AWC APPLE COMPLEX 【青き魂の讃歌】(17)コスモパンダ


        
#1404/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XMF     )  89/ 2/ 4   9:31  ( 99)
APPLE COMPLEX 【青き魂の讃歌】(17)コスモパンダ
★内容
              (17)友人の最後
 ノバァは、宙に浮かぶ白い火の球の下をくぐり抜け、カズに飛びついた。
「いつまで、こんなもん、持ってるの。放しなさい」
 カズの手から、ノバァはあっさりとパイソンを取り上げ、床に投げ捨てた。
 カズを自分の背後に隠し、ノバァは白い火の球と対峙した。
 それは、ゆっくりと空中を漂ってきた。パチパチ、シューという音がする。光の球
の周りの空気がイオン化してピリピリしているのがオゾンの臭いで分かった。
 バチバチバチ・・・・・。バッ!
「キャー」操縦席に座るルルが悲鳴を上げた。
 操縦席の操作パネルが火花を散らしていた。白い火の球の強烈な電磁エネルギーに
エアロダインの電子装置が、おかしくなり始めたのだ。
 その火の球とノバァとカズの距離は一メートルしか離れていなかった。
「シェン、これを何とかして! これを消してよ」
 ノバァがシェンに懇願する。
「駄目・・・なん・・だ。それは・・・・・僕のいうことを・・・効かない」
 シェンがすまなさそうに答えた。
「ノバァさん、逃げてーっ!」ルルが黄色い声でわめく。
 パチパチという空中放電の音が激しくなってきた。ノバァとカズの顔を強烈な熱波
が炙る。中心温度数千度のプラズマエネルギーが、二人を飲み込もうとしていた。
「ノバァ、退けよ。その火の球は僕が狙いなんだ。僕がシェンを殺そうとしたから、
僕を狙っている。ノバァには関係ない。巻き沿いになる必要はないよ」
「カズ、あんたとあたしはコンビなのよ。どうしてあたし一人が逃げられるのさ」
「でも、そいつを防ぐ手立てはないよ。アーミーだって、やられたんだ」
「言ったろ、一人で逃げられないって。駄目なら・・・。駄目なら・・・」
「駄目なら、ノバァだけでも生き残るんだ」
 そう言うとカズは、自分と火の球の間にあったノバァの身体を自分の背後に隠し、
ノバァを自分の身体で押さえつけた。今やカズの目の前に白い火の球があった。その
光は次第に強さを増し、カズは固く目を閉じた。
「カズ、何するのさ! 駄目だってば!」
 ノバァはカズの身体とエアロダインの壁に挟まれて、身動きができなかった。
 バンッ! バシッ! パチパチパチパチハチ・・・・・。
 操縦パネルの火花は、あちこちに飛火した。エアロダインの機内のいたるところか
ら、花火のように火花が飛び散っていた。
「ルル! ルル! 聞こえるか?」
 目をつむったままで、カズがルルを呼んだ。
「このままじゃ、このエアロダインは落ちるぞ。そうすると、僕だけじゃなく、みん
な死ぬ。君もノバァも、そして・・・。君の一番大事なお兄ちゃんもだ」
「カズ・・・。あんた、何言ってんのさ」ノバァは訳が分からなかった。
「お兄ちゃんも、死ぬの?」
「そう、シェン兄ちゃんも死ぬ。エアロダインが、このままじゃ落ちる。この火の球
がエアロダインを落とすんだ」
「カズ、この火の球はシェンが呼ぶんじゃ・・・。まさか・・・」
「イヤーーーーーッ!」
 シェンの手を離れて床に立ったルルの身体を、あの青白い燐光が包んでいた。
 同時に、光る球はカズの前から離れると、救助バスケットが置かれたドアの側の空
中でピタッと停まった。まるで何かを考えこんでいるように見えたが、再びそれは動
きだした。火の球は強烈な光と熱を出すと、ドアにぶつかった。
 恐るべき熱波が、エアロダインの機体側面のドアを、一瞬で吹っ飛ばした。
