#745/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (WYF ) 88/ 2/ 9 6:22 ( 49)
「さようなら」
★内容
「ゲーム」
今朝、私はいつもより早く目覚めた。身支度を整えて書斎へ入る。
冬の透明な光が書斎に窓枠の陰を落としている。
私は清潔な机の前に座った。遠くに山並みが見える。目を細めて私は考える。
計画は完璧だった。要員は選抜かれた精鋭だった。能力は保証されていた。
私には、判らない。なぜ命令を言われた通りに遂行しないのだろう。
考えるのは、決めるのは、私の仕事だ。彼等の仕事は、・・・・・・・・。
たぶん人選を誤ったのだろう。
ドアーがノックされ秘書が新聞とお茶を運んで来た。
木々には、葉がなかった。
「手を洗う。」
ぼくは手をよく洗う。
朝起きて洗顔の時に、食事の前に、外出の前に、
なにかをした後は、手を洗うことにしている。
時々街で見知らぬ人が親切にぼくに肩や、腕を貸してくれる。
もしも、ぼくの手が汚れていたら悪いものね。
ぼくは目が見えないんだ。だから、ぼくは良く手を洗う。
「犬」
時間は12時を廻っていた。タクシーに乗るお金はあったけれど、歩いて帰ることに
した。春だったけれど寒くはなかった。前から、犬が来た。歩道は広くて3メートル
位の幅があった。犬は、ぼくとすれ違う時に車道に降りてぼくとの距離をとった。
10メートル位歩いてから振り返ると、歩道に戻る犬の後ろ姿が見えた。
「夢」
夢の中で、起きて思考している。これは夢なんだと思いながら。ぼくは朝が苦手だ。
「窓の明かり」
駅から家に帰る道すがら、窓に明かりがついている。あれは家の明かり。
で、あれは部屋の明かりです。家の明かりが少なくなりました。
「家族」
村が破壊された。大家族も崩壊した。家族も生き長らえることは出来ないだろう。
カップルも愛を失っている。で、個人はどのように破壊されるのだろう。
だって、もう引き返すことは出来ないのだから。興味があるのはその点だけだね。
電話がなった。
「いいネタがあるんですよ。この株は値上がりしますよ。」
ぼくは、電話を切った。
「ねえ、面白い映画をやっているのよ。一緒に行かない。」
ぼくは、電話を切った。
「さようなら」を言わなければならないのかも知れない。
さようなら、ぼく。さようなら、あなた。
Good−by
完