AWC トゥウィンズ・1 四章 (1/3) (10/34)


        
#849/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE     )  88/ 2/29  19:57  ( 99)
トゥウィンズ・1 四章  (1/3)  (10/34)
★内容
四章

 一応、お披露目も終ったってことで、バルコニーにいた全員は各々の部屋に戻
ったんだけど、まだあの場所の騒ぎはおさまっていないようだ。
 僕達四人は僕の部屋に集まって、これからのことについて話をしてた。
 そこへ、マイア姫が入ってきて、
「旅の支度が整いました。プラネット公もお待ちになっています。」
「はい。あ、一つだけ聞いていいですか?」
「なんでしょうか?」
「先刻、皆がティアって叫んでたけど、あれ、何の事なんですか?」
「あなた方お二人の女神様としてのお名前です。」
「僕達の?」
「ええ、そうです。夕べ、お二人のお生まれになった日をお聞きしましたよね。
それでお二人が乙女の星に支配されていることが判りまして、我が国の十二の主
神の中から双子の神トゥウィンズと乙女の神フェアの名前を頂いて合わせ、愛称
として短くしたものなんです。」
「はあ、なるほどね。」
 なんだか、よく判らないような感じもするけど、まあいいや。
「あ、そろそろ、出発なさらないと。」
「はい。それじゃマイア姫。いろいろとありがとう。いってきます。」
「お気を付けて。」
 マイア姫が見送ってくれる。
「さ、行こうか。」
「Ok。いつでもいいよ。」
 召使いさんから荷物を受け取ると、健司と康司がそれを持ってくれた。こうい
うのは男の仕事だとか言って。中身は着替えのドレス類なんだそうだ。あと僕達
が着てた服も、この中に入ってるらしい。
 こっちの世界に来て、初めてこの城の外に出る。天気はいいし、風も心地よい。
 うーん、絶好の旅日和じゃ。
「博美様、一美様。どうぞ、この馬車にお乗り下さい。」
 プラネット公が、そう言って自分の馬車を譲ってくれる。二人乗り用の小さな
馬車だった。
「えっ? プラネット公はどうなさるんですか?」
「私は、歩いて参ります。」
「でも、プラネット公のお城まで、結構あるんじゃないですか? 僕達なら大丈
夫、十分歩いて行けますから、そんなに気を遣わないで下さい。」
「いや、でも女神様を歩かせて、私がのうのうと馬車に乗るんてことは……。」
「僕達からすれば、若い連中が楽をして、年のいった領主様を歩かせるってこと
の方が、よっぽど罪悪なんですよね。それに、天気はいいし、風も気持ちいいし、
僕達は歩いて行きたいんです。ところでプラネット公のお城まで、どれ位あるん
ですか?」
「普通に歩いて三時間くらいでしょう。」
「それくらいなら、大した事ないですよ。皆さんと一緒に歩きます。プラネット
公は馬車にお乗り下さい。」
「では、失礼して。」
 プラネット公の行列について、僕達も歩いていった。ただねえ、プラネット公
の方は行列だから、普通に歩くと僕達の方が速い筈なんだよね。
「さて、行くか。」
 とりあえず、出発。と、康司が、
「なあ、博美。お前、そんな格好してて疲れないか?」
「ああ、多分大丈夫だろ。そりゃ、こんなドレス着てヒール履いて歩くのは初め
ての経験だから、少しは大変かもしれないけどね。でも行列の進む速度も遅いみ
たいだし、ゆっくり歩けば大した事ないと思うよ。」
「なんだったら、手を貸してやろうか?」
「利子は?」
「年3%……じゃない! おい、まぜっかえすなよな。真面目に言ってんだから。」
 まあ、康司の気持ちは判らんでもない。僕だって男だったらピシッと決まった
服装して、隣にドレスアップした女の子を連れて歩きたいもんね。でも、まあ仕
方無いっていえば仕方無いんだけど、自分がドレスアップして連れて歩かれるっ
てのはどうもね。
「大丈夫だよ。そんなに大変な格好してる訳じゃないしね。それよりさ、できた
ら一美に声かけてやってくれないか?」
「ああ、それじゃ、ちょっと一美ちゃんに聞いてみるかな。一美ちゃん、大丈夫?」
「えっ? 何が?」
「そんな格好してて歩き辛くない?」
「うーん、ちょっと歩きにくいかなあ。」
「じゃあ、手を貸そうか?」
「ええっ? いいよー。そんなの恥しいもん。」
 そしたら、健司が、
「一美ちゃん、いいから借りちゃいなよ。康司の奴は一美ちゃんを隣に連れて歩
くのが夢だったんだからさ。」
 と、横から口をはさむ。
「お、おい、健司。お前、なんて事言うんだよ。」
 康司の奴、その言葉で一瞬慌てたような顔になり、そのあと赤くなった。
「いいから、さっさとエスコートしてやりな。」
「あ、ああ。ほら、一美ちゃん、手。」
 康司は半分毒っ気を抜かれたような表情で一美の手を取る。
「康司の奴さ。一美ちゃんが好きだったんだよね。」
 健司が聶いてくる。
「へえー、それは知らなかった。あ、一美の奴、少しは康司を意識してるみたい
だな。」
「あれ? そういえば一美ちゃん、沢田の奴と付き合ってなかったっけ?」
「ああ、だけど結局フラれたらしい。この前、そう言って泣いてたぜ。」
「じゃあ、失恋したばっかりか?」
「そうだよ。だけどさ、康司のことも少しは意識してるみたいだし、まあ、いい
んじゃないの?」
「じゃあ、康司の想いもかなうかな?」
「うーん、いくら双子でも、さすがにそこまでは判らないなあ。でも康司を意識
してるのは間違いないし、可能性はあると思うな。」
「そうか。」
 なんて話を健司とひそひそやってたら、
「ねえ、何を二人で、こそこそやってんのよ。」
 一美が、半分からかう感じで聞いてくる。
「ちょっとね。」
「なあに? あたしに言えない事なの?」
「いや、言うのは簡単なんだけどね。ただ、言っていいことかどうか……。」
「だから、何の話してたのよ。」

−−−− 続く −−−−




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