#1180/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (UCB ) 88/10/10 17:53 ( 77)
手記>センターラインとお友達 おうざきあかん
★内容
その日は雨がふっていた。当然ながら道路は滑りやすくなり、視界はきかなく
なる。 早い話、その日はバイクなんぞに乗るべきじゃなかったのである。と言
ってももう遅い。僕はこうしてベッドの上にいるのだから。
1988年9月27日。僕は、会社から早めに帰り、川又書店水戸駅前店にR
Z50を向けた。バイクを走らせれば10分ちょっとの距離である。知っている
人は知っていると思うが、ここにはソフトベンダー「タケル」と称するパソコン
ソフトの自動販売機が設置されている。それが目当てだった。
しかし、僕の希望するソフトは入っていなかった。すごすごと僕は帰途につく。
事故は、自宅近くで起こった。
雨と闇で見通しがきかなかったために回避が遅れた。道の端にとまっていたバ
ンを軽やかによけた・・・と自分では思ったのだが、そうでない事は、ベッドの
上の自分自身が身をもって証明している。
シーンがいきなり変わった。(シーンをかえようぜ!ヘイ! ・・・楽屋おち、
失礼)さながら互いに関係のないフイルムをつないだように。
空白の一瞬が過ぎると、僕の体は濡れた路面をあおむけになり、足から滑って
いた。すさまじいスピ−ドで移動する道路と顔の間に脱げかけたヘルメットがは
さまれている。止まろうとしても止まらない。スピードに耐えきれず、靴が脱げ
た。
<<<なんてこった! 交通事故を起こしてしまった! たくさんの人に迷惑
をかける、新聞にのる、ああどうしよう>>>
そんなつまらない事を考えていると、視野にセンターラインが入ってきた。
<<<あー、センターラインまで飛ばされたのかー。これ以上は飛ばされたく
ないなー。ひかれるかなー>>>
幸い体はセンターラインにひっかかるようにして止まった。
<<<きっとチュウモクされてるなあ。恥ずかしいから、早々に退散しよう>
>>
しかし意に反して手足はまったく動かない。周囲の車が徐行している。人の気
配がした。
「大丈夫か」「ちょっと、手を貸して」「そっち、そっち持って。足持って」
「どこを怪我したの」「がんばって」「今、呼んだから」
バイクがどうなったのかなぞ、もはや知るよしもなかった。バイクは距離にし
て4−50メートル、そのまま対向車線まで滑っていき、対向車に衝突寸前で避
けられた事を聞かされたのは、数時間後のベッドの上である。
雨が降っていた。とりあえず、僕は近くのラーメン屋とおぼしき店に運び込ま
れた。コンクリートの床に横たわったまま、ゆっくり、ゆっくりと手足を動かし
てみる。手指は動いたが、脚はまったく動かない。左手のグローブを取ると、手
首に硬球大のふくれがあった。ため息が出た。
激痛とそれ以外のものが、僕の中を螺旋状にかけめぐって止まらない。固体の
ようなサイレンの音が大きく近ずいてきて、手をのばせば届く距離で止まった。
救急車の中に横たわっている時間は異様に長かった。近くの総合病院ではなく、
整形外科まで運ばれたのだ。
治療の前に、身元の確認がされた。連絡先を聞かれて、困ってしまった。僕は
一人暮らしで、故郷は日本列島の半分ほど向こうにある。早い話、出稼ぎなのだ。
しかたがないので、勤務先を言った。まだ残業している人がいるはずだ。
治療がなされ、僕の左腕と左足はミイラのようになった。白い包帯を目にして
安心した途端、体ががたがたとふるえはじめた。
夢ならさめてほしかった。
バイクはとりあえず、現場近くの同僚のアパートに預ける事になった。状況は
というと、「めちゃめちゃ」という以外に表現の方法がないという。幹線道路で
あり、時間帯を考えると、負傷者が僕一人、それも骨折もせず終わったというの
は、奇跡やら偶然やらのおかげらしい。
僕の体は回復に向かいつつある。だがバイクはもう回復する事はない。廃車に
するのである。直す方が新車を買うより高くつく、と言われては、どうにもなら
ない。
バイクはしばらくお預け、通信も永遠にとは言わないが断念しなければならな
い。入院費と、傷をつけたバンの修理代の支払いが待っている。
廃車の前に、バイクのあわれな姿を写真におさめておこうと思っている。バイ
クが健康だったころの写真もあるから、アルバムに並べて貼ってやれば、良いい
ましめになる事だろう。
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AWCのみなさん、いろいろと心配をおかけいたしました。おうざきは今回の
事故のため、この手記を最後に、一時PC−VANに別れを告げる事にしました。
AWCOP2の座をたまわりながら、問題を起こすばかりで解決もせずに去る
のは、じつに心苦しゅうございます。
でも、くじけずにこれからも頑張って生きていく所存です。いつの日か、また
会いましょう。
みなさん、ありがとう。ごめんなさい。さようなら。
おうざきあかん