AWC ブラックスワン   永山


        
#1863/3586 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA     )  21/07/27  19:27  ( 51)
ブラックスワン   永山
★内容
 WOWOWのドラマ「黒鳥の湖」初回無料放送を録画視聴。ネタバレ注意です。
 原作は宇佐美まことの同名小説、私はまだ読んでいません。
 若い女性が拉致される事件が起きる。最初は切り刻まれた服の切れ端が家族の元に送
りつけられ、次に切り刻まれた下着、それから剥がされた爪。何かを要求してくるでも
なく、声明を出すでもない。最終的に女性は遺体となって見つかった。
 ビジネスマンとして名実ともに成功を収めた財前彰太は、その事件の報道を目にした
途端、少しばかり動揺する。興信所で調査員として働いていた十八年前に受け持った案
件と状況が酷似しているのだ。それは同時に、財前に恐ろしい想像を強いた。報いを受
けるのではないかと。
 十八年前、財前は初老の男性から依頼を聞いていた。依頼人の谷岡が言うには、彼の
娘をひどい目に遭わせた奴を見つけ出して欲しいという。娘は四十がらみの男に拉致さ
れ、衣服や下着を切り裂かれた上に、もっと酷い目に遭った。警察の領分でしょうと当
然の指摘をした財前だったが、谷岡は聞き入れない。娘は自力で逃げ出し、戻って来た
が、酷くショックを受けていた。娘から聞き出せた限りの情報を財前に伝え、犯人を見
つけてくれと訴える谷岡。結局、財前は引き受けた。
 同時期、財前はひょんなことから、かつて所長が調査対象としていた女性・由布子と
親密になり、付き合っていた。そして由布子から妊娠を聞かされた財前は、結婚を決
意。由布子の両親に会いに行くが、彼女の家は非常に裕福で上流意識が高かった。けん
もほろろにあしらわれた財前は、一念発起し、時計店を営む独り身の叔父の元に急ぐ。
不動産も扱って資産のある叔父はかつて財前に対して店を継がないかと持ちかけたこと
があった。そのときは断った財前だが、今なら是非とも一国一城の主になりたい。だが
叔父は財前の振る舞いを身勝手なものと感じたか、激昂する。店は譲らないと断言する
ばかりか、遺言書の書き換えさえ示唆した。
 思惑が外れて焦る財前は後日、改めて叔父に頼み込みに行ったが、やはり認めてもら
えない。他方、由布子は親に妊娠を知られ、下ろせと命じられたと、財前に伝えてき
た。もう時間がない。財前は一か八かの賭けに出る。それは、例の依頼の犯人に、叔父
を仕立てるのだ。依頼人の様子から、犯人に対して私的制裁を加え、殺そうとしている
可能性は極めて高い。財前は様々な細工をし、証拠を偽造した上で、報告書を作り上げ
た。所長には犯人不明のまま終わったと嘘の報告をし、谷岡へは郵送で、叔父に関する
詳しい情報を与えた。それから数日後、時計店で叔父が殺された。財前は賭けに勝った
のだ。犯人は捕まらず、また谷岡とも二度と接触することはなかった……。
 そして現在。財前の娘は反抗期を迎えたか、親の言うことを聞かなくなっていた。遊
び歩くことも増えていたが、ある晩、深い時間帯になっても帰って来なかった。
 ――初回のあらすじはこんな具合で。
 他人に殺人をさせるという難しくて特殊な状況を、うまく設定したなという印象。う
まく行きすぎ、偶然だろと言いたくなる部分もありますが、これはもう仕方がない。こ
ういう状況になったが故に、今後物語が転がっていくというものとして受け入れましょ
う。(^^) あらすじでは省きましたが、登場人物の配置がこれからの波乱を予感させる
ものとなっています。現在ビジネスマンとして成功している財前に、ビジネスの基礎を
教えたのが興信所の所長(元々、ビジネススクールを親から引き継ぐ予定があった)
で、交流が続いている。財前の秘書の権田は、財前の叔父の秘書を務めていた。十八年
前の殺人事件を担当した刑事の岸本はその解決を諦めておらず、さらに現在進行形の女
性拉致事件の捜査にも携わっている。さらに宗教が出てくるし、財前の片腕として働く
田部井は板尾創路が演じるという怪しさ満点ぶり(笑)。
 その他、巧みだったのは興信所の体質の設定かな。財前の勤めていた興信所は所長以
下、時にいい加減なやり方で依頼を片付けることがあった。たとえば行方不明になった
ペット探しの依頼には、ペットショップでよく似た個体を購入し、それで解決したこと
にする、というような。これにより、財前が賭けに出ることがさほど変に感じなくなる
効果があると思ったです。

 ではでは。





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