#1421/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (CGF ) 89/ 2/ 5 22: 1 ( 95)
オリンポス物語(1 <幽霊パニック!>(10) 舞火
★内容
二人意気込んで胸を叩いて断言する。
ゼウスは満足気に諾くと
「よろしくたのむよ」
と、二人をにこやかに見送った。
<α>
「あんなものかね」
二人が出て行った後、ゼウスはサキに話しかけた。
「ええ、私もう笑いをこらえるので精一杯でしたわ。ほんと単純に信じましたね。やっ
ぱり、ゼウスの話し方って説得力というか、どこか信じさせる力があるんですわ」
「そうか?」
「はい」
ゼウス、楽しそうに体を動かした。サキと顔を見合わせ、お互い吹き出してしまう。
「これで、舞香はその目的を達成するだろうな」
「ええ、もちろんです。けれど、私達の行動も……私達がわざとアレス(戦闘行動班)
を動かさせたことも、神野少尉の力をためそうとしていることも、きっと神野少尉は読
んでいますね。データでみる限り、彼女は相手のデータさえ持ち得ているならば、その
相手の行動パターンを、相手自身より的確に指摘することを得意としています」
「ああ。舞香ならこの結末、見事に修めてくれるだろう」
ゼウスは満足気に諾く。
「サキ。舞香は全てを知った上で君を仲間に入れたのだから」
「はい。結局、一番神野少尉に踊らされたのは私達であったのかも知れません。私達が
全く気付かぬ内に。神野少尉もまた気付かぬ内に、相手をそうさせることができる。故
に」
サキは、次の言葉を思い立ち、愕然とした。
「故に彼女は、戦略科としては最高の力を持っている……。一体、どうしてそんな力を
……?育った環境など考慮にいれても、そんな力。……つく要素がない……」
サキのそんな疑問をゼウスは軽く答えた。
「舞香はそういう娘なんだよ」
けれど、簡単にそう言ったゼウスは、今までに一転してどこか寂し気だった。
<β>
十四日の二十一時二十八分のことであった。オリンポス内の居住区のもとに、仕事先
のもとに、民間区の隊員がいそうな所に……回線が開かれた。
『全てのオリンポスの隊員に』
こういう呼び出しで始まったその連絡で、それまで暗かった居住区は瞬く間に明るさ
を取り戻す。その声は、ヘルメスのアスタリカ大佐。りんとした声が、枕元で響かれて
は起きるしかない。
『これより幽霊退治を行ないます。参加希望者は直ちに大食堂に集合してください。繰
り返します……』
<γ>
「集まれって?」
「幽霊退治だってよ、どーする?」
「希望者だけだろ」
「今何時ぃ?おら眠て」
「捕物?何よぉく聞いてなかった」
「又、幽霊でたの?やだなぁ、もう」
「アホんだらぁ、えー夢見てたのに」
「あ、あれゼウスが呼んでんだってよ」
「誰だっていい、ひたすら眠い」
「とんずらしようか?」
「水でもかけたろーか」
「幽霊は忘れたころにやってくる。うーん名句だ」
「あーん、せっかくリーチまでこぎつけとったというのに」
「ゆ、ゆ、ゆーれいのバッキャロー!」
<δ>
食堂は続々と集まって来る隊員達によって、パンク状態になっていた。
その正面に立っているのは、あのせいきである。そして、何故か、その隣に舞香が控
えていた。
「舞香、おまえの勝ちのようだな」
低い小さな声で話しかける。「まさかこんな夜の夜中にあいつら来るとは思わんかっ
た。どーせ、だんまりを決め込んで絶対出てこねぇと思ったが」
せいきは、舞香にスパイについての相談をしに行った時の事を思い出した。
本当は一人で捕まえようと思ったのだが、どーもいぶりだしということは、せいきは
めいっぱい苦手であって、舞香に相談をしに行った。そしてゼウスが舞香の案を了承す
るにあたって、ヘルメスのアスタリカ大佐の出番と相なったのである。そして、その時、舞香は皆を集めろと言った。せいきは、絶対集まらないと言った。
結果はこうである。
「当たり前です。きっと千人下らないと思います」
舞香はコケティシュな笑みを浮かべた。舌が微かにのぞき唇をなめる。一瞬いたずら
っ児の表情をのぞかせた。
「ここはオリンポスですから」
「え?」
いぶかしげに聞き直すせいきにゆっくりと繰り返す。
「ここは、オリンポス、だから……」
「ああ、そうか」
思い当たる節があったのか、妙に納得してしまうせいき。
そんなせいきをながめつつ舞香はもう一度繰り返す。
「ここは、オリンポスです」
<ε>
「しめて千百二十五人です。ゼウス夜勤手当ちゃんと付けてくれますよね」
「書類にしてヘラ(生活管理)にでも出しといてくれ」
「げっ、めんどくせぇ」
せいきは届け書類を高々と上げて、怒鳴った。
「おーい、ヘラのもん誰かいねぇーか?」
「はーい」
<続く>