AWC トゥウィンズ・1 四章 (2/3) (11/34)


        
#850/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE     )  88/ 2/29  20: 2  (100)
トゥウィンズ・1 四章  (2/3)  (11/34)
★内容
「本当に言っていいのか?」
「何よお、勿体ぶらないで言ってよ。一体、何、話してたのよ?」
「康司と一美が、うまくいくかどうかって話。」
 途端に一美の奴、顔赤くして、一瞬言葉に詰まったあと、
「大きなお世話!」
 おっと、悪いこと言っちまったかな? 康司の奴も完全に真っ赤になっちまっ
た。
「だろ? だから、ひそひそやってたの。判った?」
 健司、また声を落として、
「お前さ、あれは少し言い過ぎなんじゃないか? 康司の奴、顔が真っ赤だぜ。」
「康司には悪いことしちまったようだな。だけど、一美も顔真っ赤にしてる。ほ
ら、康司に自分の顔を見られないようにして歩いてるだろ?」
「ほんとだ。うまくいくといいな。」
「ああ。」
 なんか訳の判らないうちに話が変な方向に向かったけど、あとは、それなりに
ごまかして適当に話題を変えながら歩いた。

 お喋りしながら歩いていたら、いつのまにか三時間くらい経ってしまったらし
い。
「一美殿、博美殿、じきに我が城に到着します。」
 プラネット公が馬車の上から声をかけてくる。と、本当、じきにお城が見えて
きた。
 お城に着くと、すぐ広間に通された。ソーラ王の居城に比べれば小さいけど、
それでも十分に贅沢な感じがする。
 プラネット公と、その家族全員が入ってきて次々に紹介された。
 王様にはマイア姫しか子供がいなかったけど、プラネット公には今年十七歳に
なったばかりのセレナ姫を頭に、十歳のリゲス、六歳のプレアナ、五歳のメロウ
と四人の子供がいた。
 僕達も、それぞれ自己紹介をして、そのあと、天気がいいからってことで中庭
に出て話の続きをした。

 中庭は、結構大きな池と、それを見おろせる、ちょっとした丘があった。
 その丘の上に登り、草の上にそれぞれ腰掛けたり寝ころんだりして、くつろい
だ格好で話を続けた。
「わーい、女神しゃま、女神しゃま。」
 五歳になったばかりのメロウが、大はしゃぎしてまとわりついてくる。うわー、
かっわいい。
「こら、メロウ、駄目でしょ。本当に申し訳ございません。まだ、年端のいかな
い子供のことゆえ、御勘弁くださいませ。」
 セレナ姫がメロウを押えつけながら謝る。
「セレナ姫。そんなにかしこまらないで下さい。こっちだって、たかだか十六歳
なんですから。」
「いえ、私達をお救い下されたティアの女神様に対して、失礼な態度を取ること
など……。」
「お願いだから、普通に話してもらえません? なんか話し辛くて。」
「でも……。」
 と、セレナ姫が言いかけた時、健司が、
「あ、あれ、プレアナちゃんじゃないのか?」
 見ると、確かにプレアナとかいう子が、池のそばで走り回ってる。
「セレナ姫。ちょっとばかり、危ないんじゃないですか?」
 なんて、言った途端、その子の姿が消えた。ヤバい。池に落ちたらしい。
 僕は何も考えず、殆ど反射的に跳び起きると、そのまま丘を一気に駆け降りた。
途中でヒールが片方脱げたけど、そんなことなんかに構っていられない。
 池のふちに着くとプレアナの場所を確認しながら、もう片方のヒールを脱いで、
ついでに池の深さも確認して、飛び込んだ。
 水はかなり冷たかった。一瞬、体全体が縮みあがったけど、プレアナだって同
じような目に会ってるだろうから、急がないと助からない。
 急いで泳ぎだし、なんとかプレアナの体を抱くと、そのまま岸に向かった。
 それにしても、いくら急いでるからって、フワフワのドレス着たまま泳ぐもん
じゃないな。裾が足にまとわりついて、泳ぎにくいったら、ありゃしない。
 どうにか岸にたどり着いて、気絶していたプレアナの頬を何度か叩いた。プレ
アナは、じきに気が付くと思いきり咳込んだ後、大声で泣き始めた。うん、これ
なら大丈夫。
「おい、博美、大丈夫か?」
 健司が心配そうに駆け寄ってくる。
「うん、なんとか助かりそうだ。あれだけ泣ければ大丈夫だろうね。」
「いや、お前が大丈夫かどうか聞いたんだけどな。」
「水泳やるには、ちょっと気温が低かったかなあ。水も結構冷たかったし。」
「だから、そんなこと聞いてるんじゃないんだってば。」
「大丈夫じゃなかったら、こんなこと言えないだろ? しかし、ちょっと寒いか
な。」
 うーっ、今ごろになって急に寒くなってきた。は、歯の根が、あ、合わない。
「あーあ、ちょっと、博美。折角のドレスが悲惨になっちゃって、まあ。」
 ほんと、今、着ているドレス。フワフワだったのが、水吸って体にべったりと
張り付いてるし、裾からは水が垂れてる。完璧な濡れねずみ。
「も、申し訳ございません!」
 プラネット公が駆け寄ってきて、平身低頭して謝る。
「すみませんけど、着替えさせてもらえませんか? できたら、お湯もちょっと
使いたいんですけど。」
「ほ、本当に申し訳ございません。ささ、こちらへ。」
 プラネット公が部屋に案内してくれる。僕は両手で自分の体を抱いて、寒さに
震えながら、裸足のままペタペタ歩いて部屋に入った。
「健司、すまないけど、着替えの服を出してくれないか?」
「どれがいいんだ?」
「えっ? どれって?」
「この荷物の殆どは俺達四人の着替えなんだぜ。どの服がいいんだ?」
「最初に着てたワンピースあるだろ? あれでいい。」
「あ、服出すのは、あたしがやる。あまり、下着類って見られたくないもんね。
悪いんだけどさ、お二人さん、しばらく部屋を出ててくれないかな。それとさ、
博美の靴、持ってきてくれない? まだ中庭に落ちてる筈だから。」
「ああ、そうだな。」
 二人が出ていった後、一美は下着とワンピースを出した。
「悪いけどさ、ドレス脱ぐの手伝ってくれないか。体にへばりついちまって全然
脱げないんだ。」
 一美に手伝ってもらって、びしょびしょのドレスをやっと脱ぐ。
「ねえ、博美。あたしのも手伝ってくれない? あたしもワンピースに着替える
から。」
 一美もドレスを脱ぐ。

−−−− 続く −−−−




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