AWC APPLE COMPLEX 【青き魂の讃歌】(16)コスモパンダ


        
#1403/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XMF     )  89/ 2/ 4   9:24  ( 98)
APPLE COMPLEX 【青き魂の讃歌】(16)コスモパンダ
★内容
              (16)カズの決意
 別館ビルは、カズ達のエアロダインが飛び立つと同時に倒壊した。
 救助バスケットはブルーの操作で引き上げられ、エアロダインの中にカズとノバァ
は収容された。
 機内に入ると、スピーカーからブルーの声が聞こえた。
「お疲れ様でした。救助バスケットは、風が強くて寒かったでしょう」
 操縦席に辿り着くと、二人の子供が腰掛けていた。
 一人は十才くらいの男の子。もちろん、シェン・ピーク。金髪がさらっとした感じ
で額に掛かっていた。白い子供用の上下のスーツを着て、黒のエナメルの靴を履いて
いる。この歳にして、既にPRM社社長としての風格があるが、シェンは肩で息をし
ていた。苦しそうに見える。
 もう一人は、六、七才くらいの栗毛のお下げの女の子。こちらは、パシィフィック
・クイーン大学病院の隔離病室に寝かされていた、あの青白い光に包まれたルル・ピ
ークだった。今は、あの青白い光は消えていた。
「こんにちは」「こんにちはーっ」
 二人は無邪気にカズとノバァに挨拶した。
「こ、こんにちは」「こんちは・・・」
 ノバァとカズも遅れて挨拶する。
「はじめまして・・・。僕が・・・シェン、・・・シェン・ピーク。こっ・・・ちが
・・・妹の、ルル・ピーク・・・。よろしく」
 ノバァの脳裏に、グレン博士の言葉が甦ってきた。
<あの子に聞いたことがあるんですが、白い球体が現れると、酷く疲れると言ってま
した。・・・現れるとすると、あの子の体力は夥しく消耗することになりますね>
「シェン、大丈夫? 随分、苦しそうだけど?」
 ノバァが心配そうに、シェンの顔を覗き込んだ。
「いえ、大丈夫です。いつものことです」
 しかし、シェンの顔は土色で、息絶え絶えだった。
「こわい! お兄ちゃん」
 ルルが隣に座っているシェンの首筋にしがみついた。
 ノバァが振り返ると、カズが幽霊のような顔をして立っていた。
 カズのダランと下げた血塗れの右手には、パイソン自動拳銃が握られていた。
「カズ、ガンをしまって。子供が怖がってるじゃない」
 しかし、カズはパイソンを握った右手を持ち上げた。
 抱き合ったルルとシェンが操縦席で身を固くした。
「何するの、カズ。お止し、ガンを降ろしなさい」
「ノバァ・・・そこ・・・どけよ」
 カズは、ぶっきらぼうに話すと、パイソンのハンマーを起こした。
 二人の子供を背後に隠したノバァの胸元を、カズのパイソンが狙っていた。
「カズ・・・」
「その子は、いちゃいけないんだ。これ以上、怪我人や死人を出しちゃだめだ」
「だめ、だめよ、カズ。だからと言って、だめよ。この子達にも生きる権利はある。
いえ、誰にだって生きる権利はある。その権利を奪うことは・・・。あっ」
 今のカズに、そんなことを言っても無駄だということに、ノバァは気付いた。
「ノバァ、言わなくてもいいだろう? 僕は、殺す気もないのに、人を殺してしまっ
た・・・。あの男には生きる権利はなかったのかい? 僕には、あの男を殺す理由も
権利もなかった・・・」
「カズ・・・」
「その子がいると、事件が起こってしまう。そして、ルドンコのような奴が、その騒
ぎを大きくしてしまうんだ。ノバァ、どくんだ。邪魔すると撃つ」
 カズの言葉は冷たかったが、ノバァは少しずつカズに、にじり寄っていった。
「ノバァさん、・・・・・そこを・・・どいて・・・くださ・い」
「えっ?」
 苦しそうなシェンの声が、二人の間に割って入った。
「カズさんは・・・正しいと思います。僕が・・・いると、必ず揉め事が・・・・起
きるんです。そして・・・誰かが傷つく。死ぬ人も・・出る。僕は・・・死に神・・
・なんです。僕は、この世に・・・いては・・・ならないんだと・・・思います。僕
の両親は・・・僕のことを怖がって・・・います。僕が、家から消えたのは・・・、
誰にも迷惑が、・・・掛からない所に、行くためだった・・・」
 ノバァはその言葉にショックを受けた。暫くは口も効かなかった。
「何言ってんの。あんた、自殺したいっての?」
「父さんには、もう・・・夢の中で・・・会って・・さよならした・・」
 夢の中で会った・・・? ノバァは、シェンの言葉を噛み締めた。あのPRM社の
ピーク氏のオフィスを襲ったあの白い火の球。あれは、シェンの魂・・・? そんな
馬鹿な・・・。
「だけど、ルルの呼ぶ声がして・・・、ルルを助けた・・・。僕のせいで、ルルも、
悪いやつらに・・・捕まった。だから・・・この子も連れていく」
 バシッ! シェンの頬が鳴った。ノバァが平手でぶったのだ。
「お兄ちゃんを苛めないで!」ルルがノバァに懇願した。
「苛めちゃいないわ、ルルちゃん。お兄ちゃんの目を覚まさせたのよ」
 カズはことの成り行きを見守っていた。
「シェン、いいこと。あたし達は私立探偵なの。あなたのお父さんに雇われたの。な
ぜだか、分かる? シェン、あなたが屋敷からいなくなってお父さんは、とても心配
してたのよ。だから、あたし達にあなたを探させようとしたのよ。親より先に死ぬな
んて、それも自殺なんて、絶対許せない!」
「ノバァ、話が長くなりそうだ。けりをつけるよ」
 再び、ノバァが振り向いた。カズとノバァの距離は二メートルほど離れていた。
「あの子を撃つ前にあたしを撃ちなさい」
 カズの人指し指は少しずつトリガーを引き絞っていった。
「ブルーッ! 助けてーっ」
 突然、ルルの声が聞こえた。
 すると、エアロダインは急に左に旋回した。カズの身体がよろめく。そこにノバァ
が飛び掛かっていった。二人は揉み合った。
 ガーン・・・・・・・・・。
 鈍い銃声が響いた。カズの身体が吹っ飛んだ。
 チーン・・・。先の潰れた弾丸が、エアロダインの床に転がった。
 機内後部の床に倒れたカズが、拳銃を握り締めると起き上がった。
 奥行きが十メートルもある輸送エアロダインの機体の中央に、青白い光に包まれた
人影が立っていた。
 光に包まれたノバァは茫然としていた。
 ノバァの身体を取り囲んでいた青白い光は、彼女からすーっと離れると、空中で直
径五十センチほどの白い火の球になった。そして、それは拳銃を構えるカズに向かっ
てゆっくりと漂っていった。
 カズはその火の球に、拳銃を構えた。
「駄目、いけない。カズ、逃げてーっ」
 ノバァが悲鳴を上げたが、エアロダインの中には逃げられる場所は無かった。
 一方、シェンは白いスーツの左胸を、ぎゅっと握り締めていた。

−−−−−−−−−−−(TO BE CONTINUED)−−−−−−−−−−




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