AWC クライノスチビッチの話−2− WriteSta


        
#989/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (FEC     )  88/ 5/ 5   6: 6  ( 97)
クライノスチビッチの話−2−            WriteSta
★内容

  ガチャ。
  さて、何処まで話したかな。おお、そうそう、原子力発電までか。
  私達はコロニーまで足を運び調査を行った。古い文献に何か載っていないかとね。で
、ついに発見したのだ。1986年4月26日の新聞、よくもまぁ残っていたものだと
思うね!!、これが解答の序曲だった。
  あの日、ソヴィエト社会主義連邦の歴史の町、キエフに近いチェルノブイリという所
で人類最大規模−−−これは1986年当時の話として聞いてくれ−−−の事故が起こ
った。出力調整実験をしていて急にメーターが下がったものだから制御棒を上げてしま
った。しかし、内部では圧力が高まっていてしかも制御棒を抜いてしまった!その後、
僅か4秒で原子炉は吹っ飛んだという。これではどんな安全装置とて無理だろうね。
  しかし、その後の新聞を見てみるとどうも、これが致命的というデータは載っていな
いんだな。つまり、この原子力発電所事故で地球上の人類が大打撃を受けたとは、読み
取れなかったのだ。
  結局の所、やはり核かなと思ったのだが、私達は当局の発表を信じていない。人間、
一度疑い出したら最後、トコトンまで疑ってしまう。で、私達はあるシナリオを立てる
ことにした。
  もし、あの当時、世界各国がマスメディアに対して圧力をかけていればどうなったか
みるみるうちに数字は形を変え、情報は墨で塗り潰されるであろう。原爆ではないが、
それに近い状況が起こったのだから、時事問題だけで済まされることではない。
  当時いくつの原子力発電所があったのだろうか?おそらく数百基であろう。その中で
も大型の物が爆発を起こした。チェルノブイリは、アメリカ合衆国という環境基準が厳
しい所のレベルと同等のチェックを受け、当時かなりの強度な原子炉を使用していたと
いう。それが吹っ飛ぶくらいだ、かなりの死の灰が、高層まで上りたったであろう。地
球上空にはジェット気流というものがあるから、世界各国にその毒は散らばったに違い
ない。
  まず、ヨーロッパ。新聞でもかなり異変が起こっていることが書いてある。目の見え
ない牛、巨大化した葉、2つ頭の羊………。各国は食料販売を停止した。ここまでは、
書いてある。しかし………
  しかし、ヨーロッパの全土において放射能を被ってしまった食料があった。これをど
うしたか?処分したとは書いてあるがどのようにだ?そして、次の日あたりから降った
雨の中にある死の灰が入り込んだ農地はどうなったのか?
  どうやら、結論が出始めたようだね。
  君もぶっ続けで疲れただろう。お互い、飯にするとしようではないか。

  ガチャ。
  さて、続けるとしよう。
  死の灰と一口に言っても、そは様々なのであるよ。もちろん見えるわけでない。見え
るのもあるけれどね。ほとんど見えないといっていい。それがあらゆる食品に混じって
いたら………と、考えると恐ろしい。
  事実当時混じっていただろう。ヨーロッパ全土を支える食料なんてものはないし、コ
ストが嵩む。農家がまず倒れるだろう。政府だって金も策もない。農家としては不用に
なった作物は仕方ないとして再び作らねばならぬ。放射能タップリの土地でね。
  結局妥協しあった。一年後、取れたての野菜は店頭に並んでみんなの口に入った。し
かし、すぐ死ぬわけでないから騒ぎは起こらなかった。一方チェルノブイリでは裏工作
が進行していた。国連のIAEAという所が乗り出して、ソ連に調査書を書かせたのだ
がどうも都合のよいように書かせたらしい。IAEAというところは、マンハッタン計
画の者が菩提となって国連に設置されたというところ。原子力を推進する側にとってみ
れば困ることなのだ。で、各国新聞にはでただろう、チェルノブイリようやく沈静化、
と。
  今では調べるすではないが、きっと恐ろるべき事態が起こっていたのだろう。人々に
は“濃縮”が始まっていた。毎日毎日食にするものに、死の灰が含まれているのだから
それが体に堆積してゆくのだ。そして、おそらく数年後………ヨーロッパ全土でガンが
一気に発生したであろう。特に、若者が倒れた。どんよくにエネルギーを求める時期だ。それが悪いものであろうとなかろうと、体は吸収していった。それは引き下ろしの出来
ない銀行であった。濃縮という利息がついて金はグングンと持主の知らぬ間に溜まって
ゆく。そして満期を迎えたのである、数年後。
  若人が激減−−−生物として死を宣告されたのに等しい。もっとも死んだのはそれだ
けでなかった。あらゆる世代が倒れた。原爆でやられたのではないからすぐには死なな
い。いや、死ねないのだ!!数十年に渡って苦しみながら死を迎えるしかない。
  核戦争などよりももっと恐い事態である。

  ガチャ。
  チェルノブイリという所はヨーロッパに近かった。ヨーロッパで被害は出たが世界で
はどうだったのか。
  おそらく逃れられないはずだ。なにしろジェット気流で拡がったのだから。
  自然のサイクルによって伝わった。ヨーロッパでは農業から漁業から伝わったのだが
世界とて同じだった。
  ここに当時、素晴らしく栄えていた国、日本国に登場を願おう。ここは自国の貨幣が
とても強かった。貿易でヨーロッパ・アメリカを脅かすほどになっていた。ここの国は
島国で農業は外国に頼っていた。80%〜90%という高い数字で。
  ここはチェルノブイリの洗礼は軽く受けるに過ぎなかった。しかし………
  ヨーロッパの人の感情は許さないであろう。自分達だけがなにも死ぬことはない。当
然、貿易は続けられたはずだ。しかも当時他国籍企業があっちこっちから原料を集め、
それをまた各国へ売り歩いていた。死の灰は世界中にあったと言ってよい。
  で、あるから、人口は激減した。ヨーロッパほどではなかったがね。しかしダメージ
は大きかった。最初の隠蔽工作、農業、貿易………これが人々を死に追い遣った。

  ガチャ。
  君はハハァーンなるほどと感心しているだろうね。しかし、これだけではないのだ。
たしかにチェルノブイリは地球的規模の事故を起こした。しかし、それだけに止まらな
かったのである。
  世界各国には数百基という原子力発電所があった。それは、まっすぐ老朽化に向かっ
ていたに違いない。何故なら連日連夜、中性子がぶつかり、金属疲労を起こしているか
らだ。しかも、これは原子炉内部のことである。これの一部にでも隙が出来たなら……
  アメリカではスリーマイルでチェルノブイリで起こっていた。ソ連ではチェルノブイ
リ。そして1992年には、40基を誇る日本国で悲劇は起こった。
  日本という国は理解しがたい国だ。第2次大戦で原子爆弾を2つも落とされている、
唯一の被爆国でありながら、半世紀後には40基もの原子力発電所を持っていた。しか
も、である。日本という国は、地震国、火山国である。地盤が不安定窮まりない所なの
だ。しかも国土は狭い島国である。そんなところに並べるようにして原発を置いたのは
狂気のさたと言っていい。
  私達が調べ始めてこれが分かったときには、寒気を感じたよ。しかし、これが事実で
あることはほぼ間違いなかったのだ。
  さて、ではいよいよ話もクライマックスを迎えるが、その前に気持を整えるとしよう
  君も良かったら散歩ぐらいしてくるとよいよ。
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