AWC ユミアウラ創生紀 第3話<炎の一族 カセイ> (4 舞火


        
#1357/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (CGF     )  89/ 1/16  17:56  ( 95)
ユミアウラ創生紀 第3話<炎の一族 カセイ> (4 舞火
★内容

 あの炎は『聖なる石』でできた鞭が、直火による『力』とカセイの血液に貯えられて
いた『力』とを浴び、『力』が飽和状態となって爆発した結果、生じたもの。
「アポローンがあの炎を?」
「さようでございます」
「そう」
 アポローンが身代わりになってくれたんだろうか?
 再び疑問。
 なぜ?
「あなた様は神とずいぶん親しい間柄のようでございますが……」
 神官が問い掛ける。「オリンポスの方でございましたか?」
 それは当然の疑問だろう。
 そして、それこそ恐るべきこと。
「いや」
 顔をそむける。
「オリンポスとは関係ない。あたしは人間だから」
「はあ」
「しかし、すばらしい闘いをみせてもらいました」
 村長はやや興奮気味。涙を流さんばかりだ。
「英雄の名にふさわしいもの。神が祝福されるのも無理はありません」
 祝福?
 カセイは心の中でわらう。あざけったわらい。
「猪は間違いなく死んだのか?」
「骨が残っておりました。間違いなく」
「あの猪には散々被害を受けておりましたが、これで少しは安心できます」
 少し……。
 カセイはその単語を聞きとがめ、疑問の視線を送った。
「少しということは、まだ何かしらの危機がこの村にあると?」
 その問に村長は困ったように神官と顔を見合わせた。
「聞かせてほしい」
 再度のたのみにしぶしぶ口を開く。
「じつはあの猪とは別にもう一匹猪がいるのです。体長もあの位。ただ違うのは、毛の
色で、茶系統の、普通の猪と同じ様な色をしています。力も互角といえます。この二匹
が年に数度、村を襲っていたのです」
「あの猪が、その内の一匹という訳か」
「はい」
 あと一匹。
 カセイの脳裏にあの漆黒の猪が浮かぶ。凄まじい気。カセイの腕を傷つけた大きな牙。あれと同じ奴が、もう一匹。
 カセイの心に一つの決心が浮かぶ。
 二日。
 腕を動かすなと言った。二日。
「で。アポローンはどこに?」
「あの方は御帰りになられました」
 神官がうやうやしく答えた。「あなた様をよろしくたのむ、と」
「おお。おお。そうでした。お疲れのところ申し訳ございません。長くお邪魔をしてし
まいましたようで。ごゆっくりお休みください」
 二人は、うやうやしく礼をし、静かに部屋を出ていく。
 カセイはそれを見送り、ほおっと大きくため息をついた。
****************ΑΦΟΛΛΩΝ****************
 がさ
 また一つ茂みをかきわける。
 この山ってば、こういった茂みの部分が多い。ってことは奴の隠れる所も多いってこ
とで。しかも。
 辺りを見回す。
 何だってんだ。この骨の山は。
 あっちこっち転がってる。
「ちっ」
 舌打ち。
 猪を追って殺された狩人達の骨って訳だ。しかも、どんどん増えてる。
 他の村や町から雇われた狩人はほとんど帰って来なかったっていうし。哀れな犠牲者
ってとこか。
 あの、猪の仲間、に。
 あの猪。三日前の出来ごとがはっきりと脳裏に浮かぶ。
 あたしの左腕を傷つけた、あの牙を。
 まだ痛む。傷はなんとか塞がったが、折れてた骨はどうしようもない。キンセイの薬
は傷に良く効くが、それでも二日では全快にはほど遠い。また広がるかも知れぬ。
 ちょっとした後悔。
 でもじっとしてられない。
 いつ奴が村を襲わんとも限らない。まして、一匹が倒された以上、それを知った猪が
どういう行動をとるか。
 警戒か復讐か?
 判らぬ。
 警戒して引き篭ってくれてるなら、良い。が、復讐心に燃え、再び村を襲ったら……。村は……。
 どちらにせよ。
 あたしは決心したんだから。
 奴は倒す。
 ユミアウラの炎の一族の名において。
 足が獣らしい骨を蹴飛ばした。頭蓋骨が完膚なきまでに砕かれ、土と同化していた。
 人の骨も。ぼろぼろになった弓。折れた剣。
 がさ
「!」
 わずかな音がした。
 十メートル。風上から臭いが来る。忘れもしないあの臭い。獣の。
 ふつふつと煮え焚ぎる怒り。強い。
 それは地の底から湧き出るマグマのごとく理性を覆って行く。理性はそれでもあがら
い、浮きつ沈みつ、あたしを制御しようとする。今にも途切れそうな理性の糸は、思っ
たよりの丈夫さを持って、あたしを支えていた。
 それは長い時。
 けれど、一瞬。
 唐突に。
 唐突にマグマは冷えた。理性がゆるやかに感情を押さえ込む。
 ほんの一瞬のあがらい。
 闘いとは決して感情的になってはならぬ、モノ。            <続き>




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