 壊れたドアから爆発の煙を吐き出しながら、エアロダインはヨタヨタと飛び続けた。
 機内から、白い火の球は消えていた。あとにはぐしゃぐしゃの機体側面の壁と、床
が残されていた。しかし、パチパチという火花は、まだ仕掛け花火のように床に散っ
ていた。
 カズとノバァは、火花の雨を潜り抜け、操縦席に走っていった。
 シェンは、ぐったりとしたルルを抱いて座っていた。
 ルルを取り巻いていた青白い燐光は、消えていた。
「大丈夫か?」カズが尋ねると、シェンがこくりと頷いた。
 突然、機体がぐらっと傾いた。ノバァが、よろめいてカズにぶつかった。
 ブイブイブイブイブイブイ。「プル・アップ」。ブイブイブ・・・。
 非常警報だ。機体はかなりの角度で降下していた。
「大変だ! 操縦系統がいかれた! 機体が降下してる」
「そこ、退いて! 邪魔だよ」
 ノバァがカズとシェンを操縦席から退かせた。ルルは操縦席に寝かせたままだ。ノ
バァはちらっと操縦パネルを一瞥すると、数個のスイッチを入れた。
「駄目。エンジンの出力が落ちてるわ」
「何か方法はないのかい?」
「機体を軽くすればいいさ。だけど、急に軽くなんかできゃしないよ」
「できますよ」操縦パネルのスピーカーからの声だった。
「私を放り出せば、一トン半は軽くなります。幸いに下は海岸線です。湾岸道路から
少し離れれば、私が落下しても誰にも迷惑は掛からないでしょう」
「だめだよ! だめ、ブルー。そんなことだめだ!」
「シェンおぼっちゃま。私はこういう時にお役に立つように、あなたのお側にいたの
です。今、お役に立たないで、いつお役に立つのです」
「ブルー、まだ高いよ。もう少し低い所からなら、落ちても大丈夫だよ」
 操縦パネルのスクリーンに映る地上の映像を見ながらシェンが言った。
「いえいえ、それまで待っていたら、みんな墜落してしまいます。長い間、お側に置
いて戴いて、大変ありがとうございました。いつまでも、お元気で。さようなら」
 ガクンという衝撃と同時に、エアロダインの降下率が落ちた。ノバァが操縦レバー
を引くと、機体は徐々に持ち上がり、次第に水平飛行に移っていった。
 操縦パネルのスクリーンに落下していく、目の覚めるような青い六人乗りキャデラ
ックが映っていた。ゆっくりとそれは降下していき、最後に海岸線を走る湾岸道路か
ら百メートルほど離れた所に落ちると、爆発した。
 ブルーの燃える炎が、既に日が落ちた海岸を赤々と照らし出していた。
「ブルーーーーーーーーッ。ブルーーーーーーッ・・・・・」
 シェンはそのスクリーンの上につっぷした。
「ブルー。可愛そうに・・・。あたし達を助けるために・・・」
 ノバァは操縦レバーを操りながら、ポツリと呟いた。
「サイコ・ブラスターはシェンじゃなく、ルルだったんだ。シェンは弱いテレパシー
による感応力で、ルルのサイコ・ブラスターの力を与えられていたんだ。そして、そ
のサイコ・ブラストはシェンの生命エネルギーを消費していたんだ」
 操縦席で横になったままのルルの顔は、真っ赤で息苦しそうだった。ルルは高熱に
うなされていた。ノバァが、額の汗をそっと拭ってやった。
「サイコ・ブラストはルルでさえ自由に使えない。でも周りの人間がその力を使って
しまう。さっきの病院の屋上での撃ち合いの最中に、兵士を襲った白い火の球。あれ
は僕の潜在的殺意がルルに働きかけて、呼んだんだろう・・・。この子達は、周りの
人間の本能を実現していただけなんだ。ひょっとしたら、あの玩具屋でヒットマンを
殺した火の球も、僕とノバァが呼んだのかもしれない・・・」
 カズの言葉にノバァは、唇を噛み締めて聞いていた。

−−−−−−−−−−−(TO BE CONTINUED)−−−−−−−−−−




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