#244/3617 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA ) 17/10/24 20:55 ( 34)
本の感想>『聖女の毒杯』 永山
★内容
・『聖女の毒杯』(井上真偽 講談社ノベルス)17/5561
金貸しのフーリンは、所用により、日本のとある地方を訪れた。そこには結婚の儀に
まつわる変わった風習があり、花嫁が実家を出るときに父親が土下座して見送ったり、
花嫁道中の際には離れて歩く父親に見物人が罵詈雑言を浴びせたりするという。ちょう
ど執り行われる結婚式を、成り行きから観ていくことになったフーリンだったが、そこ
で不可解な毒殺事件が発生する。結婚の宴で、やはり風習として行われる大盃の回し飲
みにおいて、口を付けた男女七名の内、一番目と三番目と七番目の者が死ぬ。何故、同
じ盃の酒に口をつけながら、このような“飛び石殺人”が起きたのか。その方法と犯人
は? それとも、奇蹟を追う探偵・上苙の宣言した通り、この殺人は奇蹟なのか?
『その可能性はすでに考えた』に続くシリーズ第二弾。
第一作もお気に入りのミステリでしたが、このタイプの物語はそうそう書けるもので
はないと感じましたから、第二弾があるとしても相当先になると思っていました。それ
がわずか十ヶ月の間隔で、第二弾が刊行されるとは予想外。
さて中身ですが、前作の溢れんばかりの不可能状況に比すと、ややこぢんまりとして
おり、たとえこの毒殺トリックが分からなくても、奇蹟!っていうイメージではありま
せん。そのフォローで、舞台となる地方にある伝承に筆を割いていますが、ちょっと苦
しい。
それでも、このシリーズの特長と言えるであろう、伏線の多さ・細かさ・さりげなさ
は健在。むしろパワーアップしているかも。そこから引っ張ってくるか!?の連発で
す。
最後の最後に示される真相は、実は予想しないでもなかったんですが、途中でその可
能性にすら全然言及されないし、不自然な気はしていました。ただ、その真相を実現さ
せること自体は、別の形での検討により、不可能だと考えざるを得ないので、故意に避
けたきらいはあるが、アンフェアではない。
それから、今回は第一章ではまずまず普通の謎解き犯人捜しのスタイルで進んでいた
のが、第二章からがらりと趣を変えてくるのもユニーク。おかげで、シリーズの本題は
影が薄くなるのですが、それでもなお読ませるのはキャラクターの力が大きいかと。レ
ギュラーキャラを襲うピンチとか、少年探偵の恋の行方とか(笑)、アニメか冒険物を
想起させる展開が、結構わくわくしました。
さて、こうなると第三弾以降も期待したくなります。果たしてどんな手法を見せてく
れるのか。
ではでは。