AWC トゥウィンズ・2 七章 ( 1/ 3) (36/43)  あるてみす


        
#1251/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE     )  88/11/14  21:46  (100)
トゥウィンズ・2 七章 ( 1/ 3) (36/43)  あるてみす
★内容
七章  再び海へ

「おい、本当に大丈夫かよ。」
 憔悴して体力も落ち、フラフラになっていた僕は、それでも何とか自力で
電車を乗り継いで海にたどり着いた。健司は、危なくて見てられないってい
う風情だったけど、手は借りずに済んだ。
 民宿に着いて部屋に入り、麻里ちゃんと一美と三人で窓辺に座って海を眺
めていた。真琴、茂、健司、康司の四人は隣の部屋で一休みしてる。
 そろそろ八月下旬だというのに、波は穏やかで、静かな波の音が浜風に乗
って聞こえてくる。
 暦の上では秋だというのに、空には夏の入道雲がしっかりと居座っている。
 日差しも、前に海に行ったときよりは穏やかな感じになっているものの、
それでも結構厳しいものがある。まともに外にいたら、すぐに日焼けしてし
まいそうだ。もっとも、すでに小麦色になってるから、さらに焼けてもそれ
ほど痛まないと思うけど。
 海からの風は心地よく、サンサンと降りそそぐ強い日差しと青い空、白い
雲、静かな波の青い海。
 窓辺にもたれかかり、腕を枕にして、ついウトウトしてしまう。と、再び
襲ってくる息苦しさ。
「うっ!」
 運良く、体がすぐに動いたので、慌てて飛び起きたんだけど、つい冷汗が
流れる。
「なーに、またなの?」
 ハアハア言いながら冷汗を拭う僕を見て、一美が心配そうに言う。
「なーに? 博美、どうしたの?」
 事情を知らない麻里ちゃんは不思議そうな顔をしている。
「この間からね、博美、ひどい金縛りに遭ってるのよ。それで睡眠不足で憔
悴しちゃってるの。今もウトウトして金縛りに遭いかけたみたいね。」
「へえ。大丈夫なの?」
 麻里ちゃんは心配そうな顔になる。
「うん、何とか今のところは持ってるけど……。」
「だけど、何か、全然良くならないみたいね。」
「でもまだ来たばかりだから……。」
 ここでも金縛りに遭いそうになったことで内心ガックリときてはいたが、
ぼんやりと景色を眺めていると、何となく安心してくる。
「よう、そろそろ泳ぎに行かないか?。」
 すっかり水着に着替えた健司達四人が入ってきて誘ってくれる。
「僕はいい。麻里ちゃんと一美、行ってきたら?」
「博美、お前も来いよ。そうやってぼんやりしてんのが一番いけないんだぜ。
少しは体動かした方がいいんじゃないか?」
「うん……。」
 少し待っててもらって、僕達も水着に着替え、一緒に外に出る。
 砂浜の波打ち際で、麻里ちゃんと一美は大はしゃぎ。麻里ちゃんは健司に
まとわりついてるし、一美はひざまで海につかって康司に水をかけたりして
る。
 康司も一緒になって水をかけあいながら、じゃれあうようにしている。
 よく、あんな元気あるなあ、なんて思いながら、砂浜に座ってボケッと見
てたら、
「ひ・ろ・み。」
 いきなり、一美がパッと水をかけてきた。
「わっ! 冷て!」
 僕は、その水を頭にモロにかぶって、肩から背中にかけて濡れる。一緒に
いた真琴と茂も濡れた。
「やったなあ。」
 僕も海に入って、寄せてきた波頭をすくって、その水を一美にかける。
「キャーハハハ……」
 一美ははしゃぎながらそれを避けて、またやり返してくる。
 それに康司も混じって、一美と一緒に水をかけてくる。と、皆も混ざって
きて一緒に水をかけ合い始めた。そのまま、だんだん深いところへ行って泳
いだりもした。

「ふう、疲れたよ〜。眠いよ〜。」
 睡眠不足で泳いだ僕は、完全にグロッキー。夕方とはいえ、まだかなり日
が高いのに、クタクタになっている。
「こんだけ動き回って疲れてさ、それで眠けりゃ、明日の朝までぐっすりだ
な。」
 本当に、素直に朝まで眠れるかどうか自信はなかったけど、それでも健司
の言葉を聞いてると、大丈夫なのかなっていう気になってくる。
 ま、久々に動き回って疲れたし、そうだね、きっと今晩はぐっすり眠れる
よね。

 夕方、宿に戻って御飯を食べたあと、昼間に散歩がてら買いに行った花火
を持って、砂浜に行く。
 ロケット花火や打ち上げに歓声を上げ、ドラゴンのあっけなさに文句を言
って、ネズミ花火から逃げ回ったりしているうちに、あっという間になくな
ってしまった。
 最後に残った線香花火。これって、何かすごく情緒があるんだよね。
 束になった花火を一本づつにバラして、しゃがみ込んで風を避け、そして
火を付ける。
 先の方がシュワッと燃えたかと思うと、溶岩のようにオレンジ色に輝き始
め、それが丸くなって、その火玉から少しづつ火花が散り始める。
 その静かなにぎやかさが、一層、ものの哀れさを感じさせる。
「博美、お前さ、どうでもいいけど、もう少し、ちゃんと座れよな。俺を楽
しませてくれるってんなら止めねえけどよ。」
「へっ?」
 ついつい昔のくせで、うんこ座りをしていた。正面にいる健司からは、ス
カートの中がまる見えの状態。
 慌てて座り直して、ついでにスカートも直すと、その揺れで、火の玉があ
っさりと落ちた。
「あーあ。」
「ドジ。」
 健司がそう言ったとき、たぶん健司自身も揺れたんだろう、火の玉が落ち
た。
「人のこと、言えないじゃん。」
「うるせ。」
 健司は、そう言いながら、また、次の線香花火に火を付ける。

 線香花火も完全に終わって、全部の花火の燃えかすを片付け、宿に戻る。

−−− まだあるよ −−−




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