#1252/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE ) 88/11/14 21:52 ( 98)
トゥウィンズ・2 七章 ( 2/ 3) (37/43) あるてみす
★内容
そして、健司達の部屋でトランプ。ドボンやブラックジャック、セブンブ
リッジ、大貧民なんかをやってたら、あっという間に時間が過ぎて、すっか
り遅くなってしまった。
「お休み。お前達も、いい夢見ろよ。」
「お休みなさい。」
麻里ちゃんと一美と一緒に隣の部屋に戻って、そのまま布団にもぐり込む。
結構、足なんかがだるくて疲れてるから、気持ち良く眠れそう……。
明るい日差しの中、真っ白なドレスを着たミコちゃんが笑いながら走って
行く。
僕もミコちゃんと一緒に走る。
広々とした花畑の中、ミコちゃんと一緒に走り回り、そして花の中で転げ
回って大はしゃぎ。
ポカポカとした陽気の中、暑くもなく寒くもなく、走り回っても汗が出な
い。
柔らかな風が頬を撫でていき、ミコちゃんと二人、とっても幸せだった……。
「博美、博美! しっかりして!」
ふと誰かに呼ばれたような気がして辺りを見回すと、いつの間にか周りは
花畑ではなかった。
そして、急にどこかへ落ち込むような感じがして、それと共に息苦しさを
覚える。
「う……。」
何となく息を漏らすと、そこで目が覚めた。
「博美、しっかりしてよ!」
一美が僕の体を抱いて、必死になって僕の頬を叩いている。
僕は目が覚めているはずなのに、とっても息苦しい。
必死になって息をしようとしていると、目の前に白いものが漂っているよ
うに見える。
「くっ……。」
声にならないうめき声をあげて、動かない手足をバタつかせようとする。
必死で動こうして一層息苦しくなる。それでも、悪戦苦闘していたら、何
とか手足が動くようになった。で、一瞬、力を抜いたら、また手足の動きが
止まる。
や、やばい! このままでは本気で死んでしまう。
苦しみの余り、本気でそう思って、また手足を動かそうとする。目の前に
見える白いひらひらは、まだしっかりと存在している。
ピクッと指先が動いた。と、思ったら、また動かせなくなる。
そのうち、幻聴らしいものが聞こえてくる。女の子の笑い声のようなもの
が、耳の中で鳴り響く。
そして、しだいに意識が朦朧としてきて、手足に力が入らなくなる。
完全に気持ちや感情も麻痺してしまい、死にそうな恐怖心なんかなくなっ
て、手足を動かす気も失せる。
「ちょっと、博美、しっかりして。博美ってば!」
誰かが体を揺らしてるらしいけど、全然そんなこと気にならない。
「なーに? どーしたの?」
「あ、麻里、お願い、健司と康司、呼んできて。」
「えー、なんでよぉ……。眠いのに……。」
「早く! 博美の様子が変なの!」
そういった声も段々聞こえなくなっていって、それとともに目の前が少し
づつ明るくなり、また花畑が広がった。
「キャーハハハ……。アハハハハ……。」
いつの間にか、またミコちゃんと一緒に花畑の中を走り回っていた。
二人とも息が絶え絶えになるまで走り回り、花のベッドへと倒れ込み、転
げ回る。
そして、花の中で寝ころんで一休み。
「ねえ、博美。いいこと教えてあげようか。」
「なーに?」
「あのね、健司くんのことなんだけど。」
「健司のこと?」
「そう、健司くんのこと。あのね、健司くん、博美のこと好きなの知ってた?」
「え? えーっと、まあ……その……なんと言うか……。」
ミコちゃんはクスッと笑うと、
「ごまかそうったって駄目よ。あたくしは知ってるの。博美も健司くんのこ
とが好きだってこと。」
「へ? まさかあ。そりゃ、確かに健司のこと嫌いじゃないし、まあ、好き
って言えば好きだけどさ、でも、それって友達としてだよ。中学のときから
仲良かったから。」
「そうね。表面上はそうかもしれないわね。でも博美自身は気付いてないか
もしれないけど、本心は違ってきてるはずよ。いくら中学校時代のことがあ
るからって、変にこだわることないの。昔のことなんか忘れて、もっと今の
自分に正直になりなさい。」
「昔のことって……。ねえ、ミコちゃん、昔の僕のこと知ってるの?」
「ふふ、そんなことはどうでもいいの。とにかく忘れちゃだめよ。自分にも
っと正直にね。自分の本当の心をしっかりと見つめてみて。」
「本当の心って……。」
「今はまだ判ってないかもしれないわね。でもね、博美。あなた、本当は健
司くんのこと、好きになってるのよ。いい? いつまでも昔のことなんかに
こだわってちゃ駄目。」
そう言うミコちゃんの姿が、だんだん薄くなっていく。
「ミコちゃん……。ミコちゃん!」
「ちゃんと見つめ直してみて。自分の心を。そして、健司くんのことを……。」
そう言いながら、ミコちゃんの姿が見えなくなっていった。そして、言葉
の最後の部分だけが頭の中に残る。《……あなた、本当は健司くんのことを……》
「でも、あたくしのことも忘れないでね……。」
最後に、かすかに、そういう声が聞こえ、そしてミコちゃんは消えてしま
った。
「ミコちゃん。ミコちゃん!」
慌てて大声で呼んでみたけど、答えは全くない。ただ、微風が頬を撫でて
いくだけ。
そして、急に目の前がブラックアウトした。
平衡感覚がなくなって、そのままどこかに引きずり込まれるような感覚。
同時に、頭の中で「健司くんのことを」という言葉が反響している。
「ちょっと、ミコちゃん。どこ行っちゃったの?」
慌てて叫んでも、返事はない。
「ねえ、誰もいないの?」
−−− まだあるよ −−−