視るだけだ」
「そうね……」
「カイオウの所に行って来る。警戒だけはしておいてくれ」
「判ったわ」
 キンセイが諾くのを確認し、メイオウはきびすを返す。
「カセイがいないのは痛いな……」
 それは、キンセイ,メイオウ,共通の思いであった……。         <終>




前のメッセージ 次のメッセージ 
「CFM「空中分解」」一覧 舞火の作品 舞火のホームページ
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE