#1228/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE ) 88/11/ 5 10: 5 (100)
トゥウィンズ・2 二章 (10/11) (16/43) あるてみす
★内容
家に帰って玄関を開け、「ただいま」の声も上げないうちから、お袋が飛
んできて、
「博美、ちょっと足を見せてみなさい。」
少し強い口調で言う。
「えっ? 何で?」
帰ってきた途端の、お袋の勢いに押されながら、思わず右足を押さえてし
まう。
「警察から連絡があったのよ。お前、不良相手に大立ち回りを演じたんだっ
て?」
「へっ? 大立ち回り?」
「なんか、そんなこと言ってたわよ。で、その時に足に怪我をしたんだって。」
「大立ち回りなんてしてないよ。」
そして、余計に心配するかな、とは思ったんだけど、事件について少し詳
しく話す。
「でね、医者の話しじゃ、大したことないって言ってた。傷口が長いから、
こうやって大袈裟に包帯なんか巻いてるんだけどね。傷は残んないだろうっ
て。」
「だけど、お前、相手はナイフ持ってたんでしょ? 一歩間違えたら、死ん
でたかもしれないってことじゃない。事の重大さが判ってんの?」
「うん。それは、さすがに健司にも怒られた。無茶するなって。」
「本当よ。これじゃ危なくて、どこにも行かせられないわね。」
「えーっ? 冗談じゃないよ。」
「ええ、冗談なんかじゃありません。」
「だって、折角約束したのに。」
「約束って?」
「今度、ミコちゃんの家の別荘に招待されてんだよ。今日、海に行ってきた
連中で行こうっていう話になってんだ。」
「じゃあ、健司くんや康司くんも?」
「もちろん一緒だよ。あ、部屋数はたくさんあるから、泊まる部屋は別々だ
って言ってたけど。」
「そう。なら安心ね。本当に無茶しないって約束できるなら、今回は行って
もいいわ。あ、夏休みの課題もあるんでしょ? 忘れないようにしなさいね。」
「はーい。」
ふう、やれやれ。まったく危ないとこだったぜ。だけど、健司や康司が一
緒の方が安心できるなんて、お袋の奴、余程、僕を信用してないんだな。
ったく、もう。
次の日、僕は熱を出してしまった。いくら上着を羽織っていたとはいえ、
それは短時間だったし、そのあと長い時間、ずっとビキニ姿でいたのがいけ
なかったのかもしれない。
久しぶりに三十九度近い熱を出し、夏だというのに厚めの布団を掛けられ、
氷枕に氷嚢という重装備で、体中、汗だくになりながら寝かされていた。
小さい頃からのお馴染みで、何かあるとすぐに診てもらうことにしている
近くの医院の先生が来てくれて、注射を射ってもらったあと、薬を飲んで寝
てた。
そのあと康司と健司も見舞いに来てくれて、
「おい、大丈夫かよ。」
なんて言っては、タオルで汗を拭いてくれる。
「ったく、まいったぜ。」
そんな言葉も頭が重いせいで弱々しい感じになる。熱のせいで下の前歯が
浮くような感じが続いていて、決してお世辞にもいい気分とは言えない。
「少し眠れや。俺がついててやるからさ、な?」
「ん……。」
健司の言葉に甘えて、少し眠る。こういう時って不思議といくらでも眠れ
るんだよね。
康司と一美は、一美の部屋で既に二人の世界を作ってるだろうから、健司
にしてみれば他に居場所がないんだろう。枕元に座って、時々、汗を拭いて
くれる。
いつしか僕は完全に眠ってしまった。眠ったとはいっても、完全に深く眠
れるわけじゃないから汗を拭いてくれるたびに、少しだけ意識が戻ってきて、
苦しいながらも少し楽になったように感じて、再びまた少し深い眠るにおち
る。
何度か顔や首筋、ねまきの襟元あたりまで拭いてくれてたらしい。そのた
びに夢うつつの状態をさまよっていた。
そして、どれくらい経ったんだろう。ふと気が付くと口になにか柔らかい
ものが触れてきたような感じがした。だけど特に違和感も覚えず、また少し
深い眠りに落ちかけた。
と、なにやらドアを叩くような音がして、少し意識が戻り、それと共に口
に触れていた柔らかいものが離れる感じがして、そのあと顔や首筋を拭かれ
ているのが判った。
そして、ドアが開く音がして、
「健司くん、様子はどう?」
なんて声がする。
「え? ああ。ちょっと苦しそうだけど、よく眠ってるみたいだ。」
そう答える健司の声が聞こえる。そして、一美が枕元に寄ってくる雰囲気
があって、
「わあ、すごい汗ねえ。」
なんて言ってるのが聞こえる。
「ああ、見てくれよ、このタオル。二本目なんだけどさ、もうぐしょぐしょ
だぜ。」
「やだ、ほんとだ。」
そこで、完全に意識が戻ってきて、目が覚める。
「あら、目が覚めた?」
「あ、一美か。」
「お、おい、気分はどうだ?」
そう言う健司の顔が少し赤い。
「ありがと。さっきよりはだいぶ楽になったみたいだ。ところでさ、健司、
なんか顔が赤いみたいだけど、大丈夫? 僕の風邪が移ったんじゃないの?」
「い、いや、大丈夫だよ。こんな程度の風邪にやられるようなヤワな体して
ねえから。それよりさ、お前の方がまだ大丈夫じゃないんだろ? もう少し
眠ったらどうだ?」
「いや、かなり汗かいたみたいだから、ちょっと着替えたいな。」
「じゃあ、着替えを用意してあげるから、ちょっと待ってて。」
一美がそう言って、替えの下着類やねまきの用意をしてくれる。
「じゃあ、俺達、ちょっと外に出てる。」
「お願いね。」
一美は、二人がドアの外に出たあと、僕を起こして着替えさせてくれる。
−−− まだあるよ −−−