AWC ○繋河高校文芸部!!○【5】 ひすい岳舟


        
#1113/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (FEC     )  88/ 8/12  14:30  ( 97)
○繋河高校文芸部!!○【5】          ひすい岳舟
★内容
ないですか!」
「えっ………でも、3年生だから………」
「だからどうしたんです、私は社会観察部の調べものをしているんです。」
「………進路は?」この時期に部活動をしていることが彼女には理解出来なかった。
「北北西とでも答えておきましょうか。」どうして誰も彼もが同じことを聞くのであろ
う。橋本や西山も同じように言われているのであろうか?
「そう………」彼女はあっ気にとられた。「ま、いいわ。あ、あの人に言っておいて。
近々、文芸部を調査するって。」
  「おい、藤岡さん。」江口は険しい口調だった。「もう、いい加減にしろよ。お互い
そういうことをして、何の得があるんだ?」
  「私は生徒代表委員会文化部管理長です。各部に対しての権限はある程度与えられて
います。」
「もうちょっと、大人だと思っていたぜ。」
「残念でしたね。」彼女は再びひきつった笑いを見せた。

  夕暮れの中、二人はゆっくりと原っぱを歩いていた。残光が街中をオレンジ色に染め
ているのがちょうかん図のように見えた。海にはキラキラとした輝きと、黒々としたう
ねりが存在していて、多少きつめのコントラストであった。
  「映画って面白いのね。」
「いやぁ、今日はお恥ずかしいかぎりですよ。熱でビデオがイカレてしまうし………」
「修理にだすんでしょ?」
「出しませんよ。古いですし………それに」グラサンは足を止めた。あちこちで虫の音
が聞こえていた。「学校からおりませんしな。」
「あれって、学校のでしょ?」
「文芸部、社会観察部、映画研究部にあるワードプロセッサーやVTR、モニタ、コン
ピュータ、カメラは部員達個人が持ち込んでいるものです。学校からおりる予算はこれ
ならねぇほうがいいってなくらいの、もんですよ。」
「ふぅ〜ん……」
「今日ぶっ壊れた奴は、先代の部長がおいていったものです。よく、怒られたっけなぁ
〜。」西山はしみじみと言った。
「かわいそうね。」米田はこんなに冷遇された部があったことを初めて知った。
「でもいいんですよ。」
「もう、また、ヤブレカブレになって。」
「いや、違うんです。」西山は彼女の正面に立った。「もともと、文芸とか映画とか論
文だとかってぇものは、あったかい環境でやるものではないんです。こういったやりず
らさから発生するものなのです。ですから、それほど………」
  「ごめんなさいねぇ。」
「いえいえ。」
  米田は西山の横顔を見れたな、と思った。

  それまでスポンサー廻りをしていた山崎が学校に帰ってくると、すでに橋本が部室に
居た。橋本だけでなく、麻沼もいたので少々びっくりした。
  「おう、山ちゃん、御苦労さん。」
「御苦労さんじゃないですよ、先輩。」山崎は麻沼をちらちら見ながら言った。彼女は
うつむき、鼻をすすっていた。「大変だったんですからね。」
「悪かった。あとで聞くから、ちょっと外してくれないかな。」
「は、はい。じゃ、映画研究部に行ってくるとします。」
「済まないね。」
  彼は驚いた。橋本までもが目に涙をためていたからだ。

  江口は自転車をしゃかりきにこいでいた。もう、日が落ちて黒いベールが空気にかか
り始めていたが、ダイナモをつけていなかった。彼は街を抜けると、岬の方へとつっ走
った。
  右側に反対側の岬が見え始めてきた。凄まじい崖っぷちである。あの上に繋河高校が
あるのであるが、ここからでは見えない。ときどき揺れる明りがその存在を示してはい
たが。
  ちきしょう!!
  彼はむしゃくしゃしていた。それがこの行動の原動力になっていたのだ。
  藤岡は何故橋本にいちいちつっかかるような事をするのであろうか。破局になったの
に対してのフラストレーションであろうが、それでは何の進展もないだろう。そういう
場合はどちらも悪い筈だ。しかし、橋本も彼女に対してはノーコメント一辺倒というの
もおかしいではないか………
  と、そのとき、前方に閃光が走った。その強光は闇の中から彼を弄り出した。彼は後
輪をスリップさせてしまい、その光すんでで止まった。江口は目に手を覆った。
  「あぶねぇじゃねぇか!」
  車に乗った男が怒鳴り散らした。そして、江口をたくみに避けてあっという間に去っ
ていった。瞬間だったが、その車のよこっぱらに『●●電力』という文字が見えた。
  再び闇が彼を包み込んだ。
  彼の中でたがが外れた。一気にそれは噴き出し始めた。何に、自己を失ったという訳
ではない。これまでに蓄積されたものが自然崩壊をし始めたのであった。それが彼の第
1声であった。
  「あぶねぇだと。あぶねぇのは、そっちだろうが!!」
  彼はライトに浮かぶ原子力発電所を指差した。

  「おぅ、山崎じゃあねぇか、珍しいな。」6時過ぎに部室に戻ってきた西山。「『下
にはいるかいね。」
「あ、どうも、お邪魔しています。………今、ちょっと。」
「何だい。」
「麻沼さんと話していまして………」
「ほぉ………」彼はわざと興味のなさそうに声を上げた。「おい、田代、ジュース買っ
てこいや。」彼は財布をぞんざいに投げた。
「はいはい………。ところで先輩、さきほどの女将とはどーゆー関係で?」田代は財布
を拾って叩いた。
「ばーか。」彼はにやついた。「弦楽部の米田さんだよ。」
「さすが、先輩手が早い。」
「え?西山先輩出来たんですか?」山崎も目を輝かせる。
「そんなんじゃねーよ。」
「しかし妙でしたよ。先輩、あの人に対しては優しいんですからね。」
「当たり前だ。初めて会った人間に辛くできるか。」
「それにしては………」
「フフフ」と、後輩の笑い声。
「いけすかねぇ野郎だ。とっとと、行ってきやがれ!」
「はいはい。」そう言って、田代はドアの向こうに消えた。
  西山は窓辺に寄ると、そこから僅かに見える原子力発電所をにらんだ。もうすでに彼
が生まれたときには建設が始まっていたが、完成始運転をし初めたのは5年前である。
  「けっ!」
.




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