#1109/1850 CFM「空中分解」
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○繋河高校文芸部!!○【3】 ひすい岳舟
★内容
「ただ、私的感情で動きすぎる。」
「いいじゃございませんの!!女なんてぇものはそんなもんだよぉ〜ん。大体わがまま
言わない女は気持がわりぃよ。」
「あいつは社会観察部部長だよ。そんなことは許されない。」
「そんなの、旦那の御前がカバーするんだよ。」グラサンは肱で突いた。
「何で?」
「何でって………出来ているんだろう、あの子と?」
「御前、なんかかんちがいしてないか?」
「これがかんちがいだったら、首くくってもいいね。」
「いいか、あいつは俺の後輩だよ。それが」
「いやぁ〜、おめでたいかぎりで。」
「馬鹿か〜」
「ま、御前さんが否定してもだよ、あの子はそう思っているに違いないね。ああ絶対に
ね。もうこの際だから、くっついちまえよ。」
「何いってんだか………ハッチャン助けてくれよ。」
「ニシヤン、霧島女子はどうなったよぉ〜」
霧島女子とは隣街にあるオジョーサン学校である。
「あんなの、目じゃねぇーよ。」
「ほほぅ、いいましたな。」江口が反撃に出た。「北川さんでしたっけ?いやぁ、御執
心のようでしたよ。」
「どうもいけねぇよ、ああいうの。やっぱり、付き合うとかそういうのって、すんなり
話せて、心が置けるという奴がいいね。」
「憧れと愛情は違うからね。」橋本がポツリと言った。
「その点、エグとあの子はいいコンビネェーションだよなぁ〜」
「話を蒸し返すな!!」
「話は変わるが、今日地震あっただろ?」
「ああ、それでえれぇ目にあったんだよ。電車が止まって撮れね−撮れねー」
「こっちもバスのダイヤが乱れてね。」
「俺はこの部屋にいたんだけれども、ここに大きな地震があったらオジャンだろうな。」そう言って彼は窓から外をにらんだ。「あの、バケモノがある限りね。」
「ああ。」
「ここはプレートがぶつかりあっている地域だから、これから郡発地震になる可能性も
ある。」江口は菓子を摘んだ。「そうなったら、止めなければ危ないぜ。」
「こんなところに建てるのがわりぃよ。」
「いや、ニシヤン。あんなものはどこにたてても悪いんだ。」
「確かに………。」
「恐ろしい事だ………」
明け方近くになって西山は帰っていった。山崎は毛布にくるまって寝息を立てている
橋本と江口は窓に越しかけて、明けゆく空を眺めていた。
「こんなときにこんなことも何なのだが。」
「ん?」
「麻沼さんの気持、分からなくはないんだ。」
「だと思った。」橋本は縁無し眼鏡をかけた。ぐっと、世界が鮮明に見える。「だって
エグが人の事に気付かないことなんて、ねーもんな。」
「初めは間違いだろうと思った。今はむりやりでも、否定しようとしているんだ。」
「君にその気がなくって、知り合いだとかそういったレベルのなれあいや、同情心から
だったらくっつかないほうがいいよ。」
「いや………その、俺も………そういった気分になっていることはなっているわけだ。」「そういった気分?」
「文芸部だろう、察しろよ。」
「つまり、好きだというわけか。」
「御前なぁ、ほかに表現方法あるだろう!」
「彼女の感情に対して、君は音叉のごとく共鳴するものがある、というわけか。」
「そう、それでいい。」
「つまり好きなんだろ?」
「だ・か・ら!!」
「じゃあ、迷うことはない。」
「………こわいんだよ。」
「こわい?」
「人間を観察する部をやってきて、人間のことはよくしっている。それ故に自分が彼女
と破局したときのことを考えると………それに、言いにくい事なのだけれども………」
「………何。」橋本は江口が言わんとしていることがよく分かった。
「ハッチャンと………藤岡さんのこともあるし、な………」
「………」
「ごめん。古傷に触ったな。」
「………なぁ〜に。」彼は寂しく笑った。「合わなかっただけのことさ。」
「それがこわいんだ。」
「こわがることはないよ。君らは絶対にそうならないよ。」
「どうして保証できる?」
「僕らは努力しなかったのさ。君らはきっと努力するだろう。」
「努力?」
「お互いのことを分かろうとすることさ。知り合えばそれでいいと思っていたんだ。」
そのとき、光の筋が街を輝かせ始めた。それは学生2人の体にも当たり、快く温め始
めた。彼らはしばし無言で、この光景に心を奪われた。
西山は起きるとすぐにビデオテープを持って弦楽部に行った。今日の撮影は田代に任
せたのだ。弦楽部の元部長米田さんがいたので、グラサン男は内心にやりとした。
「あ〜、映画研究部の西山です。頼まれていた奴が出来たので持ってきました。」
「あ〜、貴方が西山くんといいうの。初めまして、米田です。」
「名前はしってますよ、何回も朝会で表彰されているからね。」
「それはそれは。」と、言って彼女は笑った。「ところで貴方、サングラスなんてかけ
てて怒られない?」
「気の持ちようでさぁ〜」
「え?」
「何言われたって、気にしなきゃーいいんです。」
「なるほどぉ、変わっているわね。」
「そうですか?」
「そうよ。」
「そりゃ、うれし。」
「え?」
「だってね、感性が勝負の世界なのに、並みの人間と同じだったら駄目でしょうが。」
「なるほどぉ、面白い人ね。」からっとした気質らしい。
「あれ?ところで3年でしょぉ。こんなところにいてもいいの?」
「貴方も3年でしょ。」
「まあね。でも、夏休みに入ってから家で寝たことはないぜ。」
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