AWC 『秋本骨つぎ堂の逆襲』(文体についての最終回)88・2・14


        
#773/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (FXG     )  88/ 2/14  17:17  (195)
『秋本骨つぎ堂の逆襲』(文体についての最終回)88・2・14
★内容
前回、前々回と二回にわたって、おおくりいたしてきました秋本エッセイの文体につ
いて考える。今回をもちまして最終とさせていただきます。
つまりは、まだ本編に入っていないわけでして、文体が決まらないと書くものが書け
ない。そんじゃ、文体が決まったら、その文体で書けるのかと問い詰められましたな
らばー歯歯歯!わたしは単なるお笑いの人ではなーい!と答えます。
世に天才の名を受けた者数々あれど、その中にあっての真の天才。その人こそ、何を
隠しましょう、わたくし秋本、秋本、秋本氏御本人ただお一人であると御本人自ら語
っていらっしゃいました。まず、間違いはございません。
えっ?上の文章はおかしい?「燕雀いずくんぞコウ鵠の志を知らん」ーみ、見よ!
わたしの使う語彙の豊富さにコンピューターが降参し、カタカナ混じりの変換を出し
てきたではないか。歯歯歯!「論より証拠」「無い袖は振れない」

@@@としよりのひやみず
い、いきなり、何奴!名を名乗れ!
@@@しらぬがほとけ
こ、コンピューターだなお主。かなわぬと見て中傷に参ったとみえるー笑止!
@@@いぬのとおぼえ
馬鹿な奴め。ではこれはどうだ「痔、胃潰瘍を笑う」「腐っても納豆」「願いから鼻
薬」
@@@・・・・・PPPPGAGAGAGAG・・・$
歯歯歯!所詮は機械じゃ。応用が効かんとみえる。馬鹿な奴。
わたしの天才かくの如し。所詮、器が違う。

さて、いらぬ手間を食ってしまったようです。文体の話を始めましょう。
前回お話しておりました通り、もう一人、青木雨彦氏のエッセイを例によって、無断
借用の上、転載いたします。なかなかに含蓄ある内容です。
『粋な関係』(集英社文庫)より

  『モノは訊きよう、オナゴは丸めよう』
 「モノは言いよう」
 という。タマゴも切りようである。
 そういうことならば、
 「モノは訊きよう」
 ということもできるのではなかろうか?ダンゴも丸めようだ。
 とくに、女性にモノを訊く場合は気をつけなければならない。ダンゴもそうだけ
 れど、オナゴだって丸めようである。
 たとえば、
 「年齢は?」
 と訊く代わりに、
 「年齢を訊いてもいいですか?」
 と訊くのである。これなら、かなりアタリは柔らかい。
 先方が、
 「いいわよ」
 と言えば、改めて訊く。かりに、相手がまちがって、
 「ウン歳」
 と答えたら、それはそれで目的は達しているわけだ。
 相手が、
 「ウン歳」
 と答えたからといって、
 「こっちは、年齢を訊いていいかーと訊いたんであって、何歳かーと訊いたわけ
 じゃない」
 と、言いわけをする必要もない。まして、したり顔をして、
 「ハハァ、サバを読んでるな」
 と、アゴを撫でることもない。
 女性の年齢については、相手が、
 「どう?三十歳にはみえないでしょう」
 と言ったら、
 「みえない」
 と、素直に思えばいいのだ。すくなくとも、いまは・・。そう四、五年前にはみ
 えたけど。
 (中略)
 短所を訊くときも、
 「あなたの短所は?」
 と訊くよりは、ちょっとひねって、
 「あなたの好きな短所は?」
 と訊く。これだけで、うんと感じがちがうはずである。
 人間だから、誰にも、長所もあれば、短所もある。誰かさんみたいに、
 「短所なんかないッ!」
 と言ってくだされば、
 「そうか、これが短所だな」
 とわかるけど、一般に、長所も短所も、紙のウラオモテだ。長所とみえるところ
 が短所だったり、短所とみえるところが長所だったりする。
 そこで、
 「好きな短所は?」
 と訊くのである。そのひとが、自分自身をどうみているかーが、いっぺんにわか
 ってしまう。
 たとえば、
 「人の好いところかな?」
 と答える。これは、相当に人のわるい回答である。
 訊いたほうでは、
 「どうして人の好いところが短所なんだろう?」
 と考えちゃう。そんなの、短所でもナンでもないではないか。
 「モノは訊きよう」
 と言ったが、相手を褒めるときにも、モノを訊く形で褒めたい。言っちゃナンだ
 が、そのほうが、ずっと効果がある。
 たとえば、
 「きみのスーツ、素敵だね」
 というところを
 「おや?このスーツ新調か」
 というのである。そうすれば、
 「あら、わかった?」
 と、こうなっちゃう。
 そうじゃなくって、
 「新調なんかじゃないわ」
 と言ったところで、怯まない。そういうときこそ、
 「着る人が素敵だと、スーツまで新調にみえちゃう」
 と言うのである。それだけで、彼女は、
 「ああ、このひとはあたしに関心をもっているんだわ」
 と思うだろう。人とつきあう法のなかで、最も大切なことの一つは、
 「このひとは、自分に関心をもっているんだな」
 と思わせることだ。
 それにしても、女のひとに、
 「このスーツ、どこで買ってきたの?」
 と訊くのは、危険だ。どういうわけか知らないが、そのときの反応は、
 「あら、どこかいけないところがある?」
 という、きわめて挑戦的なものである。

以上であります。
この青木氏の文章ですごいのは、まったく文章を云々いわせる余裕を与えず、一気に
最後まで読ませてしまうというところです。
えてして人は歳をとると、やたら解説がながくなる。漢字が多くなる。
それなのに、どうだ。このスピード感は。しかも、けっして若さにへつらっていない
ところが気持ちがいい。そして、そのタイトル『モノは訊きよう、オナゴは丸めよう』
こんな題はわたしにはつけられない。まだ若さに未練があるためだろう。
内容がこれまた、人生の場数を踏まないと書けないもので、悪く云えば狡知に長けて
いる、良く云えば戦術に優れている。およそ、この年寄りと女の戦術には、なかなか
のものがあって、昔、まだ若かりし頃、女の子に問われたことがある。そして、その
問いにタジタジとなったことを記憶している。
「秋本さん、好きな人いるんですか」
「いや、いない!」
きっぱりと答えたわたしだった。ちょっとその状況は複雑でお話できないのだが、こ
こできっぱりと云わないとヒジョウーニまずい場面であったのだ。
「でも、気になる人はいるんでしょ」
ガ、ガーン!である。そ、そんな問い方があったとは。その通り。気になる人がいた
から答えに窮したわたしであった。彼女のことではない。別の人だった。この一瞬の
沈黙に全てがバレてしまったわけだ。その後の展開は遺書にでも書くことにしよう。
と、云うことで、泣く子と地頭、女と年寄りにはかなわない。
それから、最後のところ、ここ。
『それにしても、女のひとに、
 「このスーツ、どこで買ってきたの?」
 と訊くのは、危険だ。どういうわけか知らないが、そのときの反応は、
 「あら、どこかいけないところがある?」
 という、きわめて挑戦的なものである』
ここですね。ここ。こういう観察はホント場数を踏むしか慣れようがない。
今だに、結果を計りそこねてキツーイ目で睨まれたりするわたし如きの書ける言葉で
はない。脱帽!
要するにこの青木氏の文章は模倣しようが、できないということが云いたかったので
あります。内容で勝負している。これは毒舌エッセイの場合と同じで真理をつく論理
の正当性が必要になってくる。ううう。才能のなさを痛感する。
才能と云えば、よく引き合いにだされる言葉にエジソンが云ったとかいう、あの
「成功は1パーセントの才と99パーセントの努力によってなされる」
というのがあるが、ありゃ、訳し間違いで、実は
「成功は1パーセントのひらめきと99パーセントの努力によってなされる」
というのが本当なのだ。インスピレーション、つまりはアイデアのことですな。
電灯をつくるのだって、あっ、ひょっとして真空にした中で物を燃やすと燃え尽きる
ことなく光りを永久に放つのではないか。と思いつくのが1パーセントであって、あ
とは、延々実験の繰り返しということを云っているわけだ。
これが日本に上陸し、1パーセントの才能なんてことになってしまったものだから、
世のお母さん方の張り切られること。
「メガネちゃん!あなたバカだ、バカだなんて云ってるけど。要するに努力なのよッ
 努力すれば、何でもできるものなの。あんた、だからもっと、もっと勉強するの。
 いいッ。いいわねッ。それじゃ、おやつは抜きですからね」
このたった一カ所の誤訳によって、何人の罪もない子供らが、多くの犠牲を強いられ
てきたことか。
才能のない者は、あくまでも才能はないのである。もっとも、別の才能というのがあ
るから面白い。数学がダメなやつでも、お笑いが書けたり。女にモテナイ男が男にモ
テタリもする。いやあ、世の中っていいですね。それじゃ、また御一緒に楽しみまし
ょう。
さて、わたしの話はいつも、こうやって横スベリする。こんなことをやってるから、
174行でおさまらないことになる。今回は最終回であるから、先を急ごう。
お笑いをやっている暇はないのだ。
さて、このようにして、村上さん、青島さん、青木さん、お三方の文章を見てきたわ
けですが。共通していることがございます。
(1)文章が平易であること(知ってるからといって、やたら漢字を使わない)
(2)読む人を傷つけるような表現がないこと(いくらそれが真実であっても)
(3)感情に走ることがないこと
(4)話が横スベリしないこと
しかしなあ、こうやって並べてみると、面白くもなんともない。しかし、これが受け
るのである。ふーん。そんなものか。
それじゃ、これらを参考にして次回から本格的なエッセイ『秋本骨つぎ堂の逆襲』を
始めることにいたしましょう。
ち、ちょっと待ってくれ。どこが参考になるんだ。
そんなあ、今さら何いってんですか。
で、でも。
じゃあ、今までのあれ。何だったんですか。これ3回の連載だったんですよ。
そうなんだけど。
ここまで読んだ人がいらっしゃるっですよ現実に。どういうつもりですか。
いや、それはわかるんだけど。どういう風に書いたらいいのか。
それはあなたの方の問題であって読んだ人の責任ではないですからあ。
そんなことは云ってない。でも秋本の文体をやめる訳でしょ。
そうですよ。そのためのプロローグだったんですから。
できるのかなあ、そんなこと。
やるんです!
でも・・
デモではない、ストです。
スト?
意味はありません!
あっ、ひどい!そんなことでいいんですか、あなた。
わたしが書くのではない。あなたが書くのです。
そんなあ。
やるのです。では皆さん、次回の『秋本骨つぎ堂の逆襲』どうぞお楽しみに!
あっ、だめだめだめ。だめー!と叫んだりして。
おお、ちゃんと・・してで終わったじゃないですか。その書き方でいいのです。
いいの?ホント。じゃあ、かんべんして。ゆるして。愛して、あなた。
げっ。次回の『秋本骨つぎ堂の逆襲』お楽しみに。




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