#1420/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (CGF ) 89/ 2/ 5 21:55 ( 95)
オリンポス物語(1 <幽霊パニック!>(9 舞火
★内容
「えーい、はよせんかぁ」
ザム大佐得意のげんこつが、見事せいきの頭に決まった。
「てー、何すんだっ」
「うるさいっ、この悪がきが。どーせ貴様のせいで呼び出されたんに決まっとんだ。全
く」
「まさか」
と言いつつも、笑い飛ばせなかった。何だ?
せいきが珍しく不安気な表情を見せた。無意識の内に視線が『月桂樹の部屋』に向く。 何故か舞香が気になった。
「そういや、今日も出るって」
「何?」
ザム大佐の声にふと、我にかえる。
「い、いや……」
こんな時に幽霊のことなんか考えてたら、また喰ってしまう。と、慌てて顔の前で両
手を振って否定する。
「ふん」
不満気にザム大佐は鼻を鳴らす。
内心ほっとしつつも、どうも舞香が気になった。
<Ψ>
エレベータを降り、そこからジャンクション(中継点)に向かう。歩いて二〜三分の
所だ。そこから、ムービング・ロードに乗る。
ジャンクションは、各ブロックに向かうメイン・ストリートが縦横無尽に走っていて、そのメイン・ストリートは、(少なくとも各ジャンクション付近においては)片道四車
線あり、端が最も速度が遅く、中央よりになるほど早くなるという仕組みで、平行のブ
ロックを密接につないでいる。(ちなみに垂直に位置するブロックに行く為に高速エレ
ベーター、普通のエレベーター、エスカレーター、リフトダラーがジャンクションには
各五つ以上ついている)
せいき達は次々と中央よりの道に乗り換え、このオリンポスの最も奥にして、そして、最も重要な所Aブロック(通称は何故かオリンポスである。オリンポスでオリンポスに
行くと言えば、大抵Aブロックを指す、筈で、ある)に向かう。三分後、Aブロックの
ジャンクションにつくと、今度はエレベーターに乗り、Aブロックの三階、右手の道を
使って、三回角を曲がる。そして、突き当たりにあるグレイの扉が司令官室である。
一見、何の変てつもない扉ではあるが、スムースに開いた扉の内側に、又一つ扉が
在ったりする。二メートルばっか先にあるその扉の手前でせいきけっつまずく。ザム大
佐の冷ややかな視線を無視して先に進む、せいき。
「ふーむ」
さすがに、先んじて入ろうという気がしない。思わずたたらを踏んでしまう。と、
「げ」
背中をどつかれ、恨めしげに後ろを振り向く。「どうぞ、やっぱリーダーから行くも
んだと思いますが……」
それでも丁寧に、前方にザム大佐を押しやる。ザム大佐は苦笑いなんざ浮かべつつ、
それでも先に進んだ。
「意気地がねぇな」
「あはははは」
珍しくせいきが、その言葉を無視した。実際怖い。この部屋だけは。
<Ω>
「やっと来たね、二人とも」
ただっ広い司令官室の最も奥の部屋(司令官室は五つの部屋で構成されている)でゼ
ウスは二人を待っていた。軽い動作でディスクに戻り、椅子に座る。
「遅くなりまして」
さすがにザム大佐、恐縮した感じで敬礼する。何を言われるのか、判らない分、実は
彼も怖かった。何と言ってもアレスのリーダーである自分がアレスの問題児をひき
つれてきているのだから。が、案に相違して、ゼウスはいつもの、もの静かな声で言っ
た。
「実は二人にお願いしたいことがあるのだよ」
いつものように、控えめな、へりくだった感じの物の言い方なんだが、だからといっ
て、嫌みには絶対聞こえないしゃべりかた。
「我々に?」
二人、どちらからともなく顔を見合わす。そして、意味あり気にうなずきあう。
この二人が頼まれる事といったら、あーゆーことしかないのである。
あーゆーこと、すなわち、
「何か事件ですか」
「そう」
間髪入れずゼウスが答えた。
つまり、アレスが呼ばれれば大抵そうであるが、この二人が揃うんだったら、絶対そ
うなんである。何か事件が起こったんだ!
「何が起こったんですか?」
先程までの怖れはどこかに吹っ飛び、今やせいきの胸の内は期待と興奮で踊り返って
いると言っても過言ではないだろう。うきうきと尋ねる。
結局せいきは、どたばた専門家なんである。
「実はスパイが潜入したので、捕まえて欲しいのだ」
と、まあ、淡々とそういうことを言うので、せいきとザム大佐、言葉の意味を理解する
のに時間を要した。
「スパイ?スパイって、あ、あ!あのスパイ?」
せいきのすっとんきょうな声に軽く諾きかえすゼウス。
「そう、そのスパイだよ。どうやら、幽霊騒ぎはそのスパイが起こしたものらしい」
「幽霊騒ぎがっ!ちっくしょう!俺が絶対ひっ捕まえてやります」
「何と、このオリンポスを騒がすとは何という奴だ。この私がそういう不届き者絶対捕
らえて見せます」
ゼウスは、二人しててんでに腹を立て、息巻いているのを微かな笑みを浮かべ見てい
たが、おもむろに左手を動かしディスク上のインタホンのスイッチを入れる。
「サキ。持って来てくれ」
インタホンからサキ・柳生少将の了承の声が聞こえたが、息巻いている二人の耳には
届いていなかったのだろう。サキが表われた時、いぶかしげに顔をかしげたのだから。
「それを、二人に」
ゼウスが促し、二人の手元にそれぞれ十ページ足らずのレポートが渡される。
「それに本日のスパイの動向予測が書かれている。君達が指図してそのスパイを捕まえ
てくれ。必要なら全隊員を動かしても構わない」
「はい、必ずひっ捕らえてみせます」
「必ず」
<続く>