AWC I島からの手紙 翡翠岳舟


        
#772/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (FEC     )  88/ 2/14  13: 9  ( 38)
I島からの手紙                              翡翠岳舟
★内容
  かれこれ、15年くらいまえのことだったが、まだ私が小舟を操って(生計
を立てるというようなのではなく、老後の楽しみのようなものだったが)魚を
上げていたころだ。私は、医薬品などを入れる小さなコルクの栓をしたビンを
拾った。コルクの栓はきっちりしめられていて、水は入っていなかった・・・

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  はじめまして。これを拾ってくださった貴方を、勝手ながら私の身内の人と考
えて書かせていただきます。
  私は、I島の軍隊に所属する橋本智樹という者です。この文は、私の親友小池
浩司君から紙をもらい、書いているものです。小池くん、どうもありがとう。
  私達の死守するI島は、アメリカ軍の上陸作戦がかかっています。アメリカ軍
は、凄まじい量です。初めて現れたときは、海がなくなってしまったかと思われ
るほどでした。水平線の彼方まで、艦船の灰色がうめつくしていました。こんな
小さな島を、はじめは掠めるだけかと思っていましたら、上陸ていがやって来る
ではありませんか。
  私達、I島は戦争初期は、本土からやってくる偵察機・戦闘機に給油・整備を
する役目があったのですが、今は補給路をたたれた島々の一つにすぎません。で
すから、食糧も日に一回、水などはI島の内部に掘られた鉱内の泥水をすすって
います。この泥水ですら、1000人の兵士がいるのでまったくもって足りませ
ん。闇夜のときに、係を決めて海水をドラム缶にいれて運びこもうとするのです
が、これも3回に一度くらいの成功率です。アメリカの兵士が、海岸線に伏して
おり、下手に銃撃に応戦すると哨戒ていがやってきてしまうのです。
  昼はひるで、爆撃があります。I島には、日本陸軍が誇る地下要塞があるので
これはさほどの苦しさではありません。が、I島の土は水分がなくてパサパサし
ていて、我々が砲撃するとその土煙を目標に弾を打ち込まれてしまうのです。
だと思います。私は、仲間といっしょにこの手紙を裏海岸から流します。
これを拾う貴方はどんなかたなのでしょうか?それは、といますまい。きっと貴
方も″これを書いた人は・・・″とおもうことでしょうから。

どうも、ありがとう。
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’これを″受け取って″から、橋本智樹さんのことについていろいろと調べ
てみたが、とうとう素人の手では分からずじまいだった。私は、皆さんご存じの
通り、パソコン通信を楽しみにしてこうやって過ごしているわけですが、実は彼
の名をとって(というより、彼といっしょにとっいった方が良いでしょう。)I
D登録をしてやっているのです。

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