AWC 実験的小説>プロI 翡翠岳舟


        
#746/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (FEC     )  88/ 2/ 9   7:41  ( 58)
実験的小説>プロI                      翡翠岳舟
★内容
  学校の帰り道、なんと人が倒れていた。駆け寄って見ると、私と同じくらいの女子(
つまりは高校生)で、どこぞやの制服と思われる紺の服は土だらけであった。顔を見る
と多少怪我をしているのか、血の筋が頬を走っている。私は恥ずかしいながらも抱き起
こし、ハンカチで傷口を押さえた。そうすると、痛いのか、それまでグダリとしていた
彼女はピクピクと動いた。そのたびに、こっちもドキドキしてしまう。
  道の真ん中でこうしていてもしょうがないので、近くの公園まで運んだ。女子とは縁
のない私なので、どう運んでいくか考えるのに少々時間をかけてしまった。結局抱き抱
えて運んでしまった。なんと軽くて、柔らかいものなのだろう、と感じた。
  この公園はあまり人が立ち寄らない。でも、万が一ということもあるから、ずーっと
奥のフェンスのそばのベンチに腰を落ち着けることにした。なんにしても、経験がもの
をいうということをこのときほど感じたことは無かった。
  時間もたって、余裕が出てきた。見てみると、なかなかかわいらしい顔だ。髪も適度
の長さで・・・うっとりしてしまう・・・いかん、人命救助だった。
  と、急に相手は気がついた。私の方を振り向くと、焦点を合わせるかのように私を見
た。私はなんとなく、悪いことしたかなぁ〜と思って弁解がましい言葉をずらずらとな
らべてしまった。しかし、彼女は無表情。
  「あのね。あなたはあそこの道でぶったおれていたの、だから私が−−−たまたま通
りかかったんですよ−−−ここに運んだわけ。誤解しているんだよ。」
「・・・・・・・・・」
「頭、痛いのかい?うったのかなぁ・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・動揺しているんだね?」
「・・・・・・・・・」
「心配しているんだから、何とかいえよ!!」私はこの無表情な女に無気味さを覚えた
。
  「プロモードチェックOK。」彼女は突如、魅力的な声でなんかわけの分からんこと
を言い出した。「機能ほぼ正常。プロIIからの攻撃による損傷は外部のみ。」
「・・・はぁ・・・」
「熱源反応極至近距離半径50cm以内に確認。全長172cm〜186cmの範囲内
の多細胞生物と推測。」
「・・・分かったよ、でも近寄ってほしくないならもっとストレートにいってほしいな
ぁ、ちょっといやみだよ。」
「多細胞生物、コンタクトを求めて来ている。有害か無害か?」
「あんたねぇ!!」
「プロIIとの戦闘は未だ続行中。ゆえに、総ての時間に油断を許さず。」
「この野郎!!」
  大声を張り上げた瞬間、私は目の前が暗くなるのに気がついた。つぎにバサァァァァ
ンというフェンスにぶつかる音・・・目をあけてみると、この変な女が仁王立ちでこち
らを伺っている。この野郎にどうやら殴り飛ばされたようだ・・・テテテ・・・
  立ち上がって見ると学生服がびりびりだ。私はもう起こる気にもなれなくなって、ベ
ンチに座り直した。この牛女は頭が変なのだ。そんな奴にはかまっていてもしょうがな
い。とはいっても、すごすごと帰るのは逃げるようで癪だ。と、いうことで女を睨みか
えした。すると・・・
  「プロI、多細胞生物と交戦。出力23%でコークスクリューパンチ一発を見舞う。
相手、反能無し。」
  馬鹿野郎、ジョーじゃねえんだ。ヘヘ、ヘヘ、って笑って向かっていけるか・・
・おーいてぇ・・・
  「プロI、勝利を確認。しかしプロIIの反応は感じられない。」
「プロIIは、あっちだ!!」からかううつもりで私は言った。
「プロIIの情報を得た。任務遂行!!」
  牛女はそういって凄まじい勢いで走っていった・・・。

  その次の日、同じ道を用心しながら歩いていると、肉塊が散乱しているを見付けた。
私ははたとと考えた。これはプロIのものなのだろうか、それともプロIIのものなの
だろうか、と

                             −−−FIN−−−





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