AWC オリンポス物語(1 <幽霊パニック!>(13)  舞火


        
#1424/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (CGF     )  89/ 2/ 5  22:23  ( 95)
オリンポス物語(1 <幽霊パニック!>(13)  舞火
★内容
 舞香は奇妙な不安に襲われていた。 それは、目前の敵を指すものなのか?ユーキは
そういうけれど、舞香自身はそれがどんなものなのか理解していなかった。考えようと
もしなかった。
 考えたくなかった。
 どうして、判るのかИИ何で。気配が判る訳じゃないのに。
 敵は人であるから?
 じゃあ、この不安は?
 なぜ、人の動きが判る?
 いつからだった?
 人の動きが判る。怖かった。あたしは、人、なのに。怖い。やだっ!
  思考の停止。
 何も考えたくない。考えるのが怖い。
  それは、メビウス・リング。
  永遠の課題。決して答えは考えない。
  知ってるのに……。

                  <κ>

 目的地の通信室。
「アメリアが二人見付けたらしい。下手すると危害が及ぶ」
 追いかけて来たサムスが報告する。
 厚い硬化テクノタイト製の扉、この向こうに偶然にも舞香達の目標が双方とも揃って
いる。
「まさか、ね」
 舞香の悔やむような口ぶりにユーキが諾いた。扉をにらんだまま。
「どうする?」
 舞香の瞳がふっと澱んだ。
 一つの手段が浮かび、言葉になった。
「『トドナの森』がきっかけを作ってくれる」
「『ドドナの森』?」
 皆がいぶかしげに舞香を見つめる。
「あたし行って来るから。ここで待ってて」
「何するつもりだ?」
「待ってて。ここから離れないで。何があっても気にしないで。あたしにも何が
起こるか、判らない」
 『ドドナの森』、せめて、今くらい助けて。あなたが言ったのよ。オリンポスのため
なんだから。せめて、今くらい。
 ユーキ達は呆然と取り残されていた。

                  <λ>

 舞香はパルテノンがパルテノンである由縁−−神殿へと向かっていた。
 その巨大なスペースを存分に使って造られたその神殿は、今でも大事に保存されてい
るギリシャ時代の神殿を、そっくりそのまま模倣したもの。
 その神殿は建築者によって『テミスの神殿』と名付けられた。法と秩序の女神、そし
て、<正義>と<平和>の生みの親として、尊ばれたテミスを讃えて。
 この神殿のある所に入るのには、手で開けなければならない巨大な扉がある。観音開
きに開けられるこの扉は表面は美しいレリーフで飾られていた。一見、木のようだか実
は圧縮サクノムに特殊処理を施したもので、その出来映えの見事さは言うまでもない事。 圧縮サクノムはガラスに似た透明感溢れる美しい物質だが、その加工は非常に難しい。まして、木のように見せるなど絶技中の絶技。
 扉を抜けて参道を歩く。五十メートルばかりのこの参道の両側に木々が植えてある。
 そう、この参道の右側こそが『ドドナの森』なのである。全てが樫の木の森。
 ちなみに左側はその木々を抜けた所に小さな泉がある。それは『デルフォイの泉』で
あった。
 『ドドナの森』にしろ『デルフォイの泉』にしろ、その場所は、ギリシャ時代におけ
る、神託所であった。
「予言と神託、助言。あたしの指揮者」
 舞香はうっそうと生い茂る木々の間を縫って、小さな五メートル四方位の敷地に建て
られた神殿の門をくぐった。
 この神殿は、テミスの神殿よりはるかに規模は堕ちるが、その装飾美術品は勝るとも
劣らない物だ。
 神殿の奥に据えられていたのは、一枚の大きなレリーフ。巨大な一本の木を浮き彫り
にしたこのレリーフの前に、舞香は立ち止まった。
 真っすぐレリーフを見上げる。
 固くひきしまっていた口から言葉が発せられた。
「『ドドナの森の樫の木』あたしの声が聞こえる?」
 舞香のそれは真っすぐレリーフに向かって発せられた。
「オリンポスのために三人の子供達を救って欲しい」
 さわさわさわさわさわ
 どこからともなく葉が擦れあう音がした。舞香はそれを聞いてわずかに眉をよせる。
「なぜなら、あの子達は次世代のオリンポスの優秀な隊員だからです」
 ざわざわざわざわざわ
 ざわめきが大きくなった。まるで木々が動揺しているかのようだ。
 そして。
 そして、わずかな間をおいて、『ドドナの森の樫の木』は活動を開始した。

                  <μ>

 最初の兆候に気付いたのは、アポロンのマサトだった。
 少し空気の流れが揺らいだ。
 マサトの天性の勘−−気流が判るのだ−−肌で感じる訳でもない。ただ判る。最近で
は見れるようにもなった。超能力的なものらしいが肝心のESP波は検出されていない。  マサトは揺らいだ流れをずっと目で追った。気流の流れは白い線として映る。
 原因は送風口。
 送風口から出て来る気流が数秒間乱れたせいだ。
「まさか……」
 最悪事態が思い浮かんだ。空気循環装置の故障−−いや、たいしたことじゃないらし
い。警報が鳴らない。
 気流が正常になった。
「ふう」「あら?」
 マサトの吐息と重なって、アルテミスのジャミーが小さく叫び声をあげた。
「中の様子がおかしいわ、子供達が倒れちゃった!」
「何だって?スパイの方は?」
「まだ何も」                             <続く>




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