#1072/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DGJ ) 88/ 7/ 7 21:28 (100)
「R.N.S.」<プロローグ8> Fon.
★内容
「Rpg.Novel.Story.」<プロローグ8> by 尉崎 翻
闇、闇、闇。
闇が身体を包んでいた。ねっとりとした感触が体全体を覆っていた。耐え難い感覚
。必死でそれを振り払おうとするが身体が金縛りにあったかのようにピクリとも動か
ないのだ。身体は水に流される如くゆっくりと動いていた、しかし方向が上なのかあ
るいは下か、左右かまるで判らない。ただ、闇に流されているということだけが感じ
とれていた。
声が出ない。まるで空回りするかのごとく。
回りの闇が突如身体を締めつけはじめる、もがいてももがいても解放されずむしろ
締めつける力が大きくなる。「「「そして
ゴキッ
身体のきしみが頂点に達し鈍い音が身体のあちこちから聞こえる。
脳天から足元までを突き刺すように痛みが走る。
やがて闇の圧力が身体を砕け散らし、肉片がバラバラに飛びかった。
「あ゛〜〜〜〜っ、 ってっ! いったぁ〜〜〜!!」
ティスタが起きたとたんに出した第一声。
前にも似たようなことがあったが、今回は多少違った。
悪夢にうなされ跳ね起きた瞬間に、額(ひたい)に何かが直撃したのだ。
両手で直撃した可所を押さえてなでる。たいしたことはなさそうである。が、何に
直撃したのか? 答えはすぐに出た。ティスタの隣でダグが同じように自分の額に手
を当てていたからである。
「いったいなによ! いきなり頭突きくらわして!」
「なんだと!」 負けじとダグも大声で叫び返した。「3度もの命の恩人にそりゃね
ーだろ! ウンウンうなされてるから心配でついてやっていたんだぞ!」
「‥‥‥そんなこと 頼んでない‥‥」
「‥‥もうちょっと素直になれんのか?」
グルッと周りを見渡す。建物の中ではない。外だ。周り一帯にはまったく人家らし
きモノは見えない。陽射しは案外強く、ティスタは木陰に寝ていたらしい。
「レルブから3日程離れたところよ」
後ろから声をかけられた。振り返ればレナがウマの手入れをしていた。長旅用のガ
ッシリとした体形の馬で全部で2頭。横にはリクトも立っていた。
「みっかぁ〜!?」
「そ、あなた3日も寝ていたわけ」
その時になって気付く。パックリと斬られた筈の太股と背中が全く痛まないのだ。
手で触ってみても異状がない。
「レナに感謝した方がいいな」 リクトが近付いて来る。「治癒魔法のお陰でこれだ
け速く治ったんだから」
「‥‥でも、背中の方の傷は、塞がりはしたけど痕は数年は消えそうにないけど」
すまなそうな声でレナがしゃべる。
だが、ティスタは特にショックでは無かった。むしろ、今まで大きな傷痕が無かっ
たのがおかしいのだ。戦士としての宿命である。
「‥‥‥ありがとう‥‥」
ポツリとしかしハッキリとした声で礼らしき言葉をつぶやいた。
「ん、 それじゃあ行きますか?」
ダグが馬のウマの引き縄を持つ。ウマには鞍がついておりレナがまたがった。もう
片方にウマは荷物専用らしく数個の荷物袋が縛り乗せてある。
「‥‥ちょっ! ちょっと、行くって誰が何処に!?」
「当然、きみとぼく達がだ」
後方からリクトが荷物運びのウマを引き連れる。前方のウマの鞍上からレナが振り
向く。
「すなわち、わたし達のチームが次の目標の場所へ向かうわけ」
「‥‥ッ!? あ、あたし このパーティに入るなんて一っ言も聞いてないわよ!!」
「ぼくらも言ってない」 と、リクト。
「だから お合いこで差引ゼロに‥‥」 と、これはダグ。
「なるわけないでしょ!!」
「あら、いやなの? ならば傷の治療代とるわよ」
レナがそのセリフの後に純金のフル・アマーがセットで1ダース程買える値段をサ
ラリと言う。
「‥‥払えるわけないっ!!」
「そう、じゃ。わたし達のチームの一員になってくれればロハにしてあげるわよ。あ、
それともこうでもいいな‥‥‥」
「それとも‥‥‥!?」
レナがチラリとティスタを見て微笑む。
「あなたの体で払ってもらうってのも、悪くないわね。あたしとベッドの上で、たっ
ぷりと一週間位‥‥‥」
「やだっ! 絶っっっっ対 やだっ!!」
両腕を顔の前でブンブン交差させてプルンプルンと首を横に振る。
「じゃぁ、仕方ないじゃない?」
そう言って前に向き直って歩き始めた。
「ま、運命だと思って諦めることだな」
ポンッとリクトがティスタの肩を叩き歩き始めた。
ティスタはしばらくそこでポケッと立ち止まっていたが、残された自分の荷物を持
ちあわててレナ達を追いかける。
「「「ま、退屈はしそうにない パーティね
後方のリクトに追いつき荷物ウマの背中に自分の荷物をドカッと乗せる。ウマがグ
フッンと荒く息を吐いた。
「ねぇ、あたしがチンピラ達にやられて気絶した時‥‥」
リクトがティスタの質問を先読みして答える。
「ダグだ。 あいつが投げナイフを放って君を斬り捨てようとしたチンピラの残りを
やっつけたらしい。ぼくは見ちゃいないがね」
自分の記憶に間違いがなければ「「「チンピラ達は一瞬に絶命した筈である。
するとダグは同時に数本のナイフをチンピラ達の急所めがけて投げ放ち寸分の狂い
もなく命中させたこととなる。
そうとうの腕であろう。
それにレナにしても‥‥‥リクトにしても‥‥‥
なにか‥‥言葉ではいい現わせないような なにか を感じる。
「‥‥ありがとう‥‥‥ダグ」
ポソッと今度は誰にも聞きとれないような声でティスタはつぶやいた。
と、前からチェッと舌打ちする音とパチッと指を鳴らす音が同時に聞こえた。
「どうしたのダグ」 と、鞍上からレナ。
「いや、さっきティスタちゃん と、 ぶつかる所が額じゃなくて、お互いにもうち
ょっと顔の下の方だったら‥唇と唇とで‥‥‥‥」
言葉はそこで途切れることとなる。ティスタの肩がわずかに震え次には行動をおこ
していた。ウマの上にあった荷物の一つを引っ掴む。
「前言てっかぁーーーーーい!!!」
おもいっきり叫び上げダグの後頭部へ投げつけた。鈍い音が響き渡った。
.....ともかく、四人の旅は今始まったのである。
<Fin